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第143配信 GTR 2日目 キャバクラでお疲れ様会

 ゲートを守護していた<クリーガー>は全滅、残りは<ザァコ>が少々残っているのみで勝負はついたも同然であった。

 巨大に膨れ上がったゲートは戦闘続行を諦めたかのように静かで、これ以上巨大化する事も増援の機体を排出してくる事もない。


『ゲート動きありまセン。完全に停止状態デス』


『見たかったものは十分見る事が出来たって訳か。これを操作している者が居たとしたら、今回の一件でぶいなろっ!!メンバーと管理者である俺のデータが取られた事になるな』


『そう考えていいでショウネ。ゲーム開発部が調査しましたがゲート発生の原因は特定できなかった模様デス。ただ確実なのは外部アクセスの痕跡は無かったので、全てはぶいなろっ!!サーバー内で行われたという事実デスネ』


『つまり、ぶいなろっ!!サーバー内のバグ……しかも、こっちの手の内を確かめる知能を持ったヤツって事だよな。ゲーム開発部のデバッグにも探知にも引っかからないレベルの……こいつは厄介だぞ』


『事態収拾のために今後はより忙しくなりそうデスネ。とにかく今はこの忌々しい扉をぶっ壊してしまいまショウ』


『あいよっ!!』


 ワンユウは深呼吸すると<Vリスナー>を空高くジャンプさせた。

 ゲートに向かって落下し始めると前方に機体を回転させてキック――と見せかけて最大稼動のチェーンソーブレードで斬りつけ、そのまま真っ二つに斬り裂いた。



コメント

:キックじゃなくてチェーンソーでぶった切ったーーーーーー!!

:これってミストルティ……ちょ、総帥ィィィィィィィィ!!

:あんた、俺たちのコメント見てたのぉ!?

:もうさぁ、あんたサービス精神旺盛すぎて草!

:それキックじゃねええええええええええええっ!!

:それキックじゃねええええええええええええっ!!

:それキックじゃNEEEEEEEEEEEEEEEEEEっ!!

:それキックじゃぬえええええええええええええっ!!

:それキックじゃねぇぇぇぇぇぇぇぇぇっぇぇぇぇっ!!

:それキックじゃにぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇえぇぇぇっ!!

:それキックじゃねーーーーーーーーーーーーーー!!

:結構なお手前でした

:ところでワンユウ総帥はいつVTuberデビューするんですか?

:既に配信してるのにデビューしてないとか、趣味で配信をしている者ということか?

:配信界のワン〇ンマンじゃん。ワンユウだけにw

:あんなに手こずったゲートもワンパンしたしなwww

:冗談抜きで総帥のバ美肉に夢中なんですけど、どうしてくれるんですか? 性癖歪んだんですけど、どう責任とってくれるんですか? 

:そのボーイッシュなアバターでオレ達のボケコメントにツッコんで欲しい。出来れば軽蔑した目で! ハァ……ハァ……

:きっさまーーーー! さてはドMだな!? オレと全く同じこと考えてて震えたわ!!



 真っ二つにされたゲートが消え去ると生き残っていた<ザァコ>も消滅した。

 先程まで激戦が行われていたとは思えない静けさに周囲が包まれる中、地面に残った爆発や斬撃の痕跡だけがその事実を知らしめる。仮初めの海の波音が戦闘終了の合図のように木霊していた。




◇戦闘パート終わったんでワンユウ視点に切り替えです


「それではカンパーイ!」


 ゲート消滅と同時にそこから生み出されたバグロボは全て消滅した。

 この騒動で『ネオ出島』内の建物はかなりの被害を受けたが、緊急メンテナンスを設けて街の修復を行い、数時間後には元通りになり再開となった。

 バグロボ集団と戦ったぶいなろっ!!メンバーはキャバクラで労いの飲み会を開催し、俺はカウンターでソフトドリンクを大人しく飲んでいる。


 この飲み会の代金はキャバクラチームの奢りでメンバーはキャバ嬢ドレス姿での参加となっていた。そのためキャバクラの中は露出度の高い衣装のぶいなろっ!!メンバーで賑わっている。俺もドレス姿でここに居る。

 

 いつもの俺であれば、このキャバクラぶいなろっ!!状態を前にハイテンションとなるところなのだが、今はそんな気分ではない。

 神聖な配信の場で大暴れした挙げ句にテンションに任せて下ネタを言ったり叫んだり、色々とんでもない事をしてしまった。いちリスナーとして有るまじき行為だ。


「あ~、やっちゃったよ~。ぶいなろっ!!の配信を穢してしまった。……やはりここは腹を切るしか……」


『んぐっ、んぐっ、んくっ……ぷはぁ~、そんな事をしてもぶいなろっ!!サーバーの管理者であるワンユウ様は不死身なのですから意味ないデスヨ。マスター、今のと同じ物をくだサイ』


「だけどさぁ……あぁぁぁぁぁぁ、やっちゃったよ~。リスナーの皆に合わせる顔がないよ~」


 自責の念に駆られて頭を抱える。緊急事態であったとはいえ、もっと淡々とやれば良かったのに必要以上に暴れて悪目立ちしてしまった。


『ちょっとぉ、折角の酒の席でウジウジモード発動しないでくれマス? 配信でテンション上がりすぎて下ネタとか失言するなんて配信者あるあるデショ? この経験を次回の配信で活かせばいいんデスヨ。失敗は成功のママンって言うじゃないデスカ』


「だから俺は配信者じゃなくて、いちリスナーなんだよ。一般人が配信で有頂天になって暴れるのは、アニメで何の訓練もしていない素人が棒読み台詞やって作品の雰囲気ぶち壊しにするのと同じで嫌なんだよぉ。それを自分がやっちまった事が許せないの! そうならないように気をつけていたのに、やっちゃったよ~。穴があったら入りたい……」


『ごくっ、ごくっ、こくん……ぷふぅ~、穴に挿入れたいなんて言うなんて下ネタ引きずってるじゃないデスカ。このすけべ~、アヒャヒャヒャ!』


「挿入れたいなんて言ってねーよ! 酔ってるお前に真面目に相談した俺が馬鹿だったよ……ん?」


 カウンターの端で勢いよく酒をあおっている小柄の女性に気が付いた。

 あれは三期生のナーシャ・ケリュケイオンだ。そういえば、GTRが始まってから彼女にだけ会えていなかった。

 今回ナーシャはメカニック所属でユニの助手として奔走しており超忙しいらしい。そんな彼女も今はゆっくり休めて……いや、何かおかしいぞぅ。


「ごっ、ごっ、ごっ、ごっ……ごくんっ、ふぁ~! オヤジ、もっろ強いお酒ちょうらい。こんなんじゃナーヒャは酔えないりょ~」


 明らかに呂律が回っていないバリバリの酔っ払いがそこに居た。

 持論だがVTueberは大きく二種類に分けられる。それはキャラ設定を遵守する者としない者だ。

 ガブやルーシーは天使と堕天使でライバル設定となっているが、普段その設定を意識してはおらず素の自分のまま配信している。

 

 その対極に位置するのがナーシャだ。彼女は妹系魔法使いというキャラでデビューを果たし、その設定を守って配信している。

 ホラーゲーム配信や飲酒雑談配信の際に設定が飛んで関西弁でしゃべり出す事が時々あるが、そんな素の彼女を見られるのも楽しみの一つとなっている。

 

 今まさにメン限飲酒配信時と同じキャラ崩壊した状態になっている。

 ちなみに俺はぶいなろっ!!全メンバーのメンバーシップに入っている。メン限配信は普段の配信では見られないような彼女たちの一面が見られるので非常に楽しい。

 六期生のメン限ではコメントを打つが、その他のメンバーのところでは基本的にROM専だ。


 今は配信中だしいつものようにROM専準拠でいこう。今日は調子に乗って悪目立ちしたので、あとは大人しくして過ごそうと思います。


「お客様、先程からソフトドリンクしか飲んでいませんが何かカクテルでもご用意致しましょうか?」


 初老の紳士なバーテンダーが気を利かせて言ってくれる。このNPCも最初の頃は過激派だったが今ではこんな風に空気が読める人に成長していた。


「今は仕事中で酒はダメなんでオレンジジュースください。ウーロン茶も捨てがたいですねぇ」


「かしこまりました。スクリュードライバーですね。少々お待ちください」


「うん、かしこまらないで。確かにオレンジジュースも入ってるけど、それ酒だから。人の話を聞いて!」


 バーテンダーは俺との会話のキャッチボールを放り出してカクテルを作り始める。NPCのAIはセシリーのデータが基になってるので基本的には自由奔放だ。

 間もなく俺の前にオレンジジュース……の入ったカクテル、スクリュードライバーが……いや、何かおかしい。飲み物に入っていてはいけない物が紛れ込んでいる。


「あの、これ釘……ですよね? 何故にこんな物が一緒に入ってるの?」


「女性に不足がちな鉄分を釘から摂取していただこうかと。当店の新作カクテル、スクリューパイルドライバーです」


「いや、それザン〇エフの必殺技やろ!!」

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