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第140配信 GTR 2日目 身長10メートルのリスナー

 <ギャングバトラーⅣ>の参戦もあって戦いはぶいなろっ!!チームの方が有利になっていた。ゲートがロボットを出してくるスピードより破壊するスピードが早い。

 ディフェンスタワーゲームであれば、これはもう勝ち確定の流れだ。


「勝ったな」


『アァ』


 俺は後ろで手を組み戦いを見つめ、セシリーは口元で手を組みニヤリと笑った。 

 二人でゲ〇ドウ君と冬〇先生ごっこをして勝利を確信しているとゲートが一回り大きくなった。


『やはり反応がありましたネ』


「確定だ。どうやら俺たちの仕事は一筋縄じゃいかないみたいだな。さて、何が出てくるのかね?」


 固唾を呑んで見守っているとゲートから新しいタイプのロボットが出てきた。西洋甲冑を模した重装甲の機体。そいつが数体出現し、それぞれ両刃の剣、鎖鉄球、大型メイス、ハルバードなど本格的な武器を装備している。


「何だ……あいつらは? 明らかに今までのネタに走った機体とは違うぞ」


『ワンユウ様、アンポンタン共から連絡が来たので繋げマス』


『ワンユウ君! まずい事になった。早くぶいなろっ!!のメンバーを逃がさないと全滅するぞ!!』


「それってあのロボの事ですよね。あれはそんなにヤバいんですか、安藤さん?」


『非常にヤバい!! あれは僕たちが酔った勢いで作成した機体<クリーガー>だ。本格的な戦闘用の機体で<パトライバー>と同等の性能がある』


「機体性能が同じならガブの操縦テクニックで勝てるのでは?」


『あくまで総合性能は同じぐらいなんだが、<クリーガー>は重装甲の上、関節部には電撃を通さない特殊処理が施されている。つまり<パトライバー>が得意とする関節破壊攻撃は効かないんだ。相性が悪すぎるんだよ!』


「どうしてそんなの作ったんだ!!」


『だから酔ってたんだよぅ! つい『僕が考えたツエーロボット』を目指してやっちゃったんだよ』


 今まさにガブの<パトライバー>が素早い動きで<クリーガー>の懐に入り込みハイボルトスティックを肘関節に打ち込んだ。いつもならそれで敵機の肘は壊れていた訳だが、あの甲冑ロボは無傷で剣を振り回してきた。


『ふぁっ!?』


 ガブは斬撃を紙一重で交わしバックステップで距離を取る。彼女の操縦技術と反射神経が無ければ<パトライバー>は大ダメージを負っていた。


 その他のメンバーも<クリーガー>相手に苦戦していた。

 <パピヨンロボ>のドッキリパックリメカが装甲を剥がしに近づくと大型メイスで叩き潰されていく。

 <ライジン>は小型の体躯と素早い動きを活かして近づき、雷神刀で斬り掛かるとハルバードで受け止められる。素早さは勝っている一方パワーで負けている。

 <ギャングバトラーⅣ>は鎖鉄球をジュラルミンケースで防御し防戦一方になっていた。


 <クリーガー>の登場で一気に不利になった。この間にもゲートからは<ザァコ>や<萌式>が次々に出てくる。


「酔った勢いで作った機体が普通に強いなんて滅茶苦茶だ。確かにこのままじゃ全滅してゲームを楽しむどころじゃなくなる。――セシリー!」


『準備は出来てイマス』


「管理者権限を行使する。ここからは俺たちの仕事だ。やるぞっ!」


『了解、管理者ワンユウよりアクセス確認。<Vリスナー>、オートパイロットモードで緊急起動、五秒後に出現シマス』


 前方では<ギャングバトラーⅣ>がジュラルミンケースごと吹き飛ばされて横転した。そこに鎖鉄球を振り回す<クリーガー>が急接近する。


『ギャァァァ! イヤァァァァァ!! 犯されるぅぅぅぅぅぅぅ!!!』


『やべぇ、ヤられる!』


『ホラーゲームも怖いけど、本気で向かってくるロボも怖いーーーー!!』


『うへへ、皆いい声でさえずってるニャ。これはこれでレアなASMRニャー』


 一名を除いてギャングチームはパニックに陥っている。台詞だけ聞くともはや事件!


『出現ポイント変更!』


『合点承知の助。ギャングチームの援護を行いマス』


 言うと同時に急いで<ギャングバトラーⅣ>へ向かって駆け出した。既に敵機は彼女たちの足元に立ち、舌なめずりするようにして見下ろしている。

 他のメンバーも自分の敵を相手するのに精一杯で助けに行ける状況じゃない。コメント欄も「これはまずい」と混乱状態。

 悪漢の手が仰向けに倒れるギャングチームに伸ばされ、触れる直前でそれは起こった。


「――来た!」


 頭頂高十メートルにも及ぶ灰色の人型ロボが突如出現し悪漢の顔面をぶん殴りぶっ飛ばした。何の前触れもなく現れた機体を目の当たりにして周囲に居る者全ての動きが止まる。

 まるで時が止まったような状況の中、俺だけは全力疾走で現場に向かう。<ギャングバトラーⅣ>が丁度良い感じで横になっているので利用させて貰おう。


「ルーシー! 少しの間だけそのままで頼む」


『ワンユウ? え、ちょ、何する気!?』


 ルーシー達が戸惑う中、彼女たちの機体を駆け上がり、猛ダッシュで灰色の機体目がけて全力ジャンプする。


『ああん! ワンユウがルーの上を全力で駆け上がってイクぅ』


『また一人の男が我の上を通り過ぎていったニャ。モテる女はつれぇニャン』


『そんな事言ってる場合? 彼、飛び降りたんだよ!? 死んじゃったよぉ!!』


『この緊迫した状況でよくボケをかませるよな。呆れを通り越して尊敬するわ!』


 ギャングチームがワチャワチャやってる中、灰色の機体は俺をキャッチ。胸部のコックピットハッチを開き、手をその付近に寄せる。


「ぶいなろっ!!サーバーへようこそ、相棒」


 コックピットの中に入るとシートに座りハッチを閉じる。コックピット内は全天周囲モニターを採用していて機体周囲の映像が全て表示されている。

 十メートルのロボットの胸部にこんな大がかりな装置を組み込むのはスペース的に不可能なのだが、これはVRゲームなので割と何でも有りだったりする。理屈よりも浪漫優先!

 セシリーは肩から飛び降りると正面に設置してあるドリンクホルダー型専用シートに座り作業を開始した。

 モニター正面には倒れていた<クリーガー>が立ち上がろうとする様子が映っている。


『機体へのアクセス完了、全システムオールグリーン』


 セシリーが機体のシステムとリンクを開始。操縦系の操作パネルにOS画面が立ち上がりStrike Assault Knight Edgeと表示される。


『オートパイロットモード解除。機体の操縦権を管理者ワンユウに譲渡。ユーハブコントロール』


「アイハブコントロール。さあ、いっちょやりますか!」


 グリップ型の操縦桿を握り機体を動かすイメージを送り込むとその通りに灰色のロボットは動き出した。

 GTRのロボットはイメージで動かすのでぶっちゃけ操縦桿は飾りだ。しかし、これが有ると無いのとではイメージのしやすさが全く違うので大事な要素だ。


『操縦イメージ開始から動作反応までの誤差修正完了。管理者専用人型決戦機動兵器<Vリスナー>起動。ワンユウ様、お仕事開始デス』


「あいよっ! <Vリスナー>出る!」


 さっきぶっ飛ばした<クリーガー>が立ち上がり鎖鉄球を振り回し始める。遠心力を付けてこっちに投げるつもりだ。


「隙だらけだっつーの!」


 操縦桿を前方にスライドさせて敵の懐に飛び込むイメージをすると<Vリスナー>はダッシュして一瞬で間合いを詰めた。

 <クリーガー>の片腕を掴み握り潰し、持っていた鎖鉄球を奪って本体を蹴り飛ばす。よろめきながらも転倒せず睨み付けるようにこっちを見る。


「鎖鉄球のもっと良い使い方を教えたるわ!」


 鉄球部分に手を添えて握り潰すように掴んで形を歪ませる。そして思い切り投げつける。それだけ!

 歪な形になった鉄球は不規則な動きで高速飛行し<クリーガー>の腹部に直撃貫通、間もなく奴は爆散した。


「昔読んだドッジボール漫画の必殺技よ!」


『鎖のアイデンティティ完全無視してて草』

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