第139配信 GTR 2日目 設定適当にしてると途中でキャラ崩壊起こしがち
ゲート前の戦いが激化する中、ギャングチームが四台の車両に乗って乱入してきた。ユニに造って貰ったのだろうが、それぞれ変わったデザインをしている。
ルーシーが乗っているのはトレーラータイプ、他の三人が乗っているのはスポーツカータイプ。銃火器を搭載しておりマシンガン級の火力で<ザァコ>の群れを蹴散らし、<萌式>にも牽制して萌え萌え攻撃を撃たせないようにしている。
「ギャングチームのお陰で戦いは維持できてるが……どう見る、セシリー?」
『これまでの状況から考えてゲートに変化が起こる可能性がありマス。そうなった場合、ゲートをコントロールしている何かの意思が働いていると考えられマス。想定されていたバグの中で最悪のパターンが発生しているかもしれまセン』
「やっぱりそうなるか」
俺とセシリーの意見は一致している。他箱で実施されたGTRと違ってぶいなろっ!!サーバーではNPCのAIに教育をメッチャ施し人間顔負けの行動が可能になった。その結果システムに掛かる負荷は大きくなりバグが発生する確率が上がっている。
その上ゲーム開発部の面々が裏で色々やっていたのもあって負荷は更に大きくなってバグの発生状況は当初の予想を大きく上回っていると考えられる。何が起きても不思議じゃない。
『何はともあれ今は目の前の問題を解決する方が先決デス。いざという時のために準備をしておきマス』
「頼む」
これ以上、状況が悪化したら皆の手には負えなくなる。いよいよとなったら俺が直接やるしかない。
<ザァコ>は倒されても倒されても数が減らずゲートまでの道程は雑魚まみれだ。ゲートからのロボ生産スピードがどんどん上がっている。もうね、ロボットわんこそば状態だよ。
『敵の数を減らしてもゲートから次々に出てきてキリがない! こうなったら合体するしかねぇ!!』
『ええ!? でも、まだ武器が……』
『そうだとしても車のままじゃ不利だし合体した方がパワーが一気に上がるでしょ。サターナ先輩!』
『皆やる気みたいだニャ。機体は未完成ではあるけど、それはそれで何か格好いい感じがするから問題ないニャ! レーッツ!!』
『『『『ギャーングボイイ~ン!!』』』』
ギャングチームの四人が何か始めた。合体? ギャングボイイン? これから一体何が起こるんだ!?
ギャングチームの四台の車両がフォーメーションを組んで走行……してると思ったらタイヤが下方に折りたたまれて低空飛行を開始した。そして何処からか大音量で曲が流れ始める。
「これはイントロ? 何処から聞こえてくるんだ?」
『どうやらギャングチームの車両が音源のようデスネ。歌が始まるみたいデスヨ』
『ギャングバトラーⅣのテーマ』
歌:ギャングチーム(サターナ、シャロン、ノーム、ルーシー)
『『『『ぶい、ぶい、ぶい、ぶいちゅぱっ! ギャ~ングボイイン、ワン、ツー、スリー! フォー、ブァルルン、窃盗だー! リスナーどよめく超ギャングロボ~! 仁義のギャングだ、ギャングバトラーⅣ! 超ギャングメーリケン(サック)、超ギャングジュラルミン(ケース)、超ギャングズドォォォォォォォン!! センシティブ上等! 配信事故上等! 収益化停止怖くてライバーやってられっか~(あっ、嘘でーすごめんなさい、テヘペロッ)! オレ等の~オレ等の~ギャーングバトラーFoooooooooooooo!!!』』』』
ルーシーが搭乗するトレーラーの運転席部分が上半身、荷台部分が脚部になる。
そこにシャロンの車が二つに割れて足に、ノームの車も二つに割れて腕部に、そしてサターナの車は真ん中辺りから割れて胸部と頭になって巨大な人型ロボットが完成した。
『『『『合体完了! 超ギャングロボ、ギャングバトラーⅣ!!』』』』
歌が終わると同時に完成したギャングチームのロボ<ギャングバトラーⅣ>は雄々しく大地に立った。合体ロボという俺たちの浪漫が詰まった機体が遂に爆誕した。
「――って、合体した!? 提出されてた資料には合体するなんて書いてなかったし、GTRのロボには合体機能なんて……まさか、プログラム改造したのか? それはさすがにまずいだろ。でも、やっぱ合体ロボは良いなぁ」
『ワンユウ様、安心してくだサイ。ぶいなろっ!!サーバーのGTRは最新バージョンを採用しておりシークレット要素としてロボの合体機能が追加されたのデス。違法改造プログラムではないのでご安心ヲ。この事実を知ったユニ様が急遽合体ロボに仕上げたみたいデスネ。それで機体完成に時間が掛かって、バハーム様とフェネルのロボは今回は間に合わなかった模様デス』
「だから二人共いなかったのか。それにしてもこんなハイペースで次々にロボ造るユニは本当に凄いな。合体ロボ……凄い威力の必殺技とかあるのかな?」
『GTRなのでそういう類の武器は実装されていませんヨ。特にぶいなろっ!!サーバーではビーム兵器は無しという設定なので物理で泥臭くぶっ飛ばす感じになるでショウ』
ギャングチームの様子をウィンドウ表示すると四人はトレーラーの運転席に集まっていた。どうやら<ギャングバトラーⅣ>は合体すると搭乗者が一箇所に集まる仕様のようだ。
映像を見るとハンドルを握っているのはルーシー。他の三人は何かワチャワチャしてる。
「ルーシーが<ギャングバトラーⅣ>の操縦をするのか。俺もあいつもガブとロボゲー対戦やりまくって腕をあげたからな。きっと良い戦いをするよ」
『それってロボゲーという比喩を使った別の対戦の話なのデハ? 大人プロレスヤりまくって上手になったんですかそうデスカ』
「違うわ! 普通にアクションロボゲーだよ。ガブは配信でロボゲーもよくやってるから凄い上手なんだよね。その経験がGTRでも活かされてる。そんなガブに鍛えられたルーシーも結構な腕前になってる。まあ、見てみなよ」
<ギャングバトラーⅣ>が動き出す。足底部のタイヤでローラーダッシュをする事で<パトライバー>の倍近いサイズながら動きが素早い。
『『『『ギャングバトルゴォーーーーーーーー!!』』』』
道路を滑走して一番近くに居る<萌式>に向かっていく。どんな武器を使うんだろ? 事前資料には武器情報は記載されていなかったのでワクワクする。
背中から銀色のアタッシュケースを取り出し両手で持つと大きく振りかぶる。
『超ギャング! ジュラルミンケーーーーーーース!!』
まさかと思っていたら超巨大なジュラルミンケースで<萌式>をぶん殴った。派手に地面に倒れた敵を何度も叩いて爆散。炎の中から抜け出した<ギャングバトラーⅣ>は次の獲物のもとへ走って行く。
『ロボバトルというよりはゴロツキの喧嘩みたいデスネ』
「戦いの仕方が泥臭いにも程がある!」
ジュラルミンケースを開くと中から金属片を取り出し手に装備した。これは……!
『超ギャング……メリケンサァァァァァァック!!』
メリケンサック――別名ナックルダスターは、やんちゃな男子たちが喧嘩をする時に仕込み武器として使う事で知られている。ギャングが使ってもおかしくはない……おかしくはないのだが、ロボバトルで使うか?
しかもこれ歌にも出てくるし。ってか、ツッコもうか悩んでいたけどやっぱ言うわ。ロボの代表武器がメリケンサックとジュラルミンケースってなんだよ! もっと、もっと何かさあ、折角のロボバトルなんだしロボならではの武器とか使って良いと思うんだよ。泥臭い戦闘は好きだけど、もっと浪漫を供給してくれ!
俺の心の叫びとは裏腹にルーシー操る<ギャングバトラーⅣ>はメリケンサックで殴りジュラルミンケースでぶっ飛ばす街中喧嘩殺法で<萌式>を叩きのめしていった。
その暴れっぷりを前に近くで戦っていたガブとベルフェは驚嘆していた。そういや六期生四人中三人がパイロットって六期生推しとしては嬉しいな。
『ルーシーの戦い方って何処となく現実味があるというか、もしかして元やんちゃ系だったりする?』
『や……違うよぉ! 普通に天使学校に通ってた優等生に決まってるっしょ』
『そうそう、ルーちゃんと私は天使学校の同級生なんだよ。ルーちゃんはその中の陽キャグループで私は陰キャ……うっ、お腹がキリキリしてきたぁ』
『そっ、ルーは天使学校のアイドルだったのよ』
『天使学校? そんな設定知らないよ! それ絶対に今二人で作ったよね!? 適当に設定作るとあまちゃんの初期のわらわ口調みたいに設定崩壊するからね。既に微妙に陽キャとアイドルで食い違い出てるし。キャラ設定って大切なんだよ。小説で設定考える時だって絵が無いから喋り方で個性出すとか色々あるしさぁ』
ベルフェはプライベートでエロ小説書いてるのもあってガブとルーシーの即席適当設定にブチ切れていた。初期設定をちゃんと練っておかないと途中でキャラ崩壊起こしがちになるからなぁ。
そういや、俺も小説書いてる設定あったけど、あれって今どうなってるんやろ? ほら、こんな感じで設定崩壊起こすんだよ。




