第137配信 GTR 2日目 思春期男子をなんだと思ってるんですか!
ドM三名のボケにツッコんでいたら再びバグロボ集団の攻撃が始まってしまった。ゲートのある海岸方面の進路上にも大量にいる。
『ガトリング砲で一掃します。皆さんは下がってください』
『ガブリエール様、お待ちくだサイ。あの集団の中にNPCが搭乗した作業用ロボが紛れていマス。出来ればNPCは不殺でお願いシマス。スーパーコー〇ィネーターならヤレル!』
『それならエルとシャルの出番だね。NPCが搭乗した機体はエル達で対処するからそれ以外は頼んだよ。それじゃあやるよ、シャル』
『はぁ~い! ふふ……ふふふ、エルお姉ちゃんに頼りにされている。ハァ……ハァ……』
超シスコンのシャルルから不気味な笑い声が聞こえてくるが誰も気にしない。
太陽が東から昇るように、味噌汁を作る時には最後に味噌を入れて完成するように、シャルルがエルルで発情するのは当たり前の事なのだ。
エルルの<ガンライバー>は、より高い位置に移動すると片膝を突きスナイパーライフルを構えた。額部のセンサーバイザーが目元に下りて長距離狙撃モードに移行する。
『NPCの人数は五人か……余裕だね。まずはこっちから仕掛ける。狙い撃つよ――『ロボだけ破壊する狙撃』』
某一般攻撃魔法みたいな台詞と共に発射された長距離狙撃によって一機の作業用ロボが破壊された。俺の見間違いでなければコックピット付近を撃ち抜いたハズ。……恐らく搭乗者は助かるまい。
そう思っていたら爆発した機体から衣服だけがボロボロになったNPCが走り去って行く姿が見えた。――なんで?
続けて長距離狙撃の二射目が撃たれ、やはり間違いなくコックピットあたりを撃ち抜き爆散。それなのに大破したロボットからは身体中ススだらけになった下着姿のNPCが逃げて行く。
「いや、だから何で服はボロボロなのに怪我せず元気いっぱいに逃げていくの!? まさか魔法なの?」
戸惑っていると今度はシャルルの<ガンライバー>が敵集団に突撃し二丁のサブマシンガンを構える。
『今度はシャルの番ですね。乱れ撃ちます――『ロボだけ蜂の巣にする射撃』!』
狙いなんて定まっていないであろう乱射によってシャル機を囲んでいた作業用ロボは次々に穴だらけになって爆発していく。これ絶対NPC助ける気ないだろ!
それなのに……それなのに、やっぱり最低限のボロ布を身に付けたNPC三名が元気よく逃げていく姿が見えた。
「いやもうこれイリュージョンだよ!! コックピットぶち抜かれてるのに何で生きてんだよ。良いんだよ、生きていてくれて嬉しいんだけど釈然としないんだよ!」
『逃げる時に布一枚の姿になっているのがミソデスネ。もっとも搭乗者は皆おっさんなので目の保養にはなりまセンガ。誰も幸せにならない脱衣麻雀ミタイナ』
筋骨隆々おっさんだらけの脱衣麻雀で喜びそうなのはキャニオン社長ぐらいだ。
当の本人はGTRぶいなろっ!!サーバー期間中は海外での仕事が入ってしまい泣く泣く飛行機に乗って行った。
魔法みたいな射撃テクでNPCの犠牲者は出ずにロボットだけが破壊された。無人機はアンバー姉妹以外のメンバーがフルボッコにして早々に決着がついた。
この戦闘の様子を見ていて改めて分かった。これ普通に戦って警察に勝てるヤツはいねーわ。ぶいなろっ!!のドM勢が集中しているから最初は弱いのではないかと思っていたが、ドMは満足させられないと凶暴化して手が付けられないと判明した。
取りあえず出島署周囲の状況が落ち着いたのでガブとベルフェと一緒に海岸方面に向かった。
道中、散発的にバグロボの姿が見えたが、それらは放って海岸にいるゲートに向かって一直線に移動する。こいつらの相手をしている間にもゲートから次々にバグロボが出てきているので相手をするだけ無駄だ。
この終わらないディフェンスゲームに一刻でも早く終止符を打たないとジリ貧になってしまう。
「……ん? あれは……」
『<パピヨンロボ>だ! キャバクラチームが戦ってるんだ。あー、またキャバクラに行きたくなっちゃった』
孤軍奮闘しているのはメルア姫、セリーヌ、ネプーチュの三名から成るキャバクラ怪盗チーム。当初は俺の監獄脱出に協力する為に犯行声明を出して警察を混乱させていたが、この緊急事態を前に<パピヨンロボ>でゲート周辺のバグロボと戦ってくれていた。
『メルア先輩、セリーヌ先輩、ネプーチュ先輩、加勢します!』
『ガブにそっちは……ベルフェかぁ。助かるぅ、さすがにこの数相手だとキツくなってきたとこだよぅ』
ネプーチュの安堵の声が聞こえてきた。大量の敵機相手に距離を取って逃げながら攻撃時には接近、そして逃げるを繰り返す戦法を取っている。
<パピヨンロボ>の周囲には小型デフォルメロボが何機もばら撒かれてバグロボに取り付き装甲を外していく様子が見えた。
『今回のズッポシボッキリメカは装甲を剥ぐタイプみたいデスネ』
「ドッキリパックリメカね。あれってリスナーにアイディア募った装備だったよな。装甲を外せば防御力なんて無いのと同じ。昨日の朗読劇より随分実戦的になったなぁ」
『ちなみに今回のドッキリパックリメカ『装甲を外す小型ロボ』はユーザーネーム、ブラテンさんのアイディアですわ。「敵の防御力を下げると戦いが楽になるのはどのゲームでも共通だから、これならどうでしょうか?」とコメントを頂いております。ブラテンさん、ありがとうございます。あなたのお陰で現在進行形で無双していますわー!』
誰のアイディアかと思っていたらブラテンかい! ガブリエールが空野太陽だった頃からのリスナーでガブちゃん愛してるグループのメンバーの中でも一番常識人で物腰も柔らかい参謀的人物。この無駄が無い上に効果的なドッキリパックリメカもあいつの考えなら頷ける。
次から次へと装甲を剥がして八本脚から繰り出されるキックでバグロボはワンパンされていく。はて? 何だかこの光景はつい最近見たような……既視感バリバリなんだが。
『これではまるで追い剥ぎデスネ。先程のアンバー姉妹といい此度のキャバクラチームといい、相手の衣類を引っぺがすのが流行っているとは……アマゾネスは怖いデスネー』
「忘れているかもしれないので一応言っておくけど、君もそのアマゾネスの一員だからね。――それにしてもブラテンは悲劇だな。あいつはこんな脱衣麻雀プレイに使われるとは思っていなかっただろうからな」
『あらぁ、何だかゲートの様子がおかしくない?』
セリーヌがおっとり口調で不吉な事を言うので見てみるとゲートが大きくなっていた。今まさにどんどん大きくなっていく。
『あのゲートは思春期男子なのデスネ。綺麗なお姉さん達に注目されて元気になるなんてイケない子ネ』
「それは下ネタですか?」
『下ネタデス』
「サイテー。思春期男子をなんだと思ってるんですか!」
『エッ? 性欲に目覚め厨二病に身を堕とした野郎共デショ?』
「否定できねー。まさに俺がそうでした!」
『ワンユウさん、セシリー先輩、元気になっちゃったゲート君から何か出てきちゃいます!』
「何かもうゲートがアレなのが共通認識になっちゃってるよ! 頼むゲート君、マジで頼むから白い物以外を出してくれ!」
俺の願いが通じたのかゲートから出てきたのは作業用ロボとは違う黄土色の人型ロボットだった。明らかに戦闘用……例の如く俺が知らない機体だ。
「それはそれとして! とにかく白くなくて良かった!!」
『でも黄土色も危険じゃないデスカ?』
「セシリー……それ以上は……何も言うな……!」




