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第136配信 GTR 2日目 警察チーム全員集合そしてその半分はドMで出来ている

「出島署の近くまで来たけど、ここが激戦地になったみたいだな」


『フェネル先輩の悪魔の眼でロボ操縦士を操って突撃させたからね。そこにバグロボが一緒になって暴れたから……』


『出島署の皆は無事なんでしょうか? もしかして全滅なんて事は……』


 出島署に近づけば近づくほど作業用ロボットの残骸は増えていく。<パトライバー>の残骸は無さそうなのでやられてはいないと思うが、果たしてどうなったのか。


「セシリー、警察チームの配信はどうなってる?」


『……間もなく出島署に到着シマス。現状を直接見た方が早いと思いマス』


 セシリーがいつになく深刻そうな雰囲気で話す。それが意味するところには察しがつく。悲惨な状況が俺たちを待っているという事なのだろう。 

 間もなく出島署に到着した俺たちの目の前には予想を遙かに上回る凄惨な光景が広がっていた。

 この辺りは『ネオ出島』内で最も都市化が進められていた場所だ。それにも関わらず多くの建物が倒壊しており、激しい戦いが行われたのだと俺たちに知らしめる。


 そして、その惨状は現在も広がり続けていた。逃げ惑う者とそれを追い襲う者。目を背けたくなる弱肉強食の現実がそこにはあった。


『どうしたぁぁぁぁぁぁ! そんな軽い攻めでは全然満足できないぞ。もっと腰に力を入れて一発一発に魂を込めて打ち付けてみせろぉぉぉぉぉぉ!!』

 

『んー、ダメダメねぇ。やっぱりこんな無人機じゃ、わたし達を満足させられないって事かしら? 言葉責めって重要なんだって改めて分かったわ。プレイ中に無言じゃ楽しくないもの』


 ドM気質を満足させられなかったサリッサとクロウの<パトライバー>が逆ギレしてバグロボをしばき倒していた。

 NPCが搭乗しておらず感情のないはずのロボが恐怖に駆られて逃げ、そこを後ろから捕獲されてボコボコにされる。

 まるでアマゾネス集団に襲われる男子たちみたいな光景だ。くそっ、心配して損したわ。


『サリッサ先輩、クロウ先輩、ガブリエール戻りました。加勢します!』


『ガブリエール! ワンユウ君は捕まえたのか?』


『はい、一緒です。それにベルちゃんも合流して、セシリー先輩も含めて四人で行動しています』


『だったら、ここはいいから海岸方面に向かってくれ。バグロボを生み出している歪みが発生している。恐らくそれを破壊しに彼やセシリーと行動を共にしているのだろう?』


『でも……』


『大丈夫、大丈夫、出島署の守りは完璧よ。なんてったって警察チーム全機が出撃してるからね』


 クロウが言った全機。それはつまり<パトライバー>三機と別タイプの三機を加えた六機の事。メカニックのユニ・ホーリーはあの機体も完成させていたらしい。

 <パトライバー>が交番のお巡りさんだとするのなら、別タイプの機体は特殊部隊の隊員。前者は接近戦仕様で後者は遠距離戦仕様となっている。


『ワンユウ様、コフィンにバグロボが三機接近してイマス』


「やべっ、戦場で動きを止めるなんて攻撃してくれって言ってるようなものじゃないか。一生の不覚!!」




『狙い撃つよ』


 コフィンを急発進させようとすると、何処からかクールな声が聞こえてきた。そして次の瞬間には近づいていたバグロボの一機が撃ち抜かれ爆発した。


『乱れ撃ちます!』


 二機目は凜とした声が聞こえた後に身体中が穴だらけになって爆散した。


『撃ち殺す』

 

 三機目はやたら物騒な台詞と共にド派手に吹っ飛び爆発した。


 三機のバグロボを破壊したのはダークブルーの機体色が特徴の警察用機体<ガンライバー>。目の部分はサングラスみたいなゴーグル型になっている。

 建物の上からスナイパーライフルで狙撃をしたのはエルル機、二丁のサブマシンガンで蜂の巣にしたのはシャルル機、ショットガンでぶっ飛ばしたのはホロウ機だ。

 監獄の番人だった三人は有事の際には<ガンライバー>でロボバトルに参戦していた。


『援護ありがとうございます。エルル先輩たちも<ガンライバー>で出撃していたんですね』


『これだけ大量の作業用ロボが襲ってきたからね。明らかに異常事態だから運営に確認したら原因になっているゲートを壊しにスタッフが向かっているって返答があってね。無限に湧いて出てくる敵を倒しながらその到着を待っていたんだよ』


『それで今そのスタッフが到着した訳だ。待っていたよ、ワンユウ君。脱獄囚がこんな形で戻ってくるなんて思わなかったよ』


「いやー、こっちもこんな出戻りをするとは予想していなかったもので。とにかく今は事態収拾の為に協力して貰えると助かります」


『シャル達はもちろんそのつもりです。警察チーム全六機はファイプロスタッフのワンユウさんのデバッグ作業を手伝います』


『ちょっと待ってー! ベル様も手伝うから、そこんとこよろしく』


「ありがとう、恩に着ます。それではさっきサリッサが言っていたように出島署周囲のバグロボは警察チームにお任せします。ガブとベルフェはこのまま俺と一緒に行動してゲートを壊すのを手伝ってくれ」


『分かりました』


『任せてー』


 無限に沸き続けるバグロボは出島署周囲に集まってきているので、ここで数を減らして貰えると助かる。それに出島署にはNPCが大勢避難しているみたいなので死守して欲しいという思いもある。


「NPC……そう言えば、NPC搭乗の作業用ロボもたくさん居たと思うけど、それはどうやって対処したんだ?」


 その瞬間ホロウの表情が曇る。そこから察するにきっとNPCは搭乗していた機体ごと処理されたのだろう。

 大量のバグロボが合流したことでNPCを傷つけずに対処する余裕なんて無かったハズだ。少し考えれば分かる事だったのに、答え難い質問をしてしまった。


『襲撃序盤は有人機の割合が多くてな。私とサリッサとクロウはコックピットから引きずり出されてNPCの集団にエッな事をされるシチュを実行しようとしたんだが、エルルとシャルルが全機破壊した。搭乗していたNPCは全員無事で地獄の監獄(ヘルプリズン)に送ったよ。……はぁ~、絶好のチャンスだったのになぁ~』


「……心配した俺がバカだったよ。この状況においてもドMは何処までもいってもドMなんだって事がよーく分かった。もうね、救いようがないよね、ドMはさ!」


『おっふ!』


『んきゅ!』


『あはっ!』


 ドM三名から変な声が聞こえてきた。モニターには上気したドM達の姿が映っていたが、構わずにスルーする。

 それにしても凄いのはエルルとシャルルだ。彼女たちアンバー姉妹は配信ではFPSゲームを好み、他の箱のVTuberと一緒にプレイする事も多い。その腕前はプロゲーマーを唸らせるレベルで射撃主体の<ガンライバー>と相性が良いみたいだ。


「エルルとシャルルが居れば問題なさそうだね。あのドM三人は囮として活躍してくれそうだ」


『な……我々に肉壁になれと言う事か!? 雑に物扱いされるこの感覚……たまらん!』


『無人機相手じゃ今イチ興奮しなかったけど、そんな無茶ぶり命令されたら……たぎってきたわねぇ』


『マゾのツボを押さえるのが上手いな。やはりワンユウ君は天性のドSのようだ。ガブリエールとルーシーが羨ましい。普段からどんな命令をされてるんだ? やはり配信中にローターを――』


「バカなの!? ローター仕込んで配信中にイタズラして楽しむ性癖は俺には無いからね!」


『ワンユウさん、ホロウ先輩はローターの具体的な使用法は言ってないですよ。でも、そう言うって事はワンユウさんにはそうしたい願望があったんですねぇ。人として配信者として越えてはいけないラインだと思いますけど……よし! やってみましょう、ローター配信!』


『あっさりライン越えする気満々で草』


『やんのか? マジでローター配信やんのか、ガブ!? やべぇ、これは同期として最初から最後まで見届けるべき案件だぁ。ルーシーとあまちゃんにも伝えとこ』


「止めろ、ガブ!! お前は一体どこに向かって進んでるの!? 取りあえず初心を思い出す為に第一話の自分を見返せ! ……ああ、ダメだ。最初から割と変人だった」


『そんな事よりバグロボの集団がまた来ていますけどいいんですか?』


『『『『『『「……え?」』』』』』』


 シャルルが呆れた様子で敵集団が迫っている事を教えてくれた。ここで油を売っている場合じゃない。急いでゲートをどうにかしないとGTRが二日目にして終了になる可能性がある。

 何だかラブコメアニメ終盤に突然訪れるシリアス展開みたいになっているが、皆が好き放題にやってのバグ暴走だから割とコメディだったりするんだよね。

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