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第134配信 GTR 2日目 オモエロかっこいいぜ

 これから俺たちが向かう方向には十機以上の作業用ロボットの姿がある。道路上にも居るので、このまま<コフィンキャリアー>で突っ切る事も出来ない。


「無理矢理コフィンで走り抜けようとすれば袋叩きにされるな」


「私が道を作ります!」


 ガブが<コフィンキャリアー>の荷台に乗り込むと車体が傾かないようにアウトリガーが地面に下りて固定される。それから荷台が稼働し垂直になると元々天井だった部分が左右に開き、内部に<パトライバー>の姿があった。


 コフィン――『ひつぎ』を意味するその大型トレーラーは<パトライバー>を輸送運搬するための車両だ。スラスター等の推進装置が装備されていない<パトライバー>は長距離移動に向いていないので、その足の遅さをカバーしつつ機体のエネルギー消費を抑える役割がある。つまりは元ネタ設定そのまま採用! 大型トレーラーがロボットを輸送する光景はワクワクすっぞ。


『ガブリエール・ソレイユ、<パトライバー>いきます!』


 機体を固定していたロックが解除され<パトライバー>が動き出す。コフィンから降りると進行方向からやってくる作業用ロボの集団と向かい合った。

 

『ガブリエール様の操縦技術と<パトライバー>の性能であれば突破は可能でしょうが苦戦は免れないと思いマス。そろそろこっちもロボ解禁イットク?』


「そうだな。相手がバグなら遠慮はいらない。来い、ブイ――」


「ふっふっふっふ、どうやらベル様の初陣の舞台が整ってしまったようだな」


 <Vリスナー>を呼ぼうとしたらベルフェが不敵な笑みを浮かべながら言い出した。そういや今回の脱獄計画の為にロボットを造って貰ったと言っていた。

 その割にベルフェはロボットを用意しているようには見えない。これは一体……。


「ベルフェもロボットで戦う……と?」


「その通り!! 敵に囲まれたこの状況で仲間を救うために新型のロボで出撃する。――理想的な展開じゃあないか!!」


『ところで肝心のベルフェ様のロボットはイズコニ?』


「さすがセシリー先輩、見事なフリをありがとう。今からベル様がロボを召喚するからよーく見ててね!」


「『召喚?』」


 それはつまりロボットを呼ぶって事か? 俺の場合は管理者権限でロボを自由に出現させられるけど、一般プレイヤーのぶいなろっ!!メンバーにはそんな事は出来ないハズ……。

 疑問に思っているとベルフェが懐から、やたらデコっている独楽こまを取り出した。あれは……!


「ベ〇ブレード……だと!?」


「ちょっと違う。これはマジカルベイブレードだよ!」


『頭にマジカル付けただけデスヨネ? それで伏字を消すとは何て強気ナ……』


 ベルフェがマジカルベイブレードをランチャーにセットし構える。これとロボットがどう繋がるのか分からないが、先が読めない展開に心躍る。


「いくよ! マジカルゴーシューーーーーーート!!」


 ランチャーのストリングを引き抜くと装飾バッチリのマジカルベイブレードが発射され、大きく弧を描きながら地面を走って行く。暫く走り続けると不思議な事に地面が輝き始めた。


「なにこれ!?」


『地面に六芒星の魔法陣が描かれてイマス。何が始まるのでショウカ?』


 ベルフェが両手で三角形を作り魔法陣に向けると輝きが一層増した。


「あの手の形は……気〇砲を撃つ気か!?」


『アハハ、古いデスネェ。あれはオー〇ービーフのCMのパロディに決まってるデショ』


「……君、年齢いくつ?」


『女性に年齢を訊くなんてサイテー。ていうか、AIだから年齢なんて概念ナイシー』


「エロエロエッサイムー! いかづち、出でよ、汝、ライジーーーーーーーーーン!!」


 俺とセシリーが脱線しながら見守る中、ベルフェが叫ぶと魔法陣から大量の粒子が立ち上り、光の柱が発生する。

 あまりにも幻想的な光景に見蕩れていると魔法陣の中から巨大な人工物がゆっくりと姿を現わし、全体が出ると空中に浮かんだ状態で停止した。


「マジで魔法陣から召喚した……GTRにこんな演出無かったハズだぞ。まさか、またゲーム開発部がシステムを弄ったのか? でも格好いいからいっか」


『……状況確認シマシタ。GTR本来のルールにのっとった演出のようデス。詳細を説明シマスカ? 少年の夢が壊れるかもしれマセンガ』


「お願いします」


 目の前にはまるで魔法みたいな浪漫溢れる光景が満ちている。胸に芽生えたワクワク感にヒビが入るのは嫌だけど、仕事なので詳細は聴いておかなければならない。


『まずは上空をご覧クダサイ』


 見上げると上空に何か飛んでいる。それも一つや二つではない。少なくとも十以上は居る。


『十機以上のドローン編隊デス。地面の魔法陣や光の演出はドローンから投影されるプロジェクションマッピングによるものデス』


「……え?」


『加えてあの人工物もといロボットはオートパイロット機能と光学迷彩が搭載されてイマス。これらを組み合わせて魔法陣から召喚する演出を作り出した模様デス』


「何て手間の掛かることを……」


『ちなみにロボが浮いているのはドローンがワイヤーで吊り下げているからデス。以上』


「ドローン優秀過ぎるだろ」


 ファンタジーさは色あせたけれど、ロボット召喚の演出にここまで力を入れるベルフェのこだわりに脱帽する。これがエンターテイナー、これがVTuberの本気か。

 感心しているとベルフェが少年悪魔探偵七つ道具の一つ、ジェットスケボーに乗って召喚したロボットに向かって走り出した。接近すると装甲の一部が開いてコックピットが顔を出す。


『あのスピードでコックピットに突っ込んだら全身強打で絶命シマスネ』


 セシリーの心配を他所にベルフェはそのままコックピットに突撃すると大きなエアバッグが受け止め無事に機体に搭乗する事ができた。


「最後は堅実な備えだったなぁ」


『乗り物に乗る時はシートベルトとエアバッグは必須デス。破天荒に見えて安全面に配慮した素晴らしい演出デシタ。大変参考になったので<Vリスナー>に乗り込む際に取り入れてミマス』


 セシリーがやると安全対策に不安しかないが、今のところ機体を呼ぶ必要はないので後で考えよう。

 

 ベルフェが乗り込むとロボットは変形を開始した。

 背部に折り曲げていた脚部を真っ直ぐに伸ばし、肩アーマー内に収納されていた腕を引き出すと一気に人型になる。

 最後は胴体に収納されていた顔の部分がせり出し手足が短めなデフォルメ体系の人型ロボットへと姿を変えた。変形が終了すると機体を吊っていたワイヤーが外れて大地に立つ。

 コックピットは機体の頭部に位置し、そこの装甲は半透明のキャノピー仕様になっているのでうっすらベルフェが見える。


『よーっし、変形完了! これがユニ先輩に造って貰った新型機<ライジン>だよ。オモエロかっこいいぜ!!』


 迫り来る作業ロボ軍団を迎え撃つため正面にて待ち構えるガブの<パトライバー>。その隣にベルフェの<ライジン>がやって来た。

 二機のフォルムはまるで大人と子供みたいだが不思議と違和感はない。何故だろうと思っているとライバーの体格とおんなじだった。


『機体もパイロットも大人と子供の体格差、見ていて微笑ましい光景デスネェ』


『セシリー先輩、通信繋げてるからこっちにも聞こえてるからね? 失礼しちゃうぜ、バーロー!』


「ロボットに乗ったら何か新しい人格が顔を出したな」


『ある時は悪魔、ある時は少年探偵、そして今はロボを操る悪魔探偵侍さ!!』


『ベルちゃん、キャラがとっちらかってるけど大丈夫? 自分を見失わないでね?』


『大丈夫、大丈夫、無問題モーマンタイだぜ、バーロー』


 いきなり中国語しゃべり出したよ。そういや、雑談配信で姉妹で中国旅行に行ってきたって言ってた。いきなり素が出てきて心配だ。それにバーロー言ってればキャラが立つと思ってるだろ。


『それじゃあ、六期生同士のチームワークを見せよう。ガブリエール・ソレイユ!』


『ベルフェ・ナハト!』


『『ぶいなろっ!!六期生、ゴッド&デビル! 神魔に代わってオシオキよ!!』』


 かくして六期生の二人がタッグを組んでバグロボ集団と戦闘を開始した。

 それにしても、「お仕置き」と「オシオキ」を比較すると後者の方が少しエッチな雰囲気を感じるのは俺だけだろうか?

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