第132配信 GTR 2日目 エロ策士ガブリエール
『ネオ出島』の各所で多数の作業用ロボットの暴走、怪盗パピヨンの犯行、市民のサンバが同時に巻き起こり出島署は本腰を入れて動き始めたらしい。
そんな状況なものだからガブリエール達には暴走ロボット鎮圧の命令が下りたようだ。俺を囲んでいた三台の<コフィンキャリアー>が動き出しサリッサとクロウは俺を通り過ぎていった。
『他の場所でロボットの暴走が起きたのでわたしとクロウはそちらに行く。ガブリエールは彼の方を頼む』
『ガブちゃんがワンユウ君を取り押さえて組んずほぐれつする所を見たかったけど残念だわ。それじゃあ、わたし達は失礼するわね~』
『了解しました。ワンユウさんを捕えたらすぐに合流します』
二人のコフィンが走り去るとガブリエールが運転席から降りてこっちにやって来る。その手には手錠が握られていた。
「舐められたもんだな。一対一で俺を捕まえられると思ってるのか? 自慢じゃないが逃げ足だけには自信があるぞ」
「ワンユウさんが逃げても何処までも追いかけて捕まえる自信があります。ご存じだと思いますけど」
『実際リアルで捕まっているだけに説得力がありマスネ。ワンユウ様、マジで自慢になってないデスヨ』
一瞬でレスバに負けて俺の逃げ足は大した事がないと分かった。もう自慢できるものが無いよ、お手上げかもしれん。
『逃げ切れる気が全くしまセン。この際ペ〇ティングでもなんでもやってやればいいジャナイ。私が映像モザイク処理と音声にピー音つけるんで、それで何とかナルッテ!』
「ありがとうございます、セシリー先輩! それならBANされないですね」
「待て待て待て待てっ、それ放送事故なヤツ!! ガブも感謝すんな。俺は愛の監獄なんて行かないからね。バグ処理しないとGTRの運営に支障が出るんだよ。知ってるだろ?」
「それに関してはセシリー先輩から貰った力でバグ処理代行をやっているので大丈夫です。バグは次々に出現しますけど片っ端から叩き潰してます」
「死神代〇みたいに言うのヤメて。――でもね、それだとガブの負担が大きいの。今は大丈夫だろうけどオーバーワークでそのうちぶっ倒れるぞ。デビュー一周年の時に無理して体調崩したの覚えてるだろ? GTRは長丁場だから無理せずプレイして欲しいんだよ。バグの対処は俺の仕事、ガブは警察の仕事。それぞれやるべき事をやろう」
伝えたい事は言った。ガブは話が通じない相手ではない。一周年記念配信でポコボイの謎をクリアした後に倒れたのは本人も気にしているので今のは結構効いたハズだ。
彼女は俯いたままゆっくり俺の方へ近づいてきて服の裾を掴んで言った。
「それでも……一緒に居たいんです。……ダメ……ですか?」
「ダメではないけど今は配信を頑張らないと。そうだろ?」
コメント
:我々にお構いなくー
:そうそう、若い二人なのですから遠慮せず猛り狂ってクレメンス
:セシリーが映像モザイクと音声ピー音やってくれるんでしょ? 問題ないじゃない
:そしてその解禁版を後で出してくれればいいじゃない
:ガブちゃんハッピー、ワンユウハッピー、リスナーハッピーでオールハッピー。何か問題があるかね?
:最終的にはオレ達ガブリスが一番良い思いをする流れになっていて草
:女子にここまで言わせた責任は取らんといけんよ、ワンユウ総帥。抱けーーーーー!!
:そうだそうだ! こっちはとっくに裸待機を済ませてるんだ。抱けーーーーーー!!
:抱っけ、抱っけ、抱っけ、抱っけ、抱っけ
:今来たんだけど、一気飲みコールの如く抱けと言ってるのはどんな状況?
:ガブちゃん発情からの総帥に諭されしんみりムード、抱いて欲しいれすという甘々の流れ
:なるほどありがとう理解した。抱けぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!
:ガブちゃんは抱けとは言っていないんだよなぁw
:息を吐くように嘘を言い、それに感化されるまでが早すぎるwww
:これがガブリス、使徒の結束力ですな。――で、いつ抱くん?
「抱けるかーーーーー!! 僧侶枠アニメの完全版みたいな流れにはならんからね! ノーダメージで美味しい思い出来ると思うなよ!!」
コメント欄ではガブリス共がブーブー言っている。一方のガブリエールは裾を掴んだまま離そうとしない。
「……ハグして欲しいれす」
「ハグ? 抱きしめて欲しいってこと?」
すっかりしおらしくなったガブは上目遣いで見つめながら頷く。さっきまでの破天荒さとのギャップもあって可愛さが当社比二十割増しになっとる。
抱くのはともかく抱きしめるのならセンシティブ的に問題はないだろう。
「分かった。それならヨウツベにもBANされないだろうから大丈夫だろう」
「本当ですか? やったー! 言ってみるもんですね。それじゃあ、よろしくお願いしまーす」
瞬く間にしおらしさは鳴りを潜めウキウキしながら背を向けてきた。ガブの感情がジェットコースターの如く変わっていくので追いつけず戸惑う。
それにちょっと困ったぞ。ガブを後ろから抱きしめるという状況になったが、この場合自分の腕を彼女のどこらへんに持っていったらいいのだろうか?
「お腹の辺りをハグしてくれると嬉しいです」
「分かった」
俺の戸惑いを見透かしたように抱擁のシチュエーションを提示してくる。誘導されている気がするが……。
とにかくこのままジッとしていても先に進まないのでガブを後ろからそっと抱きしめる。すると俺の腕にずっしり柔らかいものが当たった。まあ、おっぱいですよね。
これはよろしくないと思って腕を下方にずらすと彼女のデリケートエリアに近づいてしまう事に気が付き慌てて上方に移動させると再び下乳に触れてしまう。
何てこった。俺の腕が逃げ場を失っとる。センシティブポイントに挟み撃ちにされた。上に行ってもセンシティブ、下に行ってもセンシティブ。
「ワンユウさぁん、もっと強く抱きしめてくりゃはい」
「う、うん……」
ガブの声色が甘くなっていき、これ以上は危険だと思いつつも希望通りに抱擁を少し強くする。彼女の下乳に腕が食い込み押し上げるような状態になり、そのフワフワ感によって思考がおかしくなる。
足りない……もっとこのフワフワを堪能したい。あれ……? これって別に我慢する必要は無いのでは? だってガブは俺の彼女だし、何なら普段はもっと凄い事だってしてるし、もうちょい攻めても問題ないよね?
『……オヤ!? ワンユウの様子ガ……!』
抱きしめた腕を少しずつ上に移動させ布越しに伝わる胸の柔らかさが次第に増していく。
「あ……ふ、ワンユウさ……!」
上気した表情で振り返ったガブと目が合った。頭の中が真っ白になり自然と顔を傾ける。少しずつお互いの顔が近づいていく。
『ザンネーン! ワンユウはスケベに退化シタ!』
「誰が退化やねん! ……はうあっ!?」
セシリーの台詞に思わず突っ込み意識がはっきりする。目の前にはガブの顔、唇が接触する直前だった。慌てて離れて距離を取ると彼女は頬を膨らませて不機嫌な様子になる。
「うぅ~、もうちょっとだったのにぃ~!」
「もうちょっとでヤバい事になるとこだった。セシリーが居なかったら今頃俺は……」
『モザイク処理とピー音が必要になる事態になるところデシタ。ワンユウ様、完全にエロスイッチが入っていましタネ。ガブリエール様の胸に接触した瞬間、脳波が一気に乱れた模様デス』
自分でも気が付かないうちに危険な状態に陥っていた事に驚く。ガブはもうちょっとだったと言って悔しがっているし、まさか計算のうちだったのか?
「ハグしろと言ったのはこうなると分かって……?」
「その通りです。……ワンユウさんはラッキースケベが起こっても雰囲気に流されない強靱な理性を持っていますけど、最近気付いたんです。――自分の彼女に対しては割と簡単に発情するって!」
『ウケル』
「はぁぁぁぁぁぁぁっ!? そんな訳……そん……な……あ……」
驚き否定しようとするも、陽菜と月と付き合いだしてからの自分の行動を思い出してみると確かに簡単に理性を手放していたかもしれない。
「どうですか、ワンユウさん?」
「……仰る通りでした」
『やっぱり退化してるじゃねーデスカ。スケベどころか淫獣デスヨ。すっかりガブリエール様無しでは生きていけない身体になってて草』
「キス出来なかったのは残念ですけど、目的は果たせたのでよしとしましょう。私が本気を出したらワンユウさんなんてイチコロなんですよ。へへへ……」
ガブが言った『目的』。それが何なのか彼女は口にしなかったが俺自身が痛感していた。無意識に抑えていた性欲が刺激されて理性がガッタガタだ。やたら彼女を意識してしまう。
悪戯な笑みを見せるガブを見て思った。こいつはバカでも無ければ天然でもない。エロい展開に持っていく為に策謀を巡らす策士だ。