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第128配信 GTR 2日目 よくもだましたァァァァ!!

 俺、セシリー、怪盗キャバクラチーム、ギャングチームの面々は警察チームに捕えられ出島署地下の監獄にて刑期が終わるのを待つ身だ。

 前回は胸の格差社会ネタで丸々一話を使いあんまり話が進まなかったが今回も特に話は進まない。何故なら今回は俺がセシリーに復讐するだけのお話だからだ。

 あの自由奔放なクソ酒カスAIにドギツイのをかましてやる。その為の材料は既にここにある。ヤツに大ダメージを与えられるか否かは俺の努力次第。この恨みはらさでおくべきか!


 セシリーは一緒に監獄にぶち込まれているぶいなろっ!!メンバーと談笑している。その隙に復讐アイテムの様子を見に行く。


「結構種類があるな。これだけあればヤツに一泡吹かせるブツが作れそうだぜ。くくく……」


「なぁに気持ち悪い笑い声出してるのよ」


「――ッ!?」


 セシリーにバレたかと思い振り向くと亜麻色のセミロングヘアーに赤い瞳、小柄な体型に不釣り合いなビッグバストを有した堕天使が立っていた。彼女は明らかに呆れたという表情で俺を見つめている。


「何だ、ルーシーか。驚かせるなよ、計画開始前に見つかったと思っただろ」


「むぅ、なーにその言い方ぁ。ルーが声を掛けたのに眼中に無いって感じでムカつくんですけどぉ」


「ごめんごめん、ちょっと今大事な下調べ中でね」


「下調べ……って、さっきからドリンクバーを眺めてブツブツ言ってただけでしょ? 飲み物で何かするの?」


「誰にも言わないって約束出来る?」


「出来る」


「……セシリーに復讐するぅ!!」


「はい?」


 セシリーへの復讐内容を一通りルーシーに説明すると再び呆れた顔をしていた。そりゃあ分かりますよ。ええ分かりますとも。この復讐劇がしょうも無いって事はね!

 でもね、ここでやらなけりゃ腹の虫が治まらないんだよ。いつもヘラヘラ笑っているあの酒カスに一度お灸を据えないと今後一緒に仕事は出来ん。


「協力してくれとは言わん。ただ黙って見届けてくれるとありがたい」


「それは別に構わないけど。――何だかちょっとモヤモヤするなぁ。今ワンユウの頭の中はセシリー先輩で一杯って事でしょ?」


「そういう気持ち悪い表現はやめてくれる!?」


「だってそうじゃん。さっきからセシリー、セシリー、セシリー……昨日はガブと車やロボでドライブデートしてたしさぁ」


「デートって、パトカー事故らせて車外に放り出されて死にそうになった事とか手錠で繋がれて<パトライバー>に連れ込まれて何やかんやあって投獄された事か? あれは果たしてデートという代物なのか? 俺は監禁されたと思っていたんだけど」


 GTR初日から悲惨な目に遭ったのを思い出す。だからこそ今日は監獄から出た後は彼女たちと距離を取ってバグ処理の仕事に集中しようと思っている。

 それをルーシーに言おうとしたところ、彼女がジト目でこっちを見ている事に気がついた。ああ、これはねている時の目だ。それなら気になっていた事を話してみるか。


「そう言えば、さっきシャロンが無理矢理谷間を作ろうとしていたたまれない空気になった時メスガキムーブかましたろ? あれで空気が変わったのを感じたよ。やっぱりルーシーは気配りが凄いな。そういうところはデビュー直後の六期生初コラボの時から変わってないな」


「へっ!? ちょっといきなり何言って――」


「六期生はルーシーが先輩たちとの架け橋になってぶいなろっ!!に溶け込んでいったからこういうコラボの時も安心して観ていられるよ」


「うぅ~、それ以上言わないでぇ」


「ごめんごめん、ちょっと偉そうだった。さっきのルーシーのやり取りが良かったから語りたくって……悪いクセが出たみたいだ」


 コラボ配信で推しが良いリアクションを取るとリスナーとしては嬉しくてつい語りたくなってしまう。

 普段はコメント打ちまくってリスナー同士で盛り上がるけど本人に直接言うのは恥ずかしがらせるだけかもしれないな。

 自重しなければと思っているとルーシーの様子が何やらおかしい。顔が真っ赤になって恥ずかしそうな表情で自身の髪を弄っている。


「ホントごめん」


「ううん、嬉しくなる事いっぱい言うから……これ以上言われたら直接会いたくなるの我慢出来なくなるじゃん。昨日はガブとゲームデートしたんだから今日はルーとゲームデートして欲しい。お仕事の時間に余裕がある時で良いから……ダメ?」


 ルーシーは潤んだ瞳で俺の顔を見上げている。その表情とその角度はアカン! 可愛いの破壊力が高すぎる!! 

 ダメではないけど配信でそんなことして良いのだろうか。ルーリスはそんなもの見せられて怒らない?



コメント

:おいおいおいおいおーい! オレ達の推しが可愛すぎるんだが?

:さっきはメスガキムーブ全開と乳揉みにコント、そして現在進行形のデレっぷり。たまりまへんなぁ

:GTR二日目早々にルーシーの可愛さが渋滞している。ありがとうありがとう

:総帥あんたやっぱスゲーよ。ルーシーに一切のメスガキムーブを許すこと無くデレさせるとは

:瞬〇ならぬ瞬デレだ。総帥は既に堕天使を落としているのに更に落とそうとしてるぞ

:我々一般の闇堕ちでは考えもつかない戦法だ。どこまで推しをデレッデレに落とせば満足するんだ!? いいぞ、もっとやれ!!

:ちょっとーーー! 今回はセシリーに復讐するだけの回って言ってたのにルーシーとのラブイベントも用意されていたんじゃないか! 

:そうだそうだ! そういうのは最初に言って貰わないと困るんだよ。裸待機が間に合わなかったでしょうが!! ふぅ……

:デートしろー!

:キスしろー!

:抱けー!

:ペッティ……いや、何でもないです



 どうやら大丈夫っぽい。デレるルーシー、盛り上がるルーリス。どうしようか悩んでいるとヤツが来た。


『何だか騒がしいデスネ。まさか配信でちちくりあってるんじゃないでショウネ?』


 セシリー! まさかそっちからやってくるとは好都合! こっちの準備は出来ている。復讐するは我にあり。

 ルーシーにアイコンタクトを取ると事情を察した彼女は距離を取った。状況は一対一、復讐時間の開幕だぜ。


「やあ、セシリー。ちゃんと水分摂ってるかい?」


『ここにはソフトドリンクしかないので、あまり飲んでいないデスネ。私はアバターとは違って食事や水分を摂取する必要は無いプリティーなマスコット枠デスカラ』


「そんなセシリーに朗報だ。ドリンクバーで酒が飲めるとしたらどうだい?」


『なん……ダト!?』


 予想通り食いついてきたよ。普段は用心深い奴だが酒が絡むと一気に思考能力が低下する。そこが突破口になる。


「酒好きのセシリーにこんな質問は愚問だろうけど、酒って色々種類があるじゃない? それらの原料ってどういうのがあるかね?」


『ふむ……ワインはぶどう、日本酒はお米、ビールは大麦といったところでショウカ。他にも色々ありますケド』


「ぶどう、米、麦……か。なあセシリー、ここのドリンクバーを見て何か気が付かないか?」


『ドリンクバーデスカ? どれもこれも甘い飲み物しか……ムムッ!?』


 興味なさげだったセシリーの目が大きく見開かれる。どうやら気がついたらしい。予想通りだ。


「グレープジュース、甘酒、麦茶。これらの原料もまたぶどう、米、大麦だ。――俺はこれらを使用することによってソフトドリンクからアルコールドリンクを再現する!!」


『そんな事が可能なのデスカ?』


「出来る出来ないじゃねぇ――やるんだよ!!」


 おもむろにドリンクバー用のグラスを手に取り次々にソフトドリンクを投入していく。楽しい科学クッキングの開始だ。


「グレープジュースと甘酒、麦茶、それにジンジャーエールを混ぜて隠し味を投入。これでなんちゃってアルコールドリンク様の爆誕だ。そそるぜぇ、これはーーーー!!」


『何でジンジャーエール入レタ!?』


「見た目がシャンパンに似てるから! さあ、騙されたと思っておあがりよ!!」


 半信半疑のセシリーがグラスを持ちながら俺の方を見る。不安そうな顔をしているので笑みを見せて安心させる。さあ飲みなさい。そしてこれまでの己の罪を悔い改めろ。


『分かりマシタ。それでは飲んでミマス。――ゴクッ、ゴクッ……こ、これは……! グレープと甘酒の甘み、麦茶のすっきりした味わい、それらを生姜の風味が優しく包み込み渾然一体となって……ネェェェェェェェェ!! マッズ! エグッ! 田んぼとぶどう畑と麦畑で大量の生姜を投げつけて戦争シテル! 私の口と喉が荒野になってイグゥ!!!』


「あれあれぇ、やっぱり調合一回目じゃ成功しないかー。実験はトライアンドエラーだもんなー。配合を変えてまたトライしてみるかー。あっ、いけね」


 ポケットから先程隠し味に使ったブツの容器が落ちてしまい拾って元に戻す。その一連の流れをセシリーが目撃していた。信じられないという表情でこちらを凝視している。


『まさか今のは生姜チューブ? しかも空になって……まさか、今の生姜を全部さっきのクソジュースに混入したんデスカ?』


「隠し味を投入したって言ったじゃん」


『隠れてネーヨ!! むしろ生姜があのゲロマズジュースの全てを支配してるんダヨ。ジンジャーじゃなくてデンジャーな味だったんダヨ!』


「生姜には殺菌作用があるらしいよ。良かったな、酒まみれの胃が殺菌されて」


『やはり酒を作るなんてのは嘘だったんデスネ。……だました……私を……だました……よくも私を……だましたなァァァァァァ!! よくも、よくも今まで……ずっと今まで……よくもよくもォ! よくもだましたァァァァァァァァァ!!』


「台詞がなげーよ」


 騙されたと知って怒り心頭のセシリー。その姿を見られて大満足の俺。二人の間には一触即発の空気が流れる。


『私を騙した罪を死をもってアガナエーーーーーー!!』


「お前みたいな人形が人とやるつもりか? チャ〇キーと同じく返り討ちにしてやるよ!!」


 こうして俺とチャッキ……じゃなかったセシリーは壮絶な戦いを監獄で繰り広げ散々殴り合った末に仲直りした。尺の都合上、そのあたりの詳細はカットになりました。

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