第126配信 GTR 2日目 ホロウのヤバい計画
「どうして……だってさっきは疲労困憊で動けなかったのに……」
「どうしても何もあの男性そんなに疲れてなかったんでしょうよ」
「それなら何故疲れたフリをしたんだろ? シャルに鞭で打たれるのは分かっていたハズなのに」
エルルとシャルルが顔を見合わせ同時に小首を傾げる。双子の以心伝心な動きに感動を覚えつつも俺の考えを話す。
「シャルルに鞭で打たれるのが目的だったんでしょ」
「「何で?」」
双子は男の行動の理由をまだ理解していない。その一方でホロウは気が付いたみたいで震えていた。
「ホロウは囚人たちを追い詰めて暴動を起こさせたかったみたいだけど多分起きないよ。セシリー、ここの囚人たちの性癖を大まかでいいから教えて」
『合点デス。GTRのNPCは全て私の管轄下ですからすぐに分かりマス。――はい、こんなん出マシタ。どいつもこいつもドM野郎ばっかりデス』
「お分かり頂けただろうか? ここの囚人たちは君たちに鞭で打たれ罵られるのを悦んでいるんだよ。よって暴動は起きません。彼らにとってここは天国みたいなもんよ」
断言するとホロウが愕然とした顔で膝を突いた。まるでこの世の終わりのような雰囲気を漂わせている。
「そんな……これじゃ私の計画が……怒りむき出しの囚人たちに集団で襲われメチャクチャにイヤンな事をされる壮大な計画がパーじゃないか!」
「「今なんつった!?」」
ホロウの独白を聞いてアンバー姉妹は驚いていた。やはりこのドMの真の目的を聞かされてはいなかったみたいだな。
「済まない、エルル、シャルル。私の本当の目的は囚人たちに輪〇される事だったんだ。結果的に暴動が起きればロボバトルも起こると思ったから……いや、理由はどうあれお前たちに嘘を吐いたのは変わらないな。済まなかった」
「そんな……ホロウ先輩、顔を上げてください。先輩の気持ち、シャルは良く分かります! シャルもエルお姉ちゃんが何人にも分身してシャルを頼ってきたら嬉しくて卒倒すると思うから……!」
「エルも別に気にしてないよ。囚人を罵るのは新鮮で楽しかったし。輪〇されなくて残念だったね、ホロウ先輩」
俺の眼前には囚人に輪〇されなくて残念がっているドMとそんなドMをそれぞれの性癖でもって慰めるエルフ双子姉妹が居た。もうダメだこいつら。早く刑期を終えてここから出て行きたい。
「とにもかくにも配信で輪〇言うの止めなさいよ。子供だって観てるんだよ!? もし家族でこの配信観てたらお茶の間凍るからね。計画が頓挫したのは残念だったけど潔く諦めた方がいい。どのみちヨウツベで流せる内容じゃないよ」
「……残念? そんな一言で終わらせるつもりか? これで私がGTRでやりたかった事は頓挫してしまった。もとはと言えば運営が私の案を却下したのが悪いんじゃないか! この分からず屋!!」
ホロウが珍しく感情的になって抗議してくる。GTR開催前に彼女が提案したイベント内容を思い出し大きくため息を吐いた。
「あんなもの本当に配信出来ると思ったの? 確か『ファイナル痴漢バス』だったっけか。夜遅くにナロンゼルスを走るバスの中には仕事で疲れた男たち。その中に痴漢逮捕を目的とした女性潜入捜査官としてバスに乗り込み男共に痴漢されまくる、という内容だったな」
「その通りだ!! GTRは自由度の高いゲームだし、ぶいなろっ!!サーバーでは人間模様を強くプッシュしていくと聞いていたから楽しみにしていたのに……それなのに私の案は却下されたんだ。――これがお前等のやり方かぁぁぁぁぁぁぁ!! 少しだけ興奮したじゃないか」
この会話を聞いたアンバー姉妹は無言でホロウから離れ俺の側へとやって来た。その光景を見てホロウはショックを受けていた。
「な……何故だ、エルル、シャルル! 何故そちら側に行く!? 私を見捨てるのか? 結構良い感じでクるな、この展開は……ふひひ」
「ホロウ先輩、助けてあげたいのは山々ですが、さすがに内容が内容なだけに……ごめんなさい!」
「今回ばかりはエルもシャルもフォロー出来ないよ。でも割と元気みたいだから安心だね」
「ホロウ、どうして君の提案が却下されたか分かるか? ――これ普通に考えて完全にアウトの内容なんだわ!! だって、おま、これ……完全にエロゲーだよ! それも泣きゲーとかのシナリオ重視のものじゃなく、徹底的にエロ重視のヤツ!! しかも、それが却下されたからこんな変態地下世界作って輪〇プレイ強行しようとか全然諦めてないじゃないか!!」
『この執念深さ……やはりドMは恐ろしいデスネ』
今回GTRでぶいなろっ!!の面々と直接関わってみて良く分かった。――この人達はマジでヤバい!! ガブもルーシーも凄くクセが強いけれど、先輩方も相当だ。
特にドMの三名は同じドMでも微妙にドM加減が違う。サリッサは罵倒なら何でも悦んで受け入れて気持ちよくなる雑食性のドM。
クロウはサリッサと比べて少々質にこだわるB級グルメなドM。そして現在目の前に居るホロウは集団プレイを好む変異種のドMだ。後輩になるほど配信時の危険性が増す。
取りあえずホロウは後輩二名から距離を置かれたシチュに満足したみたいだ。
どうやらこの地獄の監獄は男性囚人専用みたいで俺は女性囚人用の普通の監獄へと連れて行かれた。
女性囚人は奴隷扱いの男共とは異なりオレンジ色の作業着を着てトレーニングマシーンなどが置かれたジムみたいな場所で刑期が終わるまで過ごす。
他箱のGTRでは留置所にぶち込まれた囚人は三十分程度でシャバに解放されていたので俺もそれぐらいで監獄から出られるだろう。
「それにしてもここは地獄の監獄とは打って変わって随分平和だな。ドリンクバーも軽食も置いてあるし下手すりゃ地上よりも平和だぞ」
『ワンユウ様、由々しき事態デス』
「どうしたんだよ、セシリー。まさかバグでも出現したのか?」
『ここのドリンクバー、ソフトドリンクしか置いてありまセン。アルコールが無いとは手抜きにも程がアル! 店長を呼んでコイヤー!!』
「黙れ、クレーマー。ここはファミレスじゃないからね。監獄だからね。ジュース飲み放題がある時点で好待遇だろ。釈放されたら酒買ってやるから我慢しなさいよ」
オレンジ作業着姿のセシリーが騒ぎ立ててうるさかったので酒で釣って黙らせる。
これでこの酒カスAIが我慢出来るのはせいぜい三十分ぐらいだろう。釈放されたら最速で酒を買いに行くしかない。
暇なので時間潰しにトレーニングマシーンが置いてある部屋に行って運動する事にした。到着すると驚くべき光景が視界に入る。
ランニングマシンで走っている女性囚人たちのたわわがユッサユッサ揺れていた。
「これは……まさかこんな地下世界でこれ程の光景を拝めるとは……うん?」
山々が揺れているのに気を取られて気が付くのが遅くなったが、その双丘たちの主はキャバクラ怪盗チームとギャングチームの面々だった。
ギャングチームの猫とネクロマンサーは悲しいかな、揺れるものをお持ちで無かったので表情が暗い。他のメンバーのたわわを恨めしい表情で見ていた。