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第119配信 GTR 1日目 ドッキリパックリメカ

 俺はファイプロの一員としてGTRを陰から支えようと決心していた。

 その過程でもしかしたらガブにもガブリスにもこの女性アバターの正体が俺であると発覚するかもしれないと思っていた。

 いやー、それにしてもまさかGTR初日であっさりバレるとは思っていなかったよ。やっぱりツッコミ過ぎたかなぁ。

 ぶいなろっ!!メンバーのほとんどはボケ担当でツッコミ要員は少ない。そんな状況下でツッコミをし続ければ何れは……とは思っていた。

 悲しいかな、これがツッコミ役としての俺の運命だったのだろう。この身に染みついた習性が怖い。


 ――と、自分語りはこれくらいにして現在<パトライバー>三機はネバネバな蜘蛛の巣をぶっかけられて絶賛行動不能中。

 このままだと蜘蛛の身体にドラム缶が乗っかっているような面白外見をしている<パピヨンロボ>にボコボコにされる運命が待っている。


『ハァ……ハァ……何て粘度……身体が動かない。圧倒的なパワーに押さえつけられる屈服感……はふぅ』


『ネバネバにされて……こんな拘束プレイ……すっごいの』


 ガブリエール機のコックピットモニターには顔を赤らめて悦に浸っているサリッサとクロウが映っている。本来とても人様に見せられるような表情ではないが、ガッツリ配信に流れてしまっている。

 これでBANされないのだからもうヨウツベはちょっとやそっとでは動じない様子。逆にどういう状況だったらBANされるのか訊いてみたい。


「何だかこのネバネバに縛られていると変な気分になっちゃいますぅ。どうしよう身体が熱くなってきましたぁ」


『このメス共、発情していマス。心拍上昇、呼吸、脳波、貞操観念、乱れまくっていマス』


「メス言うなや」


 マジでこいつら早く何とかしないと淫乱配信になってしまう。しょうがない、出来れば中立を貫きたかったが、これ以上彼女たちの痴態を晒す訳にいかない。


「ガブ、雰囲気に呑まれて発情すな! この蜘蛛の巣は粘着性があるだけで変な成分含まれてないからね。ハイボルトスティックを使って急いで脱出しよう」


「ふぁっ? ハイボルトスティックですか? あれはロボットの関節に電気を流して動けなくする武器で……あ、そうか!」


 俺の意図を理解したガブリエールが機体を動かし始める。ネバネバ蜘蛛の巣で動きが緩慢だが、<パトライバー>は右手を少しずつ動かし腰部に装備しているハイボルトスティックを手に取った。

 スティック部分が伸びると電撃を帯び、蜘蛛の巣を焼き切り自由に動けるようになった。


「やりました! サリッサ先輩、クロウ先輩、今助けます」


 かくして蜘蛛の巣プレイを堪能していた二人は名残惜しそうな表情をしていたが気持ちを切り替えて戦いに復帰した。――さて、気になるのはパピヨンチームの動きだ。

 こちらを攻撃するチャンスはいくらでもあったのにそうしなかった。何か狙いがあるのか?


 <パトライバー>全機がハイボルトスティックを構えて<パピヨンロボ>との距離を詰めていく。すると再びメルア姫の声が聞こえてきた。


『三人共、とても見事なお姿でしたわ。わたくしがプレイしてきた一般向けギャルゲーの中でも上位に入るセクシーさでした。興奮しましたわ!』


「三人の痴態を見るのに夢中になって動けなかっただけかい!!」


 自分の同期と後輩の痴態を配信で晒して興奮するとか、やはりこの姫はぶっ飛んでいる。

 おまけに現在その脇を固めているセリーヌもネプーチュも脳内ピンク色レベルはぶいなろっ!!メンバーの中でもトップクラス。何が起きても不思議じゃない。


『蜘蛛の巣ネバネバプレイを突破した三人には、<パピヨンロボ>の必殺兵器ドッキリパックリメカを受けて貰っちゃうわよぉ。ネプちゃん、紹介よろしくぅ』


『はぁーい! 本日のドッキリパックリメカはリスナーのシロップさんからのアイディアでーす! シロップさんが考えた短編小説をネプ達が朗読しまーす。それではポチッとな』


 突如、<パピヨンロボ>が一番手前の両脚を大きく広げて地面に下半身の蜘蛛部分を下ろす。すると中央部分の装甲がパカッと開いて中からスロープが出てきた。

 

『え……っと、この光景は何て言えば良いのかしら……』


『脚を大きく開いて横たわるとは……これではまるで……』


 クロウとサリッサが言葉を濁す。ガブも何て言ったら良いか迷っている様子で俺の様子を窺っている。俺は首を横に振って「言わん方がいい」と伝えた。

 コメント欄ではリスナーの困惑が見て取れる。この状況をストレートにコメントにしていいものか皆迷っていた。

 そんな周囲の戸惑いを嘲笑うように蜘蛛の怪物の中から何かが姿を現わしスロープの上を通って外に出てきた。


「あ……生まれた。ふぁっ! 言っちゃった、どうしよう!!」


「多分、皆も同じ事思ってるから気にしないで良いと思うよ」


 思わずガブが口を滑らしてしまう。俺も同じ事を思ったし皆もそうだと思う。この光景はもはやロボットによる出産だ。


 キャバクラパピヨン組から提出された<パピヨンロボ>のドッキリパックリメカについてはリスナーにアイディアを公募し、その中から厳選したものを配信で使用するという内容だった。

 それ故にこれから何が起こるのか俺も知らない。ただ確実なのはセンシティブ三人娘が採用したネタなので間違いなくセンシティブな内容だ。絶対そうだ。だってキャバクラからずっとエロい事しかしてないからね、あの人たち。

 

 しかもだよ! あのシロップこと現役女子高生メープルが考えたネタを披露するってんだから危険極まりないよ。危険物に危険物を組み合わせたら超危険なブツが生み出されるに決まってるでしょうよ!!


 <パピヨンロボ>の中から次々と出てきたのはスピーカーに脚が生えたようなヘンテコな小型ロボットの集団だった。


『ドッキリ、パックリ、ドッキリ、パックリ、ドッキリ、パックリ――』


 スピーカーロボの群れはドッキリパックリ言いながら移動し<パトライバー>三機の周囲を囲むと動きを止めた。

 ドッキリはともかくパックリという単語を繰り返し言われるとイヤらしいことを考えてしまうのは俺だけだろうか?


「……何度もパックリ言われるとエッチな言葉に聞こえてきますね」


 ガブが頬を赤く染めながら言ってきた。俺が特別スケベだった訳ではないのでちょっとホッとする。


『スピーカーロボも配置についたのでこれより朗読劇『幼馴染みステップアップ』を始めたいと思いまっす! 登場人物は幼馴染みの二人で男の子のナツキ役はセリーヌパイセン、女の子のシオン役はメルアパイセン、そしてナレーションはネプが担当しまぁす』


 ネプーチュの音声が周囲に配置されたスピーカーに乗って聞こえてくる。この臨場感はサラウンドスピーカーか、助かる!

 俺たちはこれから何が始まるのかと興味津々に耳を澄ませてその時を待った。

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