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第116配信 GTR 1日目 エロと酒のマリアージュ

「ドンペリ美味しいですわ~!」


「はぁん、美味しいお酒で気持ちよく酔えるなんて幸せぇ。オタ子さんに感謝しないとねぇ」


「良い感じで酔い直したところでぇ、ネプがポールダンスやりまぁ~す!」


「うちもやる~!」


 キャバクラの催しものとして設置されているポールダンスのステージ。

 そこにネプーチュとアマテラスが立つと客たちが注目しキャバクラ『パピヨン』の熱気が高まっていった。

 二人はステージのポールに手を掛けるとその周囲をクルクルと回り出し、やがて身体をポールに密着させたり脚を絡ませたりして息の合ったダンスを披露し始めた。


 最初からキャバクラのキャストとして参加していたネプーチュのポールダンスは見事の一言に尽きる。事前に相当練習していたのだろう。

 一方のアマテラスはやや動きがぎこちない感じはあるが短時間でここまで仕上げたのは驚きだ。確かにキャバ嬢の適正値が高い。何かもう巫女さんじゃなくてキャバ嬢が天職でいいんじゃない?

 本職巫女さんで夜はキャバ嬢……妙にエロいフレーズだ。いっそ巫女服でキャバ嬢をやって貰いたい。そんなキャバクラにちょっと行ってみたい。


 二人のポールダンスは益々熱を帯びポール越しに両サイドから身体を密着させる。 

 各々露出度の高い衣装なので密着した際に胸が押しつけられていびつに形を変えているのが良く分かる。その体勢のまま大きく開脚し上下に身体を動かし始める。

 片やロングスカートのスリットから露出した太腿、片や網タイツで覆われた太腿……脚フェチ太腿フェチ尻フェチには堪らないアングルだ。控えめに言って扇情的過ぎる。


「これは……さすがにBANされるか!?」


「え~? これぐらい余裕よ余裕。ワタシ達が数年かけて少しずつヨウツベ君に性教育してきたからねぇ。んふふふふ、最初はちょっとエッチな声出しちゃうだけでBANするような初心うぶだったけど本当にセンシティブに耐性出来たわよねぇ~。良い時代になったわぁ」


「セリーヌの言う通りですわ。この程度はまだ序の口。むしろもっとセンシティブが欲しいと涎を垂らして懇願するのが今のヨウツベですわ」


 セリーヌとメルア姫が上機嫌で笑っている。そう言えばそんな話を聞いた事があった。こんなエッチなお姉さん達にじっくり性教育されるとかヨウツベ君の性癖は歪みまくっているに違いない。


「はい! こんなん出ましたぁ」


 ネプーチュがポールに掴まりアクロバティックに回り始める。アマテラスも交代で見事なポールダンスを披露していった。


「いつもより多く回っとるんじゃよ~」


 店内は酒とポールダンスの熱気で賑わっている。キャストも客も良い感じに酔いが回っていた。

 飲酒をしていない俺も場の雰囲気でテンションが上がりステージで活躍する二人に拍手を送る。


『ゴッ、ゴッ、ゴッ、ゴクッ……はふぅ、これがドンペリ……超美味いデスネ』


 すぐ近くから聞き覚えのある声が聞こえてくる。視線を下に向けると手の平サイズのデフォルメ人形が勢いよく酒をあおっていた。


「……そこで何をしている?」


『何ってキャバクラでエロい姉ちゃん達をさかなに酒を楽しんでいるんデスヨ。いやー、他人の金で飲む酒は格別デスネ。美味い酒がより美味しく感じマス。あ、ポッキーゲームでもシマス?』


「しないよ! 仮にしたとして人形とポッキーゲームなんてやったら正気を疑われるよ。周囲から絶対冷たい目で見られる!」


『そうでしょうネ。私もそんな人を見たらちょっと引きマス。そして見なかった事にスル』


「そう思うなら最初から提案すな! そんな事より早く俺んとこに戻れ。見つかったらまずい事になる」


『心配ご無用デス。ライバーとNPC達は酔っ払っているので私を見ても見間違いだと思うでショウ。加えて私の姿は配信に映らないようにしているので余程目立たない限りはリスナーに存在を知られる事はありまセン。何処かのバ美肉おじさんが独り言を言っている痛い姿が映る可能性はありマスガ』


「そういう大事な話は事前に言っておいて欲しいんだけどな、セシリーさんよ」


 マイペースにつまみを食べ酒を美味しそうに飲むセシリー。周囲は酔っ払いだらけなのでセシリーの存在に気が付く者はいない。

 俺はジンジャーエールの入ったグラスを手に取るとセシリーのグラスに軽く当てて飲み始める。彼女はちょっと驚いた顔をしていた。


『これは意外デスネ。ワンユウ様が私とみ交わすなんてどういう風の吹き回しデスカ? 私を酔わせてナニするツモリ!?』


「お前はいつも勝手に酔っ払ってるでしょうが。いやさ、そう言えばこれまで何回も一緒にVRゲームにダイブしたのに一緒に飲んだ事が無かったなって思ってさ。こんなに楽しい酒の席だ。折角だし一緒に飲もうと思ったんだ。迷惑か?」


『いえ、こうして誰かと一緒にお酒を飲むのは初めてなので不思議な感じだと思っただけデス。でもまあ、悪くはないデスネ……フフ』


「もっとも俺はジンジャーエールだけどな、あはは」


 キャバクラはエロと酒にまみれてメチャクチャだ。気が付けばGTR一日目終了まで一時間を切っていた。俺とセシリーはこれから十日間のGTRの成功を祈って飲み進める。

 初日はこのまま平和に終わるかなと思っていた矢先、やはり最後まで気を抜けないのがぶいなろっ!!クオリティーだった。


 キャバクラの扉が突然開いてミニスカポリスのサリッサ、クロウ、ガブリエールが入ってきた。警察の乱入でキャバクラ内にどよめきが起こる。

 警察組リーダーのサリッサがメルア姫と対峙した。何だか物々しい雰囲気だが、これは一体全体どうした事だろう? 

 それはそれとして、この状況はよろしくない。俺は自転車窃盗犯としてガブに捕まったのにどさくさに紛れて逃げた。それ故に彼女に見つかるとややこしい事になりかねない。


「いきなり押しかけてくるなんてどういうつもりですの? ここはキャバクラ、皆がお酒とエロトークを嗜むお店ですのよ。いくら警察と言えど、この楽しい雰囲気を壊すなんて感心致しませんわね」


「それはすまなかったなメルア。だが我々も用もなくここまで来た訳ではない。――今から一時間前に怪盗パピヨンと名乗る三人組が、ある宝石を盗みに行くというメッセージカードが宝石店に残されていた」


「まあ、そうなんですの? それは怖い話ですわねぇ」


「そうだな、怖い話だ。そう言えばこの店の名前もパピヨンだったな」


「凄い偶然ですわね。まさかそれだけの理由でここまで来たんですの?」


「その通りだ。――本来なら怪盗として宝石店に盗みに来たお前たちとやり合う予定だったが、待てど暮らせどやって来ないからこちらから出向いたんだ。……何をのんびりやってんの!? 初日終了のメンテナンス開始まで残り一時間きっちゃったんだよ。尺の都合上、わたし達が来るしかなかったんだ。そうして来てみればキャバクラはもの凄く楽しそうだし、ずるいぞ!!」


 とても切実な内容だった。警察組は怪盗パピヨンが早く来ないかなって現場で待っていたんだな。

 メルア姫は何かを思いだしたようでばつが悪そうな顔になりサリッサから視線を逸らした。あー、これは犯行予告を出したの忘れていたパターンですわ。

 話し合いで現場は混乱しているようだし、ここは会計を済ませアマテラスを連れて食堂に戻るとするか。


「お会計をお願いします」


「確認致します。――お支払いは二百万円になります」


「二百万ですね。えーと、二百……二百……に、二百万円!? 嘘だろーーーーー!?」


 想定外の高額に驚き目をく。だって基本的にソフトドリンクを飲んでおつまみ食べただけだぞ。気になるのはドンペリだけど、それでもさすがに二百万円はしないだろ。


「この金額はお連れ様の分も含んでおります」


「お連れ様……?」


 振り返るとバハーム、フェネル、ベルフェの三人組が俺と視線を合わせないようにして立っていた。いつの間にかフェネルは三種の神器を脱いでドレス姿になっている。


「君たち、まさかとは思うが代金を私に押しつけたのかな? ……人が話をしてる時は視線を逸らすんじゃあない!! フェネルそのドレスまさか購入してないよね!?」


「「「オタ子さん、ご馳走さまでした。グッナイ!」」」


「あ、ちょ、待てっ!!」


「お会計をお願いします」


「だぁっ、チクショウ!!」


 三人はバニーアマテラスを連れて店の裏手から出て行った。泣く泣く会計を済ませ連中の後を追おうとすると手元でカシャンと金属音がした。

 

「ふふふ、やっと会えましたね自転車泥棒さん」


「ひぃっ!」


 いつの間にかすぐ近くにガブリエールが居た。彼女は満面の笑みを浮かべながら俺の手首に手錠をかけ、手錠の片側を自身の手首にかけた。

 ――ガブリエール・ソレイユからは逃げられない。

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