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第114配信 GTR 1日目 キャバクラへGO

 ラァァァメェェェンが運ばれてくるとベルフェはニコニコしながら食べ始めた。

 醤油ベースのスープ、具はチャーシュー二枚、メンマ、なると、ほうれん草、海苔とオーソドックスな構成。

 そんなラァァァメェェェンがどれほど美味しいのかはベルフェの顔を見ていれば分かる。ついさっきあのガキンチョはリンゴを八個も食べたばかり。お腹はかなり満たされたハズなのにその事実を感じさせない気持ちの良い食いっぷり。


「ずずずずずず~! っぷはぁ、美味しかったぁ。ご馳走様でした」


 ベルフェがスープを飲み干す姿を見て俺は誓った。次ここに食べに来た時はあれを食べよう。それかもうちょっと贅沢して亀甲縛りチャーシューラァァァメェェェンにするのも良いな。

 

 食事が終わり三人組はお腹が満たされてまったりしている。この隙に会計を済ませて店から出ようとすると店内の黒電話が鳴った。

 ルイーナが電話に出ると受話器の向こうから出前に出ていたアマテラスの泣き声が聞こえてきた。


『ルイーナ先輩助けてーーーーーー!! うち……うち……このままじゃとお嫁に行けん身体にされてしまうーーーーーーー!!』


「アマテラスさん、大丈夫ですの!? 確か出前でキャバクラに行っていましたわよね?」


『キャバクラは罠じゃったー! 出前渡したら捕まってバニー――』


 そこでアマテラスからの電話は切れてしまった。この短いやり取りの中だけでも気になる情報が盛りだくさんだった。お嫁に行けない身体、バニー……センシティブ確定。

 ルイーナとフェンは店があるのでここから動けない。彼女たちがどうするべきか悩んでいるとバハーム一行が助け船を出した。


「お困りのようだね。それなら僕たちがあまちゃんを助けに行こうか?」


「それはありがたいけど良いのかい?」


「もちろんだとも。でもねフェン、同期の君なら既に察していると思うけど当然タダではない。バイト代を請求させて貰う。――どうだい?」


「こちらとしては願ったり叶ったりだ。バイト代は弾ませて貰うよ。それとこの店の食事を今後無料で提供するサービスも付けよう」


 フェンの申し出に喜ぶ学生三人組。これはもうサービスの方が本命みたいなものだ。ガム入りの食玩とかキャラシール入りウエハースチョコ的な。


「交渉成立だ。早速キャバクラに行こう」


「ブフーーーーー! フシューーーーー!」


「そういう訳だからお姉さん、ベル様たちをキャバクラまで連れてってよ。駐車場に置いてあった軽自動車お姉さんのでしょ?」


 新世界の神もどきバハーム、悪魔で子供探偵ベルフェが俺の腕と足を掴んで離さない。

 三種の神器を装着したフェネルは見当違いの方向に向かって一人でフゴフゴ言っている。


「ちょ、離して! 私は関係ないでしょう?」


「そんな事を言って良いのかな? ベルフェへの幼児虐待の罪で警察に突き出してもいいんだよ?」


「フォーーーーーー! フ……ごふっ、ごほっ、かふっ!」


「ついでに婦女緊縛の罪も追加しようそうしよう」


「それはあんたらが趣味でやってる事でしょうが! 私は冤罪です!!」


「あーあー、りんご八個も食べたから胃もたれしちゃったなー! 明日の給食は焼きそば、揚げパン、中華風春雨サラダにエビフライ、デザートはプリンなんていう神メニューだったのに学校休まなきゃかなー? あーあ、残念だなー!」


 ベルフェがもの凄くわざとらしく言い放つ。りんご八個食べた後にラーメン完食したよね? それで胃もたれしたのなら自業自得だろうが。

 でも待てよ? 冷静に考えればキャバクラにはまだ行っていなかったので丁度良い機会かも知れない。アマテラスの身に何が起こっているのか確かめるついでに視察をするか。


「……分かりました。キャバクラに連れて行ってあげるから警察は勘弁して」


「やったー! 言ってみるもんだね。それじゃ行こう! えっと……お姉さんのこと何て呼べば良いかな?」


「今まで通りお姉さんでいいよ」


 すると三人は何やら考え込み数秒後――。


「フォーフォフォフォ、フーフシューーーー(オウギのオと――)」


「マツダからタを取って――」


「コゴロウのコを組み合わせてオタ子で良いんじゃない? よろしくね、オタ子お姉ちゃん!」


「何でコードギ〇スとデ〇ノートとコ〇ンに出てくる、ちょっと頭が残念系のキャラから一文字ずつ取ったんだよ! そういう部分は頭の回転早いね君たち」


「バーロー! 褒めるなよ、照れるだろ」


「褒めてないっつーの。はぁ……それじゃ車に乗ってキャバクラに行こうか」


 旅は道連れ世は情け、道中三人はアニソンを歌い俺は車を運転して皆でドライブを楽しみキャバクラに到着した。

 看板にはネオンサインで『キャバクラ パピヨン』と表示されている。


「もうちょっとドライブを楽しみたかったけど着いてしまったね。ここがキャバクラか……ふふ、僕とした事が緊張で足が震えてしまうとはね」


「新世界の神なんだから頑張って! ――そう言えば小学生はキャバクラに入ってもコンプライアンス的に問題ないの? 車で待っていた方が良いんじゃない?」


「えぇ!? いや、行くよベル様行くからね! キャバクラでシャンパンタワーやったりドンペリ注文したり豪遊するのが夢だったんだ。だから絶対行くー!!」


「小学生とは思えない贅沢な夢だな。ヤ〇ザキ春のパンまつりのシールを集めて皿を貰うくらいが丁度良いでしょ」


「それのどこが小学生っぽい夢なんだよ! どっちかというとそれはお母さんが喜ぶヤツ!」


「フーーーーーー! フーーーーーーーーーー!」


 キャバクラ初心者四名でドキドキしながらキャバクラ『パピヨン』の扉を開ける。薄暗い通路を進んでいくとNPCのキャストが迎えてくれた。

 大勢の綺麗どころの女性が揃っており、誰もが華やかなドレス姿で感嘆の息を漏らしてしまう。キャバクラは桃源郷らしい。


 俺たち四名はそれぞれ個別の席に案内され接客を受け始める。アマテラスを助けに来たのにあっさり分断されてしまった。もしかしてこれ詰んだ?

 我に返って三人組の様子を見るとあいつらはアマテラスの事を忘れてキャバ嬢と楽しく戯れていた。


「バハームさん、あたしフルーツ盛りが食べたいな~」


「それじゃ頼んじゃいますか」


「嬉しい。フルーツ盛りお願いしまーす!」


 バハーム、あいつはもうダメだ。完全にキャバクラを堪能し始めている。


「フシューーーーー……フォーーーーーーーーー」


「ええっと、何て言ってるのかしら?」


 客が拘束衣を着て目隠しされてボールギャグしてたらそりゃ戸惑うわな。はい次、小学生悪魔探偵は――。


「キャーーー! かわいーいー! 小学生がこんな夜のお店に来ちゃうなんてイケないんだー」


「えっへへ、ベル様はあくまで探偵なんで問題ないんだよー。ドンペリ注文していい?」


「こーら、お子様はお酒なんて飲んじゃダメだぞ。お腹に優しいカルピスにしなちゃい」


「はーい、カルピスにしまーちゅ! あはは、キャバクラたーのちーい」


 小学生は赤ちゃん返りしてしまった。あいつももうダメだ。三人ともキャバクラの術中にハマってアマテラスの事を完全に忘れている。俺がしっかりせねば。


「お待たせしましたぁ」


 俺の所にキャバ嬢が三名やって来た。残念だが俺には陽菜とルナという美人でナイスバディの彼女がいる。二人のお陰で女性に対する免疫が出来た。

 どんなキャバ嬢が接客してくれたとしても雰囲気に呑まれない自信が俺にはある! ばっちこーい!!


「今晩わぁ、当店のナンバースリーのネプーチュでぇーす。よろしくお願いしまぁす」


「失礼します。同じくナンバーツーのセリーヌです。ふふ、可愛いお客様ね。そんなに緊張しなくても大丈夫ですよぅ」


「二人共いきなり距離を詰めすぎですわよぉ。わたくしは当店ナンバーワンのメルアですわぁ。今宵たーっぷりサービスさせていただきますぅ」


 何であの三馬鹿ではなく俺の所にキャバクラのトップスリーが勢揃いするんだよ! これは非常にマズい事になったぞ。

 この布陣を前に平静を保てる自信なんてねーよ。俺はアマテラスと三馬鹿を連れて無事にこのキャバクラから脱出できるのだろうか? 

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