表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

114/169

第113配信 GTR 1日目 ベル虐

 ボールギャグちくわ、目隠し、拘束衣という三種の神器を装着したフェネルはある意味無敵の存在に至っていた。何人も寄せ付けない雰囲気をビンビン感じる。

 そんなフェネルをおかずにしてバハムンは勢いよくトロットロ天津ハァァァァンを食べ進めていく。彼女の食事の様子を見ていたら満腹感が薄れた。プリン食べよ。


「もぐもぐんくっ……こくん。 ふぅ~、実にエクスタシーな味だったよ。さてと、次はいよいよデザートだね。待たせたね、僕の愛しのパイパイプ……」


 残っていたパイパイプリンを食べ終えるとバハームが絶望した表情で俺を……いや、正確には今しがた平らげたパイパイプリンが居た皿を見つめていた。


「あ……あ……ああ……ぼ……ぼ……僕のだぞっっっ!!!」


「違いますぅ! これは、お……私のプリンだって言ったでしょうが! 食べたきゃ自分で注文すればいいだろ。IカップでもJカップでもKカップでも、どれでも好きなものを頼めば良いじゃない」


「Kカップはありませんわよ」


 他の客がいなくなり俺たちのやり取りを見ていた看板娘ルイーナが適確なツッコミを入れてくる。

 一方で目的のブツを手に入れられなかったバハームは力なくうなだれ席に戻った。

 目隠しをされていて状況が飲み込めないフェネルはちくわの空洞から荒い呼吸音を出しながら右往左往している。

 このタイミングで誰か店にやってきたら何も見なかった事にして店の扉をそっと閉めて帰るに違いない。食事は終わった事だし俺もそろそろここからお暇しよう。


「あっれれー、お姉ちゃん何処に行くの~?」


 小学生男子のようなそれでいて何処か他人を小馬鹿にするような生意気な声が俺を引き留める。誰かと思い振り返るとすぐ側にベルフェが立っていた。

 眼鏡の奥では子供とは思えない何もかも見透かす様な目が俺を見つめていた。


「食事が終わったからお姉ちゃんは帰るんだよ。じゃあね、バイバイ」


「ふ~ん、お姉ちゃん……ねぇ。本当にお姉ちゃんなのかなぁ?」


「……君は何を言ってるのかな?」


「お姉さんからはメスみを感じないんだよね。どっちかって言うとオスっぽい。それにさっきフェネル姉ちゃんの悪魔の目でも名前が特定出来なかった。あれってNPCには有効だけどプレイヤーには効かないんだよね。だからぶいなろっ!!メンバー相手だと無効になっちゃう。でもお姉さんはぶいなろっ!!のライバーじゃない。それらの事実を繋ぎ合わせていけばお姉さんが何者なのか見えてくる」


「……君のような勘のいいガキンチョは嫌いだよ」


「ガキンチョじゃない。ベルフェ・ナハト、あくまで探偵さ。とにかくお姉さんとはまだ話がしたいんだよね。ベル様はこれからご飯だから付き合ってよ」


 このガキンチョ探偵は俺がNPCでは無いと気が付いているみたいだ。推理通り悪魔の目が効かなかったのが何よりの証拠。取りあえずは向こうの出方を見るしかない。


「ルイーナお姉ちゃん、りんごをください」


「りんごですわね、すぐに持って参りますわ~」


 注文を受けたルイーナは厨房に行くとすぐに戻ってきた。皿の上にはりんごが一個あるのみだ。


「まさかあれも裏メニュー?」


「その通りだよ。知ってるかい? 悪魔はりんごしか食べない」


 ちょっと回復したバハームがドヤ顔で説明する。様子を見守っているとベルフェはりんごをそのまま丸かじりで食べ始めた。

 シャクシャクと小気味よい咀嚼音が聞こえてくる。間もなくベルフェはりんごを食べ終え、芯を皿の上に置いて不敵な笑みを見せる。


「ふふん、どうだいお姉さん。綺麗に食べられただろう?」


「口から血は出なかった?」


「歯周病ちゃうわ!」


 りんごを丸かじりで食べ終えて何故偉そうにしているのか分からないが、これ一個ではさすがに足りないだろう。それなら――。


「ルイーナさん、りんご一個お願いします」


「かしこまりましたわ~」


 間もなくりんごが皿に載せられて提供される。それをベルフェに手渡すと呆けた顔で俺を見上げる。


「これは何のつもりだい?」


「食べ盛りなのに一個じゃ足りないだろ? もっと食べなよ」


 これを挑戦と受け取ったのか、ベルフェは再びりんごに食らいつき先程よりもスピーディーに平らげた。


「ふふん、これでどう――」


「すみません、りんご二個ください」


「なにーーーーー!?」


 明らかに戸惑っているベルフェにりんごが二個載せられた皿を渡すと俺を睨み付けながら食べる。さっきよりも少しペースは落ちたが難なく食べ終える。


「ふぅ、ふぅ……ご馳走様でし――」


「今度はりんご四個お願いします」


「はぁっ!? ちょ……」


 今度はりんご四つをベルフェに渡す。彼女の目は泳いでいた。何か言いたげな様子だったが先手を打つ。


「どうしたの? もう食べられないの? 悪魔で探偵なのに? へぇー、ふぅーん」


「くっ、バーロー! 食べられるに決まってるだろ!? 見てろよ、吠え面かかせてやる!」


 ベルフェは両手にりんごを持ってわんぱく食いする。最初に比べると明らかにペースダウンしているが何とか食べきった。


「ふぅ、ふぅ、うぷっ、ど、どうだ……食べきったぞ、バーローーーーーー!!」


「あ、すんまっせん! りんご八個お願いしまっす」


「ちょちょちょ、ちょっと待ってちょっと待ってー! 何か注文の仕方おかしくない? 何で前回の倍量を頼むの? さすがにもう食べきれないって!」


「だって君りんごしか食べられないんでしょ? いっぱい食べないと大きくなれないゾ」


「ゾじゃないんだよ、ゾじゃ! 変な部分で可愛い子ぶらないで。もうりんごは十分だよ。ベル様も本当は普通の料理が食べたいんだよぅ!!」


「悪魔はりんごしか食べないって設定はどうした?」


「そんなんもう知らないよー! 温かい料理が食べたいよぅ。そもそもりんごなら青果売り場で買えばいいじゃん。どうしてわざわざ食堂でりんご丸かじりするんだよ。いい加減普通の料理が食べたいんだよーーーーーーーー!!」


「ベルフェ落ち着くんだ。取りあえずおっぱい揉む?」


「フゥーーーーー! ブフゥーーーーーー! ブフェ、ブフェフェフェ?」


「おっぱいは揉むけど、りんご設定はもうごめんだよ! これからは好きなもの食べる! ラァァァメェェェンお願いしやぁぁぁぁぁぁす!!」


「ラァァァメェェェンですわね、少々お待ちくださいな」


 悪魔探偵はキャラ設定を自ら放棄して半泣きになりながらラーメンを注文した。

 キレたベルフェをあやすバハームとフェネルは方やおっぱいを揉まれ、方や何言ってんのか分からないので非常にカオスな現場と化していた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
無法痴態
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ