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第102配信 マネージャー香澄の萌え地獄 夏コミ編③

 結局、陽菜とルナは相良さんの姪――相良メープルに根負けしてコスプレする事になった。

 しかもそのコスプレがガブリエールとルーシーという事で何という偶然かVTuberの中の人が自分のアバターのコスプレをする形となってしまった。


 ぶいなろっ!!メンバーのスリーサイズは中の人のスリーサイズを参考にしているというのは割と有名な話で、メープル作のガブリエールとルーシーのコスプレ衣装はその情報を基に作成されたらしく、アバターの中の人である二人にシンデレラフィットするのは当然の話であった。

 コスプレ衣装の着替えとメイクの為に三人はメイク室に消え、俺はメープルが居なくなった穴を埋めるために乱れ牡丹サークルの売り子の手伝いをしていた。


「乱れ牡丹先生の新作、ぶいなろっ!!のガブリエール・ソレイユとルーシー・ニュイの同人誌で~す! 可憐な天使と堕天使がメチャクチャエロい目……いや、凄まじくエロい目に遭ってま~す! これはまさに読むバイ〇グラ!! 乱れ牡丹先生の歴代作品の中でもトップクラスのエロティシズムがぶち込まれた一品で~す! 是非お手にとって見てください。サンプルだけでご飯三杯はイケま~す!!」


「ガブリエール本とルーシー本をください」


「毎度ありがとうございます。じっくり読むのは自宅に帰ってからの方がいいですよぉー。ナニとは言いませんがおさまらなくなるので!」


 魂を込めて売り子をしているとシンパシーを感じた同類たちが集まり同人誌を購入し始める。どいつもこいつもギラついた良い目をしている。


「よーし! この調子なら完売は間違い無し。良い感じですね、乱れ牡丹先生!」


「犬飼さん、あなたこれまでに同人誌の売り子したことあるんですか? 妙に馴染んでますね……」


「いいえ! 今回が初めてです。同人誌即売会……こうしてサークル参加側に立ってみると一般参加側とはまた違う楽しさがありますね」


「犬飼さん、コミケ適正値が高すぎなのでは?」


 相良さんこと乱れ牡丹先生は次々に訪れる購入者にサインを書いて馬車馬のように働いている。忙しそうだが、自分が頑張って描いた作品が購入されていくのは嬉しいみたいでずっとニコニコしている。


 ガブリエール本とルーシー本を売りさばいていると何やら周囲がザワザワしているのに気が付いた。

 何かが来る。この人混みという大海原の向こうから強大な何かがこっちに向かってやってくる。

 海原がモーセの十戒の如く左右に割れて中心を誰かが歩いてくる。まさか現代に転生したモーセが現れたのか!? コミケならそれぐらい起きても不思議じゃあない!


「乱れ牡丹先生、ただいま戻りましたぁ。どうですか、お二人のコスプレの出来映えは!? エッチくて凄いでしょう! あたしなんかメイク中に鼻血が吹き出して貧血気味です」


 戻ってきたメープルはフラフラだったがやりきった表情をしている。そこに乱れ牡丹先生が駆け寄り姪っ子を抱きしめる。


「ちょっと、大丈夫!? この中にお医者様はいらっしゃいませんかー?」


「はい、医者の犬飼です。血液が足りないようですね。――あなたの血液型は?」


「メープルシロップ型ですぅ……」


「そんなK点超え高血糖の血液型聞いた事ないよ!」


 ダブル相良とのしょうもないやり取りを終え、コスプレをしている陽菜と月の方に視線を向けると時が止まった。

 

「ど、どうですか優さん?」


「こんな事を言うのは変かもだけど、めっちゃハズいわ」


 頬を赤く染めて目の前に立っているのは純白のワンピースに身を包んだ天使と地雷系衣装を着た堕天使。二人共豊かな双丘が強調されていてセクシーが限界突破している。

 配信で何度も見た姿だが、現実の世界に降り立った事でその存在感は別次元に高まっていた。これが……コスプレの力か。


「メープルが鼻血で貧血になるのも頷ける。何かもうね……凄いの一言に尽きる。ガブリエールとルーシーが画面を突き破って出てきたみたいだ」


「へへへ、そうですか? 優さんがそう言ってくれるのなら嬉しいです」


「鼻の下伸びてるわよ。本当にもうクソザコなんだからぁ」


 どうやら二人共満更ではないらしい。実際の所、VTuberとしてアバターの格好になってみて嬉しいみたいだ。

 周囲の視線が陽菜と月に集中している。二人共元々美人な上に有名VTuberのコスプレをする事で華やかさが際立っている。まさかこれ程素晴らしい光景になるとは予想していなかった。


 コスプレした陽菜と月は売り子として自身のアバターが陵辱される同人誌を手渡し始めた。なんとも言えない状況だが、そんな細かい事がどうでも良くなってしまうぐらい二人の存在感は圧巻だ。


「すみません、配信終わりの台詞をお願いしてもいいですか?」


「いいですよ。おつがぶ~! お買い上げありがとうございましたぁ~」


「ありがとうございます。新作が出たらまた買いにきます!」


 天使の売り子の客層はまともな感じだ。一方の堕天使の客層は……。


「すんまっせん! 罵ってください」


「しょうがないわね~、ザコにはこれをあげるわ! ざぁこ、ざぁこ、ざぁこ、ざぁ~こぉ!」


「あざぁっす! オレはどうしようもないザコでーーーーーーす!!」


 明らかにドMと思しき連中が罵られ待ちで列が出来ている。ルーシーはこういう仕事で食っていけそうな気がする。


 二人のサービスも相まって同人誌の購入者は皆幸せそうな顔をして帰って行った。それにしても改めて陽菜と月を凄いと思った。

 二人共、地声と配信時の中間あたりの声色を使って本物に近すぎず遠すぎないあたりを攻めている。実に絶妙な仕事っぷりだ。


 こうして乱れ牡丹先生の同人誌は陽菜と月が合流してから間もなく完売してしまった。まさに瞬殺、訪れた一般参加者は色んな意味で果てた。

 この結果に一番驚いていたのは他ならぬ乱れ牡丹先生だ。彼女の同人誌は人気でコミケではいつも完売してしまうがこんなに早く売り切れになった事はないそうで陽菜と月のコスプレの威力に驚嘆していた。


「陽菜さん、月さん、ついでに犬飼さん、一般参加側だったのに手伝って頂きありがとうございました。あなた方が協力して頂いたお陰で同人誌は完売です。皆もありがとう」


「香澄さんにはいつもお世話になっていますから、これぐらいお安いご用です」


「そうね。わたしも香澄さんには色々お世話になっているから、これで少しでも恩返しが出来たのなら本望だわ」


「……俺の扱いはそんな感じになると思ってたよ」

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