第二章 霧とセーシャ
もう、どんどんセーシャの人生は泥沼行きです
どうか作者とともに
かわいそうな少年を見守ってやってください
俺が体の自由を取り戻したのは、死体の山が積み重なり、その頂点で霧が高笑いをした直後だった
「俺に何をした」俺は自分が冷静でいられることに驚いていた。どうして自分がこいつを殺したい衝動を抑えられるのか…無論、自分を殺すことになるからなんだろうが…
――何をしただと?人殺しに決まっているだろう――
当たり前のことを言っているようにいう霧を消し去る方法があるならば、俺はそれが死神などの類に魂を売ることになったとしても喜んでしただろう
「お前はいったい何者なんだ―――っ!」
――いまさらそんなことを聞くのか?お前は私であり、私はお前であると言っただろう。それで納得していたではないか――
「そんな言葉で納得する馬鹿がどこにいるというのだ!ふざけるな。真面目に質問に答えろといっているのだ!」
俺は心なしか声が荒げていくのが分かった
――取り乱すな、セーシャ。私はお前の負の念が生み出したもの。元々お前が持っている本能のようなものなのだ。お前が真剣に剣の稽古に励んでいれば私など、当に超えられたものを。お前が自らの身分を憎み、父を憎み、自分の血筋を憎んだために、私はその本能に従わなければいけなかったのではないか。――
「…っ!」
確かにそうだった。
俺は自分が嫌いで、親が嫌いで、家が嫌いで、自分の周りの何もかもが嫌いだった
霧が現れてからそんなことを考える暇もなく、忘れていた感情
それが霧にはいつだって洩れていたのだろう
その感情が彼を殺人衝動へ導いてしまったのだとしたら
それは俺の責任だ
そう思うと胸が軽くなった
あれは俺の本能であり、俺の意志でやったことだとしたら。
それなら納得がいった
父上を殺したのも、兵士達を皆殺しにしたのも、城を壊滅状態へと追い込んだのも
全部全部、俺がやったんだ
霧のせいではない、霧の意志ではない、
セーシャという名の男の感情が
それをさせたというのなら
俺は殺人鬼として生きていくだけだ
そう思っていた
霧に親近感さえわいていたのだ
そのときの俺は
憎しみもせず、ただただ
己の意志で何かをしたという、達成感だけが
心の中に宿っていた
自分が殺しに楽しみを感じているその心こそが
霧を生み
自分には全く宿っていなかった感情をでっち上げ、
さらにはこれから愛する人たちを殺していく
憎むべき存在をいくつも作り出してしまった自分の
最も憎むセーシャを、自分を、作り出してしまうことに
全く気付くことはできなかったのだ
それはまるで霧のように
白く人の心をにごらせ、深いところまで引きずり込んでゆく
――まだ気付けないのかと本物の彼は
心の中で叫んでいるのに――
(続)
あいもかわらず駄文ですいません
また、感想等いただけると嬉しいです