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41話 俺はいつもディーナと共に

「ファンティヴェウメシイ王国は惜しみ無く協力するわ」

「ありがとうございます、王女殿下」

「で? 単刀直入にきくけど同盟や協定の話は進んでるのかしら?」

「ええ。セモツの侵攻をきっかけに、我が国含めた北の三国ドゥエツ王国、ソッケ王国、キルカス王国と海を挟んだ大陸北端の魔法大国ネカルタス、ファンティヴェウメシイ王国、ソレペナ王国に既に書状は送っています。応えてくれると思いますよ」


 キルカスとソレペナはこれを機に和睦の道を進めるから確実。ソッケもシャーリーや復興の観点から周辺国の援助や関わりが必要なの受けるだろう。ファンティヴェウメシイも目の前の王女が応えた。問題は魔法大国ネカルタスだけど、今回はヴェルディスから条件を出した上での六ヶ国協定なのだから大丈夫だろう。


「先に前線に赴きます」

「ええ。夫の転移を使って頂戴」


 軽く言うけど相手王子殿下だし、転移を使える魔法使いはネカルタス王国で十人ぐらいしかいないんだよねえ。まあそれはさておき。


「ありがとうございます」

「追ってこっちの代表を諸島リッケリに送るわ。一個師団つける」

「助かります」


 すると転移で書状が王子殿下に届いた。


「ネカルタス経由で手紙が届いたようね?」

「そうですね……ループト公爵令嬢の仰る通りになりました」

「まさか」

「はい。六ヶ国全て対セモツ国の応援に来て下さるそうです」


 こっちも準備万端。いけるわね。



* * *



 転移先は諸島領地リッケリだ。


「バーツ」

「ループト公爵令嬢」


 そこまでの大軍でない海賊がきた。ファンティヴェウメシイ王国での潜入捜査による海賊の動向調査からの捕縛が功を奏したということだろう。冷静に対応すればこちら有利だけど、その中に仮面をつけた集団が現れたという。その集団の厄介なところは薬瓶と魔法陣を使うこと。瓶の中身も魔法陣の魔法も当然、件の魔力暴走を招く代物だ。


「薬をかぶっても魔法陣の魔法を浴びても、件の体調不良を発症します」

「薬瓶は攻撃にも使えるし、魔法陣は罠を張ることもできるわね」


 こうなってくると中々厄介だ。


「ネカルタス王国からの支援物資である魔道具を上手に使うしかないわね……島への侵攻は?」

「やはり西から。一時膠着状態です」


 応戦したら一時荒い海上へ隠れたらしい。長くはいられないだろうから、次はいつ襲ってくるかという話だ。


「トゥ島の上陸箇所は一つで、すぐ平原よね」

「はい」


 ここ、主島であるシーヴに来るまでに抑えておきたい。

 西から数えて二つ目の島トゥは海流の関係と島の地形上一ヵ所しか上陸できない。仮面の人間について対策を考えておくために直接目にしないと。


「トゥだけに誘導できる?」

「やってみましょう」

「援軍は?」

「ドゥエツ、ソッケ、ファンティヴェウメシイは明日、キルカス、ソレペナは二日後、ネカルタスは調整中です。リッケリでだせる数は各島に一隻ずつ、シーヴには加えて四隻、合計十一隻配備されています」

「……いけそうね。仮面の人間をトゥ島に寄越して。やり方は任せる」

「分かりました」


 難しいことをお願いしてもオッケーしてくれるんだから感謝につきるわ。


「ディーナ様」


 呼ばれ斜め後ろを見ると護衛服のヴォルムがいる。ついさっきまで一緒に農業やってたとは思えないわね。


「もう呼び捨てで呼んでくれないの?」

「っ……公的な場ですので」


 あ、ヴォルムったら動揺したわ。

 農業中は私が振り回されることが多かったから、ヴォルムがどぎまぎしてるのが新鮮ね。こっちの方がしっくりくるって言ったら拗ねるかしら。


「準備に少し時間がかかるわ」

「では街に出ますか」

「ええ」


 港町は海賊対策でざわついていた。島の騎士が海賊対策用の船を用意し、上陸に備え漁師達を中心に海沿いの防衛に備えている。


「ディーナ様!」

「フィスキルさん」


 諸島の漁師取りまとめをしてくれてる夫妻が声をかける。


「こっちの準備はできてます」

「私達は食糧の確保を。長期戦に備えております」

「助かります。リッケリの方々は本当にお強いですね」


 島民自らここまでやってくれるなんて、さすがバーツが領主をやってるだけある。


「戦闘に参加しない方は屋敷へ避難してください」


 海賊が上陸した場合、城はないけど形としては攻城戦になる可能性が高い。島民はなるたけ避難しておいた方がいいだろう。


「何を仰るのです。我々は生まれてからずっと島で育ちました。こういう時こそ島の為に動きたい」

「そうです。女子供でも戦えることを教えてくださったのはディーナ様です。私達も戦うために努力してきました。やらせて下さい」


 拳での戦い方を教えたつもりじゃなかったけど、私の戦う姿は見てきた。だから本人の持つもの関係なく戦う技術を考えてきたらしい。

 バーツが戦闘向きでないのに、バーツ自身の力をいかして戦う方法を見いだしたように、島民も同じように各々戦い自衛する方法を探しだした。


「ありがとうございます。ではシーヴ島は任せます」

「はい」


 夫妻と別れ、二人町中を進む。これなら、主島シーヴをそのままトゥ島へ行けるわ。


「存分に甘えようかな」

「はい」

「久しぶりに暴れますか」

「ええ」


 当然のように付き合うヴォルムに笑う。


「いつも通り前に進むから周囲のことお願い」

「お任せ下さい」


 いつものことですので、とヴォルムがなんてことなしに言う。さすがね。

 するりと斜め後ろから進み、私の隣に立った。


「ヴォルム?」


 隣に立った私の手をとる。互いに向き合った。


「誓います。俺はいつもディーナと共に」


 とった手をそのまま口元へ持っていき、私の指に唇を落とす。

 二人きりになった途端大胆になるんだから。人がいないとはいえ、町中よ?


「格好良いわね」

「気合いをいれる為です」

「成程」

「というのは口実で、俺がディーナに触れたいだけです」


 指先に再び触れる。思わず笑いが漏れた。


「そういうこと言ってるとフラグ回収とか言われるわよ」

「嫌なフラグは全部ディーナが折ってくれるから大丈夫です」


 互いに笑い合う。

 翌日、私達は諸島の一つトゥに立った。

たくさんの小説の中からお読み頂きありがとうございます。

戦う前にいちゃつくやつら(笑)。大体争い前にこういう会話と行動してるカップルってどちらかが死ぬフラグだったりすのですが、皆さんご存知の通り(タグの通り)ハピエンです。ご安心ください(笑)。

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