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28話 諸島リッケリへ、海賊を拳で制圧

 魔法大国ネカルタスへは我が国ドゥエツが管理する諸島を経由して向かう。そのまま突っ切っても行けるけど、安全を考えるなら島を通った方がいい。


「バーツ」

「ループト公爵令嬢」


 諸島管理者、領地リッケリの主バーツ・フレンダ・ティルボーロンが迎えてくれた。


「随分騒がしいね?」

「諸島西端の島エンが海賊に襲われまして」


 元々活気のある港町だけど、妙にひりついていたのは海賊が原因だった。まあままある話だけど。


「海賊以外になにがあるの?」


 察した私に視線を泳がす。


「ここにきて件の体調不良者が急激に増えました」


 嫌な予感が当たってしまった。魔力暴走による体調不良がここにも迫っていたなんて。


「本土の王太子付使者ルーレ様がいらしてくれたのですが、やはり改善はなく……エン島に派遣できる人数の確保が難しかったので」


 ルーレが? 執事長がわざわざ使者としてくる? ドゥエツ王国が人出不足なら仕方ないとは思う。ルーレは執事職以外に護衛もできる程だから活躍の場は幅広いけど、治癒や医学の方は明るくなかったはずだ。

 でもその前に今は海賊をどうにかしないと話が進まない。


「私行くよ」

「え?」

「あの船ね」


 ヴォルムと船に乗って向かう。バーツがかなり叫んでいたけど無視して船を出してもらった。

 確かに人数は少ない。


「ループト公爵令嬢自ら?!」

「え? 本物?!」


 諸島の騎士たちがざわめく船上、状況を確認する。


「騎士の三分の二は件の体調不良です」

「全ての島に配備するには厳しく、一部では島民に任せている場所もあります」

「体調不良者は主島のシーヴに集約されています」

「いつから増えました?」

「一週間前からです。三日前に本土から使者を派遣して頂き、西端エンから順に島を回ってもらいましたが、ひどくなる一方でして」


 人員不足が深刻だ。

 それにしてもその件が私に入ってきてなかったことのが問題かな?

 時系列としては王太子殿下との婚約破棄の前で、仕事としては把握してておかしくない。情報がくるのが遅れていたとか? 万能でみえる魔法使いテュラも正直こういったとこには敢えて関与しないからな。


「ディーナ様、間もなく着きます」

「オッケー」


 海賊はたった一隻しかいない。

 上陸もしていない、というより上陸がかなわなかったらしく、それは島民がこらえているから、が正しいようだ。


「海上で接近し、船同士の近接戦へもっていきます!」

「じゃあ私とヴォルムは先に行くね」

「え?」

「ヴォルム」

「はい、ディーナ様。いつでも」


 自分の両手を握り、その上にヴォルムの片足が乗る。


「せーのっ!」


 私が腕を振るのに合わせてヴォルムが飛ぶ。強化した腕の力で真っ直ぐ海賊船へ飛んで行った。

 キルカス王国の時は距離がありすぎて殴るしか方法がなかったけど、この距離ならこれで辿り着く。


「じゃ、ゆっくり来て」


 周囲の騎士が目を丸くする中、笑顔で私も自分の足を強化して飛んだ。

 三秒で到着するなんて効率いい飛び方。身体強化の魔法は本当便利で好き。


「え?」

「は?」

「皆さん、こんにちは!」


 船のど真ん中に降り立つ私とヴォルムに周囲は一瞬息を飲むも、すぐに緊張感を取り戻し戦闘態勢に入る。


「ここは穏便にお引き取り、願えそうにないです?」


 当然だと上の舵をとる一人から回答を得た。そしたらやることは一つしかない。


「諸島西端エンを侵略するのが目的ですか?」

「手始めに、だな。諸島は全て奪う」

「それはドゥエツ王国として許せません。力づくで止めないといけませんね」


 たった二人、何ができると笑われる。


「まだまだ知名度は低いかあ」

「ディーナ様、海賊に知られてても困ります」


 それもそうね。


「では始めましょうか」


 殴り合いを。


「やれ!」


 船長の声と共に始まった。

 海賊は全て剣を持っているけど、動きは粗雑で統制は取れていない。

 避けて殴るだけで殲滅は簡単にできる。けど、勢い余って飛ばしてしまうと逃げられるから、かなり力の調整が必要だった。船に強く叩きつけて、船底に穴が開いても困るしね。

 いい所で高く空へ飛ばして戻って来てもらうか、近づいてくるドゥエツ王国の船に飛ばすかしか選択肢がない。


「なんだ、こいつ!」

「化け物かよ!」

「人間ですよ!」


 単純な突きを首を左に少し傾けて避ける。振りぬく前に軽い左ストレートを顔に当て、怯んだところを右フックで吹っ飛ばす。後ろにいた海賊二人を巻き込んで倒れた。


「ぐうっ」


 三人いっぺんに殴ればあまり吹っ飛ばないで済むのは新しい発見ね。気を遣いながら殴るのって結構大変だ。


「ディーナ様、船長が」

「オッケー」


 一騎打ちタイム!


「大陸産の良い剣ですね」

「聞いたことがある。ドゥエツに武道を極めた者がいると」

「伝説みたいな言い方」


 違うよ。身体強化して殴ってるだけだから!


「実力を試すにはいい機会だ」

「いやいやそういう流れじゃない」

「この剣の切れ味受けてみよ!」

「台詞回しが古いって!」


 左から斜め下に振り下ろされる剣は他の賊と比べて粗がなく太刀筋が良い。どこかで剣の師事を受けていた気配がある。

 次に右から左に横一線。少し屈むだけで避けられる。その次は真上から振り下ろすだけ。遅い。

 真剣白刃取りして折るとまた古めかしい台詞を叫んでいた。もう聞く気なくして一発殴る。

 簡単だなあ。


「にしても貴方たちも大陸の言語を使うんですか」

「殺、せ」


 胸ぐら掴んでボロボロの船長に話しかける。


「私が大陸の言葉で話しかけていたの、なにも疑問に思いませんでした?」

「だからそれがなんだって」

「貴方方は魔法について詳しくありませんよね?」

「あ?」


 使えねえよと応える感じ、嘘はついていない。それに魔力があれば多少感じることが出来る。けどなにもない。


「貴方たち海賊の間で原因不明の体調不良って流行ってます?」

「……知らねえよ」


 あ、知ってるんだあ。目泳いじゃって嘘ついてるのバレバレだよ。


「タイミングが悪いとは思ってたんです。魔力暴走による体調不良と海賊の襲撃がほぼ同時期。怪しいですよ」

「……」

「まあ今貴方のおかげで二つのことが繋がってるって分かったんでよしですね」

「……」


 なんだ無言か。


「体調不良の件はいいので、貴方たちのバックに何があるか話してくれます?」

「話すかよ」

「ですよね」


 よくできた組織だ。この質問には話さないという明確な意志が見える。こういう時は何をしても無駄。ここで終わりね。それでも核心に繋がることは多かった。

 魔法薬も魔法陣も海賊に繋がり、その海賊の後ろにはなにかがある。組織として成り立つなら答えは絞られる。


「ヴォルム、戻ろうか」

「はい」

たくさんの小説の中からお読み頂きありがとうございます。

船から船へ飛んで移動するディーナに台詞回しが古いとか言われたくないだろうなと思いつつ。自分がぶっ飛んでることに自覚はあるけど決してセルフツッコミはないディーナ。そういう子、いいと思います。そして次話はいちゃつくよ!(そういう兆候以下略)

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