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22話 キルカス王国へ。正ヒロインの怪しい動き

「ループト公爵令嬢!」

「よく来てくれました」


 ソッケ王国を挟んだ東に位置するキルカス王国は我が国ドゥエツと昔から友好だったりする。私も初めて外交に行った時はやりやすかった。なにせ意気揚々と拳を交える仲になったのだから特異な国と言える。


「早く君と拳を交えたい」

「あなた、それは楽しみにとっておかないと」

「ああ! そうだな!」


 よかった。さすがに最大難関の問題があったから、殴り合ってる場合じゃない。

 視線を私から別へ移したキルカス王国両陛下に私の隣にいたソッケ王国の正式な外交特使が膝をつく。

 ソッケ王国からキルカス王国への宣戦布告についての謝罪と撤回、お馬鹿王子が独断で行ったこと、キルカス王国の許可を得られれば両国王陛下による会談とその場で謝罪することへの許しを求めた内容だった。


「ドゥエツ王国を仲介・同席の上なら受け入れる」


 当然私はその場で頷く。元々そのつもりだったし、三国の関係強化のために近い内に会談するのは悪くない。


「後程両国に書状を送る。場所を改め話を進めたい」


 けど懸念事項が一つ。

 お馬鹿王子への罰が廃嫡と労働、福祉による奉仕までというのが納得できないらしい。

 これはそもそもドゥエツ王国に対してやらかしたことへの罰だから、これとは別にキルカス王国から罰が与えられてもおかしくないし、キルカス側はそれを望んでいた。


「海賊対策で前線に出てもらおうか。そちらの王子派で編成し、他からの援助や部隊編成はなしだ」


 つまりお馬鹿一人で頑張ってね、的な。派閥の人間がいても船出せなさそう。

 これにソッケ王国は了承の上、両陛下に伝えるで互いに納得した。ひとまず戦争は回避できたので助かったところね。


「ループト公爵令嬢、話がある」

「はい」


 ソッケ王国には下がってもらい、二国間の対話に入った。場所を移り応接間で面白い話を聞くことになる。


「エネフィ公爵令嬢……妹の方だな。ルーラ嬢についてだが」


 手紙と思しき書状を渡される。


「君宛てだ。私にも先触れで同じ内容を頂いた」

「……」


 シャーリーの義妹ルーラがソッケ王国から姿を消した。悪役令嬢ものの展開、断罪返しをしてそれが履行される前にだ。王太子殿下からわざわざ先触れで手紙を出すということはキルカス王国でシャーリーの義妹ルーラが関わっているということ? どこで?


「何故、陛下の元に同じ手紙がきたのですか?」

「ああ、ルーラ嬢は我が国にも関係がある。一時期キルカス南端によく来ていたらしいのだ」

「南端というと、ネカルタス王国王女殿下の監禁事件があった?」

「そうだ」


 魔法大国ネカルタスの王女がネカルタス東の隣国ソレペナの王太子と婚姻することになり、ソレペナ王国へ移動しているところ沿岸部付近で海賊に拉致された。その王女が監禁されていた場所がキルカス南端のラヤラ領。管轄のメネテッタバ辺境伯は海賊と手を組んでいた故に起きた事件だ。

 

「どうにも不可解だ。ルーラ嬢はキルカス出身ではない」


 そういえばあの義妹は海を渡った大陸出身と聞いていたかな。義母の婚姻にともないシャーリーのいるソッケ王国に来たと聞いている。キルカスでの目撃情報があった時系列としてはとっくにソッケ王国に義妹が住んでいる頃だ。義妹には南端ラヤラ領に頻繁に顔を出す必要も理由もない。


「仰る通り引っかかりますね」

「メネテッタバ辺境伯の件だが、彼は王女を誘拐し魔法の力を得ようとしていたようだ。海賊は王女の輿入れがないことによる国同士の不和を狙い侵略するつもりだったようだな」


 メネテッタバ辺境伯は日頃海賊の侵入を許す代わりに海賊から金銭を受け取っていたらしい。協力して王女を拉致監禁し、魔法大国ネカルタスとソレペナ王国との関係を悪化させ、その隙に二国から略奪するつもりなら、海賊の考えの筋は通る。彼らは奪うことしか考えていない。


「成程」


 けどそこにシャーリーの義妹ルーラが絡む余地がない。


「メネテッタバ辺境伯は魔法の力を欲しがっていたと仰ってましたね」

「ああ。キルカスは騎士を中心とした肉体派が多く、剣の扱いは随一だが故に魔法には弱い」

「まさか」


 そうだと頷く。


「メネテッタバ辺境伯は魔法の力でキルカス王国を落とすつもりだった」


 キルカス王国の辺境伯の動機と行動は確実だろう。けど、魔法大国ネカルタスの王女がそんなあっさり監禁されるだろうか? ネカルタス国民は魔法が使えて当たり前だけど、中でも王族や国の中枢にいる人間は力が桁違いだ。魔法のまの字すらない海賊とキルカス王国が魔法使いを拉致監禁できるとは思えない。

 となるとここでのキーがシャーリーの義妹ルーラの可能性だ。義妹も魔法は使えないけど、その代わりになんらかの手引きをしていたとしたら?


「メネテッタバ辺境伯はルーラ嬢を知らないと証言している」


 辺境伯は海賊としか関わりを持っていなかった。表舞台に出てこないだけで海賊の裏で義妹ルーラが絡んでいた可能性はある。にしても正ヒロインと随分離れたキャラになってきたわね。

 ともかくだ。南端ラヤラの情報がほしい。


「……陛下、許可を頂きたいのですが」

「許可するだろうが、念の為聞こう。発言を」


 意外と時間のかかる外交になりそうだ。キルカス王国では私と殿下の関係をフォローすれば終わりのはずだったのに、今は別の大きな問題が出てきてそれどころじゃなくなった。


「南端ラヤラ領に伺いたいのです」


 両陛下の首が縦に振られた。

たくさんの小説の中からお読み頂きありがとうございます。

あからさまに怪しいルーラの動き。それはさておき、筋肉至上主義の国キルカスに入りました(笑)。開口一番拳交えたいとか中々突き抜けてるなと思います。

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