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17話 ディーナ様と婚約しました

「ディーナちゃん来てるって?」

「ディーナちゃん、よかった。話がしたかったんだよ」

「ディーナちゃん!」

「ディーナちゃ~ん」

「ディーナちゃんてば~」

「……ごめん、ヴォルム」

「いいえ、予想通りですので」


 ご飯に誘って王都に出たら人が集まってくる。

 午前中デート、午後イチ外交、午後終わりから夕方の今、王都で気軽に入れる店に入ったら訪問者ばかり。

 この店に来る前からあっちにつかまりこっちにつかまりだったから仕方ないけど、店にも突撃くるなんて想像以上だ。


「ディーナ様がそれ程慕われているという事です」

「ありがたい話ね」


 この出入りの多さが許されているのも店の人が私の話に興味を持っているからだ。当然、お店の人も説得済みで普段ならこんな人の出入りは許されない。


「てかなんだよ。ディーナちゃん、殿下と婚約してただろ」

「勘違いですよ。元々婚約してないんで~」

「あー、そうするのか?」


 訊かれることは同じなら応えることも同じ。

 婚約が元からないという話と、殿下とシャーリーの結婚についてだ。丁寧に説明すれば納得してもらえる。その間ヴォルムは静かに待っていた。領地周りをする時と同じスタイルね。


「そうか」

「ディーナちゃんがそう言うならな」


 市井は市井ですぐに分かってくれる。助かる限りだ。


「まー、あとはヴェリクさんたちの判断に任せるか」

「そうだな。ソメッツさんとベルストンさんも一緒らしいし」

「お、きたきた」


 あとはよろしくお願いしますと大勢の商人が一気にいなくなった。


「おっす、ディーナちゃん」

「よかった。こっちに来てくれるとは思っていたんだよ」

「じゃ、俺ら酒いっていいか?」

「どうぞどうぞ」


 今は三人、重鎮と呼ばれる商会連合の代表と机を同じにしている。ゆっくりご飯とはいかないようね。とは言っても話はほぼ通じているので、のっけから軽快なトークだった。


「ソッケのお嬢さんはあっちで婚約してたんだろ。破棄するかも分かんねえのにこっちは相手いないまま待ちますなんて立場上できねえし」

「殿下だってとっくに結婚しておかしくない年だ。ディーナちゃんがいなかったら今の今まで結婚なしでいけるはずもねえよ」

「ディーナちゃんを隠れ蓑扱いかよ。おれちょっとそこは気に入らねえ」

「でもディーナちゃん、ソッケのお嬢さん絶賛してるぞ」

「確かに仕事できるお嬢さんだ。隣国の商売連合に確認したが絶賛だったな」

「例のお嬢さんとこのまま上手くいけば、おれらの商売にも影響がでねえってわけか」

「上がおかしくなるとこっちまで潰れかねねえしな」

「でもディーナちゃんがよお」

「そのディーナちゃんがそうしてほしいって言ってるんだぞ?」


 おじさまたちで勝手に話が進んでくれて助かる。

 こちらに視線が戻され、私はただ笑顔で頷いた。それが答えだ。


「ディーナちゃん……そうか、本気なんだな」


 こちらを見やるおじさまたちに対して、私は待機だ。隣国ソッケの王子よりもよく分かっている。


「……分かった。隣国のお嬢さんに会わないことにはなんとも言えないが、ディーナちゃんの頼みだ。おれたち王都の人間は協力しよう」

「おれは王都の外にも情報回しとくわ」

「ありがとうございます」


 新聞屋に話はついているので協力するよう頼んだ。何故かそれぞれ追加でもう一杯お酒飲んでるけど言及はしない。奥様に怒られるのに、なにかにつけてお酒を飲みたがるのよね。


「で? ディーナちゃんずっと相手いなかったのか?」

「ん?」


 王子とはそうではなかったという前提の話し方になって、対応力に感心しつつも中身に首を傾げた。


「いい年なのはディーナちゃんもだろ? 二十歳だぞ。貴族だって十六で結婚多いだろ」


 市井貴族ともに遅くとも十八までに結婚することが多い。それを考えると結婚してない私は行き遅れとも言える。今までは殿下の婚約者で、殿下のソッケ王国への災害派遣を理由にいくらでも誤魔化せたしなあ。同い年のヴォルムとテュラにもそういう話がなかったから全然意識してなかった。


「おれたちにとっちゃ娘みたいなものだからな~。心配なんだよ」

「ディーナちゃんの幸せ前提でおれたち全部飲み込みてえしな」


 恋バナはおじさまたちにも人気らしい。


「ああ、この護衛の彼と付き合ってんのか? いつも一緒だもんな」


 護衛ですので常に側にいますよ。と言おうと思ったらヴォルムが笑顔で応えた。


「ディーナ様と婚約しました」

「待、」

「ん? 昔っからかそういうことだったのか?」

「ええ、そんなところです」


 おじさまたちが大喜びした。心配してた娘にはきちんと相手がいて、その相手が領地周りでよく見た人物で安心だと言う。ヴォルムは領地周りで割と幅広く商会や自治会の手伝いをしていたから彼らの心象はめちゃくちゃいい。確かに婚約したし、広まれば殿下とエネフィ公爵令嬢の関係は安泰になるけど、今言う? あんまり心の準備出来てなかったんだけど。


「なら安心だな!」


 よく働く男だし、と笑う。


「ディーナちゃん、こんなだから気が気でないっつーかよ」

「分かるわ~! 商会の若手、ことごとくフラれてたしな!」


 告白された記憶ないよ?


「ディーナ様が鈍いだけです」

「心の声読まないでくれる?」


 笑顔のヴォルム。

 そして納得した商会のおじさまたちは笑いあげながら店を出ていく。邪魔したな~ごゆっくり~なんて言いながら、店の扉を出ていく時に飲み直しだとか叫んでいた。ブレないな、この人たち。


「……理解得られたからいいのかな?」

「あの方々が認めれば国中の市井に認められたようなものです」


 代表して彼らが来たということはそういうことだ。たったこれだけの会話で丸くおさまるんだから我が国はよくできている。


「ディーナ様が国の市井のネットワークを作り、団結力を高めたんですよ」

「そう?」

「ええ」


 個々で力もつけている分、何かあっても独自で動けて早々崩れない。けど団結力はあり、全体の底上げもできた。領地周りって大事ね。やっといてよかった。


「ご飯食べる?」

「はい」


 そして翌日、まだバタバタするのかと肩を落とすことになるのを、この時の私はまだ知らない。


* * *


「ソッケ王国への引き渡しの立ち合い、お前希望だとよ」

「やっぱり……」

たくさんの小説の中からお読み頂きありがとうございます。

決定したら早々に発表しないとね!ね! にしても心の準備出来てないとか中々ディーナ自身にも影響出てるって自覚ないですね~契約なら割り切って発表できますもんね!ね!


記録

ディーナの年齢公開(ヴォルム・テュラ含む)

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