19-魔女狩りの終結
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★サラ・グッド
-ヨハン・ライヒハートにより処分
★サラ・オズボーン
-ヨハン・ライヒハートにより処分
★ティテュバ
-ヨハン・ライヒハートにより処分
★アリス・キテラ
-シャルル・アンリ・サンソンにより処刑
★ペトロニーラ・ディ・ミーズ
-シャルル・アンリ・サンソンにより処刑
★マリ・ダスピルクエット
-シャルル・アンリ・サンソンにより処刑
★マンテウッチャ・ディ・フランチェスコ
-マシュー・ホプキンスにより処分
★マーサ・コーリー
-シャルル・アンリ・サンソンにより処刑
★レベッカ・ナース
-ピエール・ド・ランクルにより処分
☆ジョージ・ジェイコブ
-フランツ・シュミットにより処分
☆ジョン・プロクター
-ヨハン・ライヒハートにより処分
☆サミュエル・パリス
-マシュー・ホプキンスにより処分
☆フランシス・デーン
-シャルル・アンリ・サンソンにより処刑
★マザー・シプトン
-シャルル・アンリ・サンソンにより処刑
★アグネス・サンプソン
-フランツ・シュミットにより処分
☆イザボー・シェイネ
-ヨハン・ライヒハートにより処分
☆ビディ・アーリー
-マシュー・ホプキンスにより処分
○その他、有象無象の魔女認定者
-900名以上を処分
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「以上が今回の魔女狩りの結果よ!」
モーツァルトの演奏が響いている協会本部にて。
教会のようにチャーチチェアが立ち並ぶ奥の台座に立っているのは、スクリーンに結果を映し出しているアビゲイルだ。
今回の魔女狩りの告発者だった彼女は、すべての魔女が処刑されたことを受けて、魔女裁判のまとめにかかる。
目の前にいるのは、協会のトップとして集められた者たち――マシュー会長を筆頭に、ヨハン・ライヒハート、フランツ・シュミット、ピエール・ド・ランクルの4名だった。
隣で演奏しているモーツァルトは置物、離れた場所で聞いている少女――ジョン・ドゥは、この場に来られないシャルルの代理人である。
「続いて、一応それぞれの功績を挙げると、マシュー会長はマンテウッチャとサミュエル、ビディの3名を処分しました。
ヨハンさんはジョン・プロテクターとイザボーの2名。プラス初日の3名ね。フランツさんはアグネス、ジョージの2名。
ピエールさんはレベッカ1名。
そして問題のシャルル・アンリ・サンソンは〜、リーダーであるアリス・キテラを始め、側近のペトロニーラ、根っからの魔女であるダスピルクエット、マーサ、陽動や作戦立案として核となっていたフランシス、マザー・シプトン。
以上の6名を処刑しているわ! ヨハンさんの初日を含めても、シャルルが一番功績を残していると言えるわね!」
モーツァルトの演奏が、なぜか無駄に盛り上がっていく中。
シャルルを陥れたはずのアビゲイルは、その功績を嬉しそうに告げる。
高らかに宣言された実質的な無実に、マシューやヨハンなどは一切反応を示さない。だが、ピエールは『せっかく合法的に痛めつけられると思ったのに』などとつぶやき不満げだ。
狙撃手であるフランツはフランツで、『無実で魔女認定を……つまり償うべきは俺達なのかな?』などと、よくわからないことをつぶやいていた。
「……ふん、あれの処遇などどうでもいい」
「そうですね〜♪ では、無罪放免ということで☆」
「これだけの功績を収めたのなら、殺す理由はない」
「ついでにもう少しいいかしら?」
本当にどうでも良さそうなマシューとアビゲイルが、いとも容易くシャルルの魔女認定を撤回していると、離れた位置からジョン・ドゥが声をかける。
告発のきっかけとなった時と同じく少女の姿をしているそれだが、今回はアビゲイルと一緒にいた時よりも真面目な表情をしていた。
「なぁに、ジョン・ドゥ?」
「無罪放免なのは当然でしょう? 追加でもう少し労ってもいいと思うの。あの子は休暇中に無実の罪を被った。
それなのに、一番功績を上げたのよ?
報奨金と休暇を増やしてあげたらどうかしら?」
「ですって。どうしますー、マシュー会長?」
「好きにしろ。私は興味がない。ただし、ピエールは押さえておけよ。殺さないと決めたのなら、死ぬと困る」
ジョン・ドゥの要求を受けたマシューは、もう結論は出たとばかりに言い捨てると、杖をコツコツと鳴らしながらヨハンを伴って去っていく。
フランツは自分の腹を撃っていて無反応だったが、名指しで問題児扱いされたピエールは頬を膨らませて立ち上がっている。
「ちょっとちょっと、一体僕を何だと思っているのさ?」
「女性専門の処刑人で、いつ暴走したとしてもおかしくない変態じゃないの? あ、近寄らないでね。
見た目は可愛い男の子だけど、中身が気持ち悪いから」
「ひっどい!」
ピエールは扱いに不満があるとして立ち上がっていたのだが、アビゲイルはいつも通り容赦がない。
グッサリと刺されて、彼は苦しげに膝をついていた。
その様子を尻目に、ジョン・ドゥは協会の入り口へ向かう。
シャルルの処遇も決まり、マシューも去ったので、さっさと報告に行くつもりのようだ。
おそらく、今のそれは女性の姿をしているので、ピエールを避けたいという意図もあるのだろうが。
「じゃあ、私はもう行くわね。報奨金はわからないけれど、休暇はとりあえず最初の3倍くらいでいい?」
「んー、まぁ無実で追われて功労者だし、いいと思うわ!」
「オッケー。そう伝えておく。
その変態はどうにかしてね?」
「みんなして酷くなーい? 僕は紳士だよー?」
ピエールの抗議の声が響く中、ジョン・ドゥはさっさと協会を後にして、シャルルの家に向かっていった。
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「ということで、ちゃんと無実になって報奨も増えたわ」
協会を出てから数時間後。真っ直ぐシャルルの家へとやってきていたジョン・ドゥは、リビングで同居人であるマリーに処遇を報告していた。
この場にシャルルはいない。
捕まっている訳ではなく、ちゃんとこの家にはいるのだが、アリスを処刑した直後から昏睡状態になっているのだ。
そのため、雷閃によって守られているこの家に運び込まれて以降、死者を計測していた一週間近くの間眠り続けており、報告も代わりに彼女にされているのである。
「そう……ありがとう、ジョン・ドゥさん」
「仕事なのだから、気にしなくていいわ。
安全性も問題なさそうだし、帰るわね」
「えぇ、またいらしてね」
報告を終えた情報屋は、すぐさまこの家を去っていく。
魔女狩りは完全に終結し、ピエールも2階にいる雷閃が守っている限り手出しはできない。
ジョン・ドゥという異分子が立ち去ったことで、この家には穏やかな平和が戻っていた。




