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やがて始まるリベリオン  作者: 塚上
第二章 異国の地にて
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第五十話

 運河に築かれた水の都ワーテル。街の象徴と呼べる広大な運河は全てが凍りつき白銀の世界へと姿を変えていた。


「魔法の余波だけで運河を堰き止めるか。これではどちらが神か分からんな……」  


 国の代表であるリーデルが感慨深そうに発言する。その言葉にはゼーファ達に対する皮肉も込められていたが。


「ユニゾンリンク……初めて見たよ」


「貴様のような間抜けでは一生お目にかかれない代物だ。泣いて喜べ」


「発言が大物過ぎる……」


 訳の分からないうちに国の崩壊に巻き込まれ、気付いた時には全てが終わっていた。住民達は恐怖に慄くべきかそれとも安堵するべきなのか。激しい状況の変化に翻弄されていた。


「有り得ない……。あれは神、だぞ」


「まだほざくのか三下? どれだけ力があろうが所詮は魔物だ」


 翻弄されていたのは住民だけではなく貴族派も同じであった。

 何年も時間をかけ、世代を超えて成し遂げようとした水神の召喚。だが蓋を開けてみれば制御の効かない暴竜が現れワーテルを破壊し尽くそうとした。

 偶然居合わせた異国の二人組がいなければ自分達を含む全てが運河の底へと沈んでいたことだろう。


「認められん、あれは水神なのだ。我らがどれだけの犠牲を払い、屈辱に塗れてきたか……貴公は知っているのか……!」


「ハッ、知るかそんなこと。負けた貴様らが悪い。他人に当たるなよ」


 蔑んだ瞳に嘲笑を含んだ笑み。明らかにゼーファ達を馬鹿にしていた。


「⁉︎ それが我らと同じ貴族の振る舞いかッ! 恥を知れ外道!」


「おかしなことを言う。貴様らは貴族の血を引いているのかもしれんが、この国の貴族制は既に撤廃されている。おままごとは他所でやれよ」


 ジークの煽りに堪らず顔を赤くするゼーファ。ワナワナと震えている。今にも掴みかかりそうな勢いだ。


「……犠牲を払ったと言ったな。周りを見てみろ、この惨状を。これが貴様らの言う元のあるべき姿なのか?」


 召喚の影響により運河は荒れ果て多くの島が沈んでいた。リヴァイアサンの攻撃で避難していた住民達の多くが犠牲になった。この状況では国の存続そのものが危ぶまれる。


「貴様らがしたことはただの大量殺人であり国崩しだ」


「違う、そんなつもりはなかった。栄えある公国の為に我は……」


「言い訳は取調官にでも聞いてもらうんだな」


 取調官。そのワードに反応するゼーファ。自身が揶揄されているのだと直ぐに気が付いた。


「簡単に死ねると思うなよ。貴様らは暗い牢屋の中で一生を終える。精々惨めに許しを請うんだな」


「……正義の執行人を気取るか外道がッ!」


 リヴァイアサンは消滅した。ゼーファを始めとした貴族派に残された力はほんの僅かでしかない。仄かに光る青い輝きは頼りなかった。


「最後に教えてやる、心して聞け。――ラギアスはラギアスの為にしか動かない。そして、貴様らは俺の邪魔をした。だから消す、それだけだ」


 ゼーファが飛びかかろうとするが何故か足が動かない。視線を向ければ足元が凍りつき、体全体へと範囲を広げてゆく。ジルクを含めた他の貴族派も同様であった。


「馬鹿な、いつの間に、このような魔法を……」


「楽しい取り調べの最中だ。……俺に正体を明かすべきではなかったな。ゴミ屑共のリーダーとしての最後に相応しい場をくれてやる」


『グレイスサイレント』


 堅氷に閉ざされたゼーファ達が言葉を発することはもうなかった。




✳︎✳︎✳︎✳︎




 リヴァイアサンとの戦闘が終わり半刻が経過した。戦いの影響により凍りついた水面は依然堅い氷に覆われたままであった。


「寒い……運河が凍るなんて初めてだよ」


「貧弱な奴だな」


 目まぐるしい変化の真っ只中にあるワーテルであるが、いつまでも日和見を決め込む訳にもいかない。被害の確認、現状を把握するために人々は行動を開始していた。


「無茶言わないでよ。異常気象でもここまではないよ。……あっ、ほら、また人が転んでる」


 第四避難所の屋上から運河を眺めるクラッツ。街の人間が慣れない氷の上をへっぴり腰になりながらも、懸命に進んでいる様子が窺える。先程転倒したのは大統領であるリーデルのようであった。


「リヴァイアサンの討伐に貴族派の拘束。君のような存在を英雄と呼ぶんだろうね」


「くだらんな。一貫性のない、都合のいい名声に興味は無い」


 イグノート共和国の首都であるワーテル。ゼーファ率いる貴族派の暴挙によって甚大な被害が生まれていた。復興以前の問題として被害の全容把握が急務となっている。


「……どうして、ファルダーさん達を生かしたんだい? 君の力なら終わらせることも出来たはずだ」


「不服なら止めを刺せばいい。目撃者はいない」


 氷像のように固まってしまったゼーファ達は放置されたままである。

 魔法の効力がしばらく続くことも理由ではあるが、そもそも彼らを拘束するための留置所は運河の底である。

 国の存続や国民の生活と犯罪者達。どちらを優先するべきかは明らかであった。


「家族が生存している可能性がまだあるから、僕は平静を保てているのかもしれない」


 リヴァイアサンの攻撃により崩壊した避難所は複数あるが、被害を免れた場所があるのも事実。全てが犠牲になったわけではなかった。


「でも、はっきりと分かっていたとすれば……僕は怒りに身を任せていたかもしれない。返り討ちだろうけどね」


 今直ぐにでも駆け出して家族の安否を確認したい。大きな声で名前を呼びたい。

 だが、クラッツは動かない。ジークの本心を確認したいという想いがあり、ゼーファ達を野放しにするわけにもいかない。そして何より、恩人を蔑ろに扱うのは失礼だと感じたからである。


「死ぬのは簡単だ。死ねば全てが終わるからな。……だが、それでは生温い。あのゴミ屑共は生きて地獄の責め苦を味わうべきだ」


 興味が無さそうに淡々と述べている。表情や声色からは感情の起伏は見られない。

 それでもクラッツはジークに感謝していた。部外者にも関わらずワーテルのことを想っての発言であることに。


「やっぱり君は英雄だよ……」


 余談ではあるが、浩人が怒りを抱いていたのは事実である。将来の逃亡先を滅茶苦茶にしてくれたことに対する怒りではあるが。


「それからブラッドさんも。あなたがいなければユニゾンリンクも成り立たなかったですし。……ブラッドさん?」


 二人の背後にいたブラッド。いつも通り鎧を纏った姿ではある。口数が少ないのも平常である。


「……下がれクラッツ」


 即座に形成される氷の壁。それを貫くこうとする黒い槍。クラッツが気付いた時にはジークが魔法を展開しブラッドが槍を突き刺していた。


「ブラッドさんッ⁉︎ 何をしてるんですか!」


「……逃、げろ。遠くへ、出来る限り」


 ブラッドからは黒い靄が溢れ出ていた。リヴァイアサンとの戦闘時に見せた黒い瘴気。それが尋常ではない勢いで噴き出しブラッドを覆い尽くす。


「貴様は邪魔だ。さっさと家族でも探しにいけ」


「そんなッ、それじゃあジークが……! それにブラッドさんまで。どうして二人が戦わないといけないんだ!」


 クラッツのような一般兵から見てもブラッドの状態は普通ではなかった。

 見た目だけで言えば勘違いを招くかもしれないが、素朴な武人であり、無意味に他者を傷付けることはないとクラッツは分かっていた。


「知るかそんなこと。……だがこいつは水蛇とは訳が違う」


「……ぐ、ぐぁぁぁああ」


 瘴気から感じる強い怨念。強き者を、戦いを求めている。そう感じた。


「槍使い。覚悟は出来ているんだろうな?」


「た、のむ……俺を殺してくれ。でなければ……」


 力と力。魔力と怨念。それらがぶつかり合い二人は吹き飛ばされる。戦場は凍りついた運河へと移る。




✳︎✳︎✳︎✳︎




 氷上で激しくぶつかり合う二つの影。冷気を纏った少年と夜叉と呼ばれる怨念に呑まれた武人。

 異変を感じ取ったのかワーテルの人々は再び避難所へと移り様子を窺っていた。


「……ぐ、ぐぉぉぉ!」


「言葉まで失ったのか? まるで畜生だな」


 剣と槍による攻防。ジークの剣から放出されている冷気を浴びれば寒さによって動けなくなるのだが、ブラッドは最早普通ではなかった。


(呪いの装備……ここまで変わるのかよ!)


 ジークがどれだけ槍をへし折っても新たな槍を生成するブラッド。作り出す度に強く鋭く頑丈になる。天井知らずのような感覚であった。


「チ、ワキ……ニク、オドル」


「言葉は不要か」


 鋭い突きを身を逸らして躱すジーク。屈み、後方へバックステップ、魔法で作った盾で槍の軌道を逸らす。様々な手法で回避を続けるが、ブラッドの槍は時間の経過と共に速くなる。


(急激に練度が上がってやがる。チートかよッ⁉︎)


 槍の一撃を躱しても込められた怨念の余波もまた危険である。魔力を放出しそれを防ぐが、直接受ければ体が焼ける。強い怨念は時に身を焦がすのだ。


「図に乗るなよ」


 攻撃を掻い潜り間合いの内側へと入る。

 練り上げだ魔力の塊をそのままぶつけて弾き飛ばす。普段の相手ならこれで終わりなのだが。


「ア、アァァアアアアアーー!」


 氷の大地へ槍を突き立て勢いを殺すブラッド。堅氷が激しく抉れ亀裂が走るが最後には停止する。ジークの攻撃を受け切って見せた。


(強い。これまで戦ってきた他の誰よりも)


 脳裏に浮かぶのは騎士の親子。

 完成された剣と発展途上ではあるが可能性の塊である若き剣。

 もし、自分に仲間がいれば、ここまで手こずることはなかったのだろうか。


「くだらない。――フローズンガイザー」


 氷の大地が隆起しブラッドを突き上げる。続けざまに氷の礫を放つが、槍で全てが叩き落とされる。空中に投げ出されながらも狂わない方向感覚に内心驚く浩人。


 体勢を崩すことなく盛り上がった氷の上に着地するブラッド。

 その手には握られた槍。それを予備動作無しで投擲する。


「フリーズランス」


 両者の生み出した槍が正面からぶつかり合い霧散する。衝撃により激しい風が吹き荒れる。


(本当にくだらないな。ゲームでジークは常に独りだったんだ。それはこの世界でも変わらない)


 途切れることなく、寸分の狂いなく投擲され続ける槍は重なり合う。互いの意思を、欲を、我を通すために。


(俺は俺の為だけに戦う。だから、悪く思うなよ。俺の踏み台になれ)


 求める物のためならば、悪役にだってなれるのだから。




✳︎✳︎✳︎✳︎




 頭上から降り注ぐ氷の雨。本物よりも冷く、鋭く、そして脅威的である。一撃でも浴びれば忽ち凍りついてしまうだろう。


「ア、マイ、ヌルイ、ナ」


 槍を両手で持ち円を描くように高速回転させ全てを防ぐ。

 己の意思は関係ない。怨念に呑み込まれた自らの体はもう止まらない。相手が死ぬか、命が燃え尽きるまで。


「モット、ダ! モットヨコセ……!」


 かつては武で名を轟かせていた一流の槍使いだったのだろう。相手の攻撃を的確に捌き反撃する。常人の動きではなかった。


「タノシマセロ!」


 この呪われた装備がなければ自分は既に死んでいたことだろう。守りたいものも守れず、後悔に苛まれながら命を散らしたはずだ。

 皮肉なことだが、今この少年と戦えているのはこの力のおかげである。それがなければ勝負にすらならなかっただろう。もちろん、戦う理由もないのだが。


 攻撃の途切れ目を瞬時に見抜き一気に迫る。人外じみた動きで接近戦へと持ち込む。


「ソノ、イノチヲ、オレニ、ヨコセ!」


「貴様にくれてやれるのは死だけだ……」


 他者へ誇れるような人生ではなかった。

 大切な家族を守るために戦った。何も失いたくはなかった。だから禁忌と呼ばれた力に手を出したのだ。

 

 だが結果は何よりも残酷であった。

 守るべき存在達から否定され、拒絶され、刃を向けられた。全てが無駄だったのだ。


 その後のことはよく覚えていない。

 各地を転々としながら彷徨うように旅を続けた。まともに人と関わるようになったのはこのワーテルに来てからだ。多くの思惑があったにしろ、役割を与えてくれた。 

 

 そして、この地で出会った異国の少年。自分と同じ貴族であるという少年は非常に口も態度も悪く、周囲を困惑させていた。それは不気味な鎧を身に纏った自分にも同じであった。

 外見や生まれ、立場に左右されることなく対等に自分を扱ってくれた。久しぶりに感じた感覚に戸惑いながらも嬉しく思っていた。


「ア、ガァァァァーー!」


 スピードを利用した神速の槍を突き出す。黒髪の少年は剣で防ぐが、勢いに押されて後退する。氷の地面を削りながらも受け止めるが、ブラッドの突進が止まることはない。  


「煩い黙れ」


 態度も言動も常に不遜で他者を見下す悪徳貴族のような少年。圧倒的な力で、刃向かう敵は全てをねじ伏せてきた。

 

 僅かな時間ではあるが近くで見てきたからこそ、少年の矛盾に気が付いた。何だかんだで他者を気にかけ、クラッツという兵士の手助けをしていた。

 無関係な国を守る為に命を懸けていた。

 神と呼ばれし竜に怯むことなく戦っていた。


 だからこそ気になってしまう。

 その言葉の裏には何が隠されているのか。

 何の為にそれ程までの力を身につけたのか。


 鍔迫り合いのような形で槍と剣が重なり合う。怨念に呑まれた自分の表情はさぞ恐ろしい見た目をしていることだろう。自分の姿を少年が見ているように自分もまた少年の姿を瞳に映している。

 

 目と目が重なり合う。

 ブラッド……否、この鎧の装備者は思う。


 どうしてこの少年はこんなにも悲しそうな目をしているのだろうか。何故辛そうな色を瞳に宿しているのだろうか。言葉には出さなくとも、心の叫びが剣から伝わってくる。そんな気がしてならない。


 叶うことならジークの力になりたい。自分は全てを失ってしまったが、この少年もそうとは限らない。


 そう願わずにはいられなかった。




✳︎✳︎✳︎✳︎




 厚い氷で覆われた運河。その至る所で氷がひび割れ破損していた。戦いの熾烈さを物語っているかのように。


 氷上の上に立ち、向かい合う両者。直立している様子は疲れを感じさせないが、両者の足元には赤い花が咲いていた。


「タノ、シカッタゾ、コゾウ……」


「それは良かったな。冥土の土産には十分だろう」


 手に握られたのは剣と槍。込められたのは意思と狂喜。互いの存続を懸けた最後の衝突。同時に駆け出す二人。


 中距離を得意とする槍に対して剣で挑むのは得策とは言えない。リーチを活かした攻撃を前に剣では分が悪いからだ。――通常なら。


 持ち前の身体能力と戦闘技術を使って一気に射程の内側へと入る。長柄武器の構造上、近付かれる程扱いが難しく、不利になるのは上級者でも同じであった。


「アマイナ。ソレデカッタツモリカ」


 槍による突きは不発に終わった。だがブラッドの持つ槍は普通の槍ではない。意思に反応し生成される怨嗟に塗れた真槍。それを反対側の手に、従来よりも短く生み出すことなど、たわいもなかった。


「モラッタ……!」


「それが奥の手か? 情けない最後だな」


 槍でジークを貫く、否貫いたかのように見えたが、ジークの姿は忽然と消えてしまう。


「ナ、ンダソレハ?」


 不意に姿を現す黒髪の少年。忽然と消え突然背後に現れたジーク。右手には既に力が込められていた。


 賢者の扱う転移魔法。空間を越えるその魔法は己の魔力の大半を消費して、任意の場所に移動する高等魔法に分類される。

 三年前のユニゾンリンクでその力の一端をジークは手にしていた。扱いやすいよう改良を重ね、戦闘向きの魔法へと昇華させる形で。


「隠し事があるのは貴様だけではない」


 右手に宿る冷き波動。発勁を思わせるその技はジークが得意とする体術技であった。


「グ、グァァァァーー!」


 背後を取られまいと強引に体を捻るブラッドだが、正面を向くので手一杯であった。その正面には既に悪役がいた。


「実戦で使うのは貴様が初だ。光栄に思え」


 冷き波動と混ざり合うように()()の光が満ちてゆく。

 邪を祓う銀の輝き。それは死者の怨念にも効果は絶大であった。


「もう二度と俺の前に現れるなよ。負け犬にはあの世がお似合いだ。――振衝波・白銀」


 足元の堅氷を砕きながら吹き飛ぶブラッド。戦いの過程で生まれた氷壁さえ粉砕しながら飛んでゆく。

 終いには暴発した銀の輝きに呑み込まれてしまう。

 

 消えることのなかった夜叉の怨念。長きに渡りこの世に存在し続けた戦鬼の魂は、悪役の手によって完全に消滅した。




✳︎✳︎✳︎✳︎




 激しい戦闘により喧騒に包まれていたワーテル。戦いの終わった現在は不気味なくらいに静まり返っていた。


 氷上をゆっくりと進むジーク。物珍しさから歩いているのではなく、戦いの成果を確認するために歩を進めていた。


 たどり着いた場所は凍りついた運河の端である。思った以上に吹き飛んだことから内心焦っていたのだが、中身は問題なく無事なようである。


 戦闘の影響により重傷を負っていたはずだが、流血どころか傷一つない。成果は上々であった。


(ぶっ飛ばしながらも傷は完全回復。とんだ脳筋技だな)


 改善するべき点は多くあるが、実績を作れたという点は何よりも大きい。今回の収穫としては十分であった。


 呪いの装備に囚われていた中身の人間。生きているなら放っておこうと考えたが、砕けた氷がパウダー状となり顔を含む体を覆っていた。


(窒息して死んだとして……呪われたら嫌だな)


 ただでさえ呪われているような状況下で、これ以上ハンデを背負う訳にはいかない。

 自分本位な理由で最後の手助けをすることにした浩人。


 風魔法で雪を飛ばす。傷付けないよう細心の注意を払いながら。

 

 ――現れたのは浩人がよく知る人物であった。


(――は? 何だよこれ。どうして、こいつがここに。……こんな設定、俺は知らない、聞いてないぞ)


 屈強な男性かと思われた中身は大きく異なり、華奢な少女であった。

 青く長い髪に大人びた顔立ち、少し気の強そうな印象。

 原作で登場した主人公パーティの一員でメインキャラでもある女性。出自の関係から持つ豊富な知識に高い戦闘能力。ゲームではシエルの側近であり護衛を務めていた。


「セレン・ブルーム……か。どこまでもこの世界は俺を否定するか」


 ジーク(浩人)と五人目のメインキャラと邂逅の瞬間であった。

 

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