表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
やがて始まるリベリオン  作者: 塚上
第一章 悪役として
4/145

第三話

 作中でも語られていたがラギアス家は領主貴族であり、悪徳貴族でもある。領民から高い額の徴収を行い贅沢の限りを尽くす。つまり金はある。

 領民のことを思えば申し訳ないが、こちらも命がかかっている以上、手段を選んではいられない。領民から得た金を使ってジーク強化計画を始める。


 浩人が考えた計画は腕の立つ武人に報酬を払って指導をしてもらう。つまり家庭教師を雇うことだ。

 原作知識があるとはいえ平和な日本にいた浩人に戦闘の経験は全く無い。素人が下手に動いたところで結果は目に見えている。ならばセオリー通りにいこうと考えた。

 しかし名高い人物への依頼となればそれなりの額が必要となるが、そこはラギアス家。

 度が過ぎた徴収はもはや御家芸と言っても過言では無いため金銭的には問題無かった。


「貴族の一人として武を磨きたいか――。やっとジークも自覚を持ってきたようだな」


「いいじゃないですかアナタ。文武が優れてこそのラギアス家ですわ」


 文武じゃなくて金のラギアス家じゃないかな?と思う浩人だったが、都合が良いので黙っておくことに。

 懸念していた両親への説得もすんなりといき、あとは話が纏まるのを待つのみになった。


 指導者が決まった。父親によるとこの国の元騎士で、今は引退しているブリンクという人物らしい。

 少し警戒していたが、原作で聞いた事がない名前のため胸を撫で下ろすことができた。

 ここからやっと始まる。何がなんでも生き残ってみせると意気込む浩人であった。




✳︎✳︎✳︎✳︎




 ディアバレト王国。

『ウィッシュソウル』に登場する国の一つであり、主人公達が所属する国でもある。

 今回ラギアス家に雇われたブリンク・ハルトマンはこの国の元騎士団連隊長で、今は前線を退き引退していた。

 年齢は三十代後半で、細身ではあるが、鍛え上げられた体が目を引く。一般人から見ても、武を嗜む人物であることが容易に想定される。

 年齢や身体的にも特に問題なさそうなブリンクがなぜ騎士団を離れているのか。

 彼には彼なりの事情を持ち合わせていた。


 ブリンク・ハルトマン。

 騎士団へ入団後、各任務を順当にこなし実力を重ね、順当に昇格を果たした。

 剣の腕は勿論、人格、知力にも優れ、騎士団内外からの信頼も厚く若くして連隊長にまで上り詰めた。

 私生活では妻と出会い結婚後子宝にも恵まれた。仕事とプライベート、どちらも充実した毎日を送るブリンク。

 しかし順風満帆かと思われた矢先に悲劇が訪れる。最愛の妻が急死したのである。

 元々体が弱く出産後も体調を崩す事が多かったが、それでも少しずつ回復の兆しは見えていた。

 妻との急な別れにブリンクは途方に暮れ己を責め立てた。何故もっと家庭を顧みなかったのか、妻を気遣うことが出来なかったのか。

 自己嫌悪に陥り、騎士団の職務どころではなくなっていた。

 

 そんなブリンクが自分を見失わずに立ち直ることが出来たのは息子の存在が大きかった。

 母親譲りの金髪で柔和な笑顔が特徴的な男の子。

 家族を失う気持ちはもう二度と味わいたく無い。なにより息子に辛い思いはもうさせない。

 家族と騎士団。どちらも何があっても守り抜くと心に刻みより一層職務に励む。

 息子も健やかに成長し、十一歳になった。

 将来は騎士になると意気込む息子を見て心が温かくなる。共に職場で肩を並べる日もそう遠くはないかもしれない。

 (私はもう間違えない)

 

 ――しかし悲劇は再び訪れた。

 最愛の息子が病に倒れたのである。母親と違い息子は病弱ではなく今まで大きな病気もない。

 季節性の風邪かと初めは考えていたが快調の兆しは見えず、日に日に体調は悪化していった。

 複数の医者に見せたが原因が分からず根本的な治療を施すことが出来ない。

 元気に駆け回っていた息子だがベッドで一日を過ごすことが多くなってきた。

 

 職務の傍ら病気や治療法の調査を行う。多くの医療関係者へ協力を仰ぎ治療の糸口を探したが好ましい結果は得られず、時間だけが過ぎ去っていく。


 もはや騎士団と家族を両立させることは難しく決断するしかなかった。

 結果的に周囲の反対を押しきり騎士団を退団したブリンク。全ては最愛の家族を助けるために……

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ