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やがて始まるリベリオン  作者: 塚上
第一章 悪役として
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第二話

 RPGゲーム『ウィッシュソウル』。家庭用ゲーム機で販売されていたゲームソフトで王道かつ緻密に練られたストーリー、爽快感の中に奥深さがある戦闘を楽しむ事ができ、浩人が何度もプレイした作品だった。

 

 世界観はいわゆる剣と魔法の世界で中世を思わせる時代をモチーフにした内容。分かりやすい舞台設定がよりハマるきっかけとなっていた。

 ストーリーは主人公を中心としたパーティメンバーにスポットを当て展開される。出会いや別れを通じて成長し、国や組織、立場の違いによる衝突、善悪の狭間での葛藤を描く。まさに王道をゆくRPGだった。

 

 では作中のジークはどのようなキャラクターだったのか。分かりやすく言えば悪役となる。

 主人公や主要人物達と事あるごとに対立し、時に戦闘に発展することからボスキャラクターの一面も持っていた。

 

 作品によっては魅力的な悪役も登場し、時折人気投票の上位にランクインすることもあるが、残念ながらジークにはそういったことは皆無だった。

 ジークは主人公達と直接または間接的に様々な因縁を持ち合わせている。主人公の家族を襲撃、ヒロインを拉致、騎士団を私物化、街一つを住人ごと消滅させるなどあげたら切りがなく、悪行の限りを尽くした。

 

 最終的には主人公達との戦闘で死亡するが、プレイヤーからすれば溜飲が下がるとは言い難い。ストーリーの進行上悪行を未然に防ぐ事は出来ず、退場は物語終盤のため繰り返し登場することになる。

 プレイヤーの総意で『悪逆非道』認定されるのは当然であり、浩人も同じように感じていた。王道だからこそ分かりやすい悪役が必要だったとも言えるが。

 

 だがここは『ウィッシュソウル』の世界で、今はジークとして現実を生きている。ストーリー通りだから死んでも仕方が無いでは済まされない。

 原作通りに進めば確実に死ぬことになり、各方面に敵を作り過ぎていることから、シナリオ度外視で襲撃を受ける可能性もある。

 

 色々な不安要素が頭をよぎり、もはや食事どころではなくなっていた。

 気づいた時は自室に籠り、頭を悩ませていた浩人であった。


 改めてジークがどのような人物か考えてみたが、やはり碌でもない人物だった。

 堂々巡りのため別の観点から考察を進めることに。

 

 まず初めに口調についてだ。ジークに憑依して何度か言葉を発したが、かなり強い口調、というよりジークが言いそうなセリフそのものだった。

 これはおそらくだがジークのキャラ設定が守られている――いわゆる世界の強制力のようなものが働いた結果、もしくは本来のジークの意思がそうさせているかのしれない。

 

 どちらにせよこのまま流れに身を任せていれば死亡エンド確定である。

 第一目標としては死なないこと、世界の強制力やシナリオに抗い物語クリアを目指す。

 決意を新たに浩人は行動を開始するのだった。


 とはいえジークは現在十二歳。ゲーム開始まであと五年はあると思われる。

 理由はジークと主人公は同い年で、ストーリー初期の主人公の年齢も十七歳だったからである。

 この五年間を有意義に使う事が出来れば生存確率も大きく上がる。

 原作とこの世界の関係性や主要人物達の動向、そして特に重要なのが戦闘技術の向上である。

 

『ウィッシュソウル』 は剣と魔法の世界である。ゲームと大きな乖離がなければ、剣を振り、魔法を行使して人や魔物と戦う世界だ。

 現代日本とは違いただでさえ死が身近にある現実。なによりジークに憑依してしまったため下手をすれば世界中を敵に回す恐れもある。他人を頼れない以上、自分でなんとかするしかない。

 第一目標をクリアするためにも、先ずは強くなる。理不尽な現実(シナリオ)を変えるほどの力を手に入れる。

 

(たとえ何かを犠牲にすることになったとしても……)

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