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やがて始まるリベリオン  作者: 塚上
第一章 忌子との邂逅
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第九話

 朝の鍛錬を終えてラギアス邸に戻ったジーク(浩人)。朝食に遅れたらまた小言を貰うことになるので時間は厳守していた。

 

 食事の場でラギアス夫婦の会話が気になった。


「近々ノルダン原野に兵を出す予定だ」


「この前お話にあった魔物の件ね。物騒ですわね」


 ノルダン原野。ラギアス領に含まれる広大な大地を指している。土壌の関係で農地に適さないことから長年最低限の整備で済まされていた。

 

 今回兵士を派遣するに至った理由は魔物の被害が発生したからである。原野に住み着く分には大した影響は無いと考えていたフールだが、魔物の生息地が街道付近まで広がり領民に被害が出た。

 

 自領の民がどうなろうと構わないが、貴族や他領の領民に被害が出ればラギアス領の面汚しになる。重い腰を上げた理由が面子を保つためであった。


「被害が拡大すれば後々厄介になるかもしれん」


「不毛な土地なのに。面倒なものですわね」


(被害が出る前に日頃から管理をするべきだよな、普通)


 長年のツケが回って来たと考える浩人。

 ラギアス領主は基本金にならないことはやりたがらない。そんなフールが動くということはそれなりに魔物がいるのかもしれない。


「全くもって忌々しい限りだ。癪だが分隊を派遣する。不要な金がかかるな」


「いいと思いますよ。最低限で」


(仮にも被害が出てるのに分隊でいいのか? 十人もいないんじゃ)


 広い原野を分隊だけでカバー出来るのか。そもそも下手をすれば魔物の発見すら難しいかもしれない。戦闘になれば数的不利で返り討ちになる可能性もある。


「父さん、ちなみに魔物はどんなヤツが出たの?」


 家族の前では口調が変わる。平常運転だった。


「ブリーズイタチの群れらしい。……まぁなんとかなるだろう」


(なんとかなるわけないだろ! 的にされて終わりじゃないか)


 ブリーズイタチ。群れで行動する小型の魔物である。

 小さな体格のため力は強くないが、厄介なのが風魔法を使える点になる。


 人と同じように魔法を使える魔物も多く存在する。種によって威力や属性は異なるがブリーズイタチは風魔法に長けている。

 

 一発当たりの威力は低いが群れで連携して放つ風魔法は脅威となる。しかも見通しの良い原野では遮蔽物が少なく、魔物の方は小柄なため茂みや穴に潜むことができる。

 不利な地形で少人数による戦闘。どう考えても逆に被害が拡大するだろと心の中でため息をつく浩人。


 これではこちらが見限る前に家が潰されるのではないかと不安になる。原作ではラギアス家は存在していたが、ゲーム通りになるとは限らない。シナリオ脱却を目指す以前の問題だ。


「俺もその分隊に参加してもいいかな?」


「ジーク、お前がか?」


「何でまたそんなことを?」


 夫妻にしてみれば何故息子が不要な遠征に参加するのか理解出来なかった。


「ノブレスオブリージュ。貴族として必要なことだよ。それにこの歳で遠征に参加してれば箔が付くでしょ?」


「――ジーク。色々と分かってきたようだな」


「子供の成長は早いものですね、あなた」


 何が分かってきたのか浩人にはさっぱりだったが、話が纏まりそうなので良しとする。


「参加を認めよう。ラギアス家次期当主としての務めを果たせ。……だが念のため人数は増やすことにする」


「しっかり頑張るんですよ」


 子を思っているように聞こえるが、ラギアス家としての知名度が上がることや跡取り不在の事態を避けるのための処置に過ぎない。

 利や体裁を考えた自分本位の思惑が見て取れるが、それはお互い様だった。


(恨みっこ無しだ。それくらいがちょうどいいだろ?)


 ジーク(浩人)の遠征参加が決まった。

 前回と違い混戦が予想される。これを上手く捌ければ生存へまた一歩近づくと意気込む浩人であった。

 

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