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若いっていいね

「よし、じゃあ美月、俺の背中に……って、お前に何やってんだ?」


 見ると美月は必死に体育用のTシャツの前を押さえている。和人の問いに美月は恥ずかしそうに応える。


「だって、その、押さえてないと見えちゃうから……」

「見えるって、何が見え……」


 そこまで言って和人は言葉を飲み込む。そうだ、美月が翼を出したということはTシャツが肩甲骨の辺りまでせり上がってしまう。


 後ろ側が上がれば当然前もそれだけ上がるがそんなに上がってしまえば当然、美月の上に着けている下着が丸見えになってしまうわけで、和人は本日何回目かもわからないほどたくさん赤面と平常をくり返してきたがここにきて再び羞恥心で顔が赤くなりそれと同時に三メートルほどいっきにずり落ち美月が小さな悲鳴を上げる。


 和人が慌ててもう大丈夫だから羽をしまうよう言うと美月は翼を体の中へと収納する。


 それからは美月が和人の背中におぶさるような形になり和人が崖を落ちてきた分だけ登り、何とか上に戻ることが出来たがそこでもう一つの問題に気付く。


「やべっ! このままじゃ集合時間に間に合わねえぞ!」

「どうするの?」


 和人は右手を額に当てて考えていたが仕方ないかとため息をつく。


「もうこれっきゃねえだろ、でもまあ、七割で十分か……」


 そう言って和人は突然、獣のようなうなり声を上げる

 和人は時間の歩みに比例してその姿を変えていく、Tシャツと短パンから見えている手足には黒い毛が生えそろい指先にはナイフのように鋭い爪が生え、筋肉も二回りは大きくなる。目は青白く光り、口には鋭くたくましい犬歯が二本見えている。顔つきこそ変わっていないが発している空気は怪物(モンスター)そのものだ。


「いくぞ」

「……えっ、ちょっ、ちょっと……」


 和人は美月を抱き上げると大きく跳躍する。

 二人は弾丸のように空へと舞い上がりまるで空を飛んでいるかのようにすら感じる。


「すごい! 和人君すごいよ、飛んでいるよ!」

「飛んでるんじゃない、跳んだんだ」

「だから飛んでいるんでしょ?」

「……まあいい、そろそろ落ちるぞ」


 和人がそう言ったほんの二秒後、上昇が止まると今度は一気に下降する。森の木々に足が触れると再び跳躍し、そうやって一回の跳躍で一〇〇メートル以上も移動しながら二人は超高速で集合地点に向かい、美月はジェットコースターにでも乗っているようなその感覚にややはしゃぎぎみに喜び、そのせいか和人に抱き上げられている事実に恥ずかしがるのではなく、好きな男子(ひと)の顔をこんな間近で見れるのと合わせて純粋に喜べた。


 そして美月は言う。


「すごい、やっぱり和人君大好き」

「なっ!?」

「あっ……」


 途端に和人は体勢を崩し変な姿勢で落ちるが慌てて体勢を立て直し何とか着地し再び跳躍するのに成功できた。


「ばっ、ばかやろう! 急に何言い出すんだ!? 着地失敗するところだったぞ!」


「ごっ、ごめんなさい……」


 二人は恥ずかしそうに赤面したまま集合場所の近くまで行くと和人は人間の姿に戻りクラスメイト達と合流するが恥ずかしそうに顔を赤らめまま二人揃って遅れて登場したため大半のクラスメイト達は無駄にたくましい想像力で勝手な妄想を膨らませるのだった。




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