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月人の記録参 追伸
炊事遠足の日の夜、美咲は自室のベッドの上に枕を抱えながら座り、今日あったことを順々に思い出す。
月人と額をあわせた感触、月人の料理の味、トイレで月人に思い切り抱きついたこと、そしてなによりも自分を闇の眷族から守ってくれた姿。
彼女はうしろにぱたんと倒れると白い天井を見る。
「……月人くん」
だがそこで美咲はある重大なことに気付く。
「あれっ? そういえばあたし、トイレから飛び出して月人くんにしがみついたとき……」
蛇口は外についている、手を洗っているわけがない。
「っっ!?」
途端に美咲の顔が首元まで赤くなり枕を天井まで跳ね飛ばし叫ぶ。
「お願い月人くん、気付かないでぇーー!」
下の階で両親があいつは何を叫んでるんだと言っている頃、月人は。
「あっ、そういえばトイレであいつ……」




