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懐かしい再会

 炊事遠足が終わったその夜、美咲は自室で一人月人に思いをはせていた。


 自分を闇の眷族(ダーカー)から守ってくれた時の月人、美咲の心境の変化のせいか、月人に会ったばかりの時に助けてもらった時とは違った魅力を感じ、なによりも自分を助けるために戦ってくれたという事実の嬉しさが何倍にも感じられる。


 暴走した結衣の攻撃から守ってくれたことを数えればこれで美咲は月人に三度助けられたことになる。


 美咲はまだ夏でもないのにやたらと熱っぽい額に手を当てた。


 最初はほんとにただ自分がソルジャーになるための手伝いをしてもらおうと思っただけだった。


 でも月人は家族以外でソルジャーのことを話せる最初の友人で、毎日修行をつけてもらって、一緒にモンスターを倒して、何度も助けられて……結衣にはずっと否定してきたが本当は自分でもわかっていた。立花美咲は夜王月人のことが好きだった。


「月人くん……」


 少女は窓のベッドに寝転がり、窓の外を眺めながら涙を流した。



   ◆



 同じ頃、洋介は夜王家に招かれ居間でちょうどお茶を飲んでいた。


「本当に久しぶりじゃねえか、三年ぶりか?」

「ああ、和人も光一もうまくいっているようで安心した……やはり、俺だけがうまくいっていないわけか……」


 それを聞くと和人の表情が曇り、重い声で言った。


音夢(ねむ)……まだ見つかってないんだな……」


 その問いに洋介は遠い日をなつかしむように眼を細める。


「ああ、本当に困った奥さんだよ、一緒にいると迷惑がかかるって言って飛び出してもう一〇年……本当に長い、長すぎてこの眼を完全に使いこなすどころか機能以上の性能を発揮させるに至っているよ」


 そう言って洋介が右目を指差しそれと同時に洋介の右目が赤く染まる。


「っっ!? なんですかそれ!?」


 月人はおもわずお茶を噴出しそうになりながら驚きの声を漏らす。


「義眼だよ、俺の右眼は一〇年前に失われている。これはその代わり、霊力を集めることで死角の物まで見たり霊子の流れを細かく分析できる、使いこなすのが少し難しいが、もう完全に体の一部だよ……」


 洋介の紅い眼はグリグリと動き辺りを見渡すと元の色に戻った。


 ちょうどそこへお茶菓子を持った美月が居間に入ってくるがそれを見ると月人は立ち上がり廊下へ向かう。

「俺はいいよ、久しぶりに会って話したいこともあるだろうし、あとは三人で昔話でもしててくれ」

「そう? じゃあお言葉に甘えて……」


 美月はお茶菓子をテーブルに置くと空いているスペースに座り、二人とおしゃべりを始めた。


「はい、じゃあ暗いのここまで、洋介君もしばらくこっちにいるんでしょ? 明日みんなでこの町を周りましょう」

「それもいいなぁ、どうだ洋介?」

「そうだな、この町も久しぶりだ。少し周ってみるのもいい、何よりも和人達と一緒にいると飽きないからな……」


 月人は居間を出るとき、ふと和人の飾った結婚式の時の写真が視界に入った。


 和人と美月を祝福する人達の中、森の中で会った時よりもはるかにやわらかい雰囲気の洋介が笑顔で二人を見ていた。


 その様子は今の洋介と少し似ている気がする。


 戦っている時の洋介と和人達と話している時の洋介の違いに月人は戸惑いつつも、三人の様子を羨ましく思い、自分も大人になったら美咲や結衣、真二たちとこういう関係になるのだろうかと想像する。


 そして居間を出る直後にもう一度だけ結婚式の写真に写っている幸せにそうに笑う美月を見た。


 廊下に出ると月人は静かに呟いた。


「大丈夫、俺は災厄にはならない、俺は、救いになってみせるよ……」


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