和人の記録参 追加報告
何故俺はあいつと話してしまった。
何故俺はあいつを好きになってしまった。
何故俺はあいつを逃がした。
何故俺はあいつを殺せなかった。
二〇三五年、黒塚奏蓮はまだ一〇歳の少年だった。
彼は当時、とても明るく、友達もたくさんいた。
毎日クラスの友人達と一緒に学校の授業を受け、放課後になるとみんなでサッカーやテレビゲームをして遊び、毎日を笑って過ごしていた。
この時の奏蓮はモンスターを憎んではいなかった。
彼の母方の祖父は優秀なキラーで、数え切れないほどのモンスターを殺してきたが、それだけに自分の仕事の危険さを知っており、娘には女としての普通の幸せをつかんで欲しいと奏蓮の母に戦士として修行を受けさせず、孫である奏蓮自身にもモンスターとは関わりの無い一般人としての人生を求めた。
と言っても血は争えず、奏蓮は生まれながらに類まれなる霊力を持っており、よく悪霊達に狙われたため、自衛のためとしてのトレーニングだけは祖父から教わっていた。
祖父は、ただ弱い魑魅魍魎から身を守るためにと教えたものだったが少年の好奇心や冒険心、そしてヒーロー願望がそれを許すはずも無く、奏蓮はその力を使って積極的に悪霊や妖怪、時にはモンスターを影で倒し続け、力を磨いた。
もちろんそれをクラスの友達に言ったりはしない。
言った所で信じてくれるはずもないが、逆にみんなが知らないことを知っている、みんが持っていない力を持っている。
それだけでも自分が特別な存在のように思えて子供っぽい優越感に浸れたし、何よりもテレビの特撮物はとっくに卒業しているがみんなの知らない所で怪物を倒す姿こそ、クラスの男子みんなが夢中になっている少年漫画の主人公のようで奏蓮は嬉しくてたまらなかった。
でもまだ足りない、どんな少年漫画の主人公だって最初は一人で戦っていてもそのうちに仲間とかライバルができて、つまり、一緒に戦う者や自分の勝利を唯一賞賛してくれる存在が現れるものだ。
でも奏蓮にそんな者はいない、人知れず化物を倒してみんなを守る、確かにかっこいいかもしれないが、これではただの自己満足のようにも感じれる。
自分が危険な目に合うのを良しとしない両親や祖父は論外、となれば自分以外にモンスターの存在を知る者、できれば一緒に戦えるだけの戦闘力を持った者がいいと思い探し続けた。
しかし、残念ながら彼の通う小学校には高い霊力を持つ者がいなければ亜人間もいなかった。
彼女が来たのはそんな時だった。




