親への告白
「やれやれ、あいつも大変だな」
「そうね、そういえば和人君」
「んっ、なんだ?」
「和人君は私と付き合っているのお母さんとかに言ってるの?」
「親に? 言ってないぞ、美月は?」
「実は私も言ってなくて、でもなんで言わないの?」
気まずそうに尋ねる美月に和人はお前もかよという顔をする。
「うちの親父のことだから俺に彼女が出来たなんて言ったら根掘り葉掘り聞いてくるだろうしお袋はおおはしゃぎで赤飯炊くだろうからな、そういうのうっとうしいんだよ」
美月は頭の中で和人の両親のテンションの高さと陽気さを思い出しながら小さく笑った。
「あたしの場合は逆ね、お母さんは問題ないと思うけどわたしが和人君と付き合ってるなんて言ったらお父さん銀の剣もって和人君を殺しにいくかもしれないし……」
今度は和人が美月の父親のことを思い出す。
普段は冷静で優しいマイホームパパだが美月が恋愛関連の単語を口にするたびに血の涙を流しながら「まだ美月ちゃんには早い!」と叫びながら美月に飛びつく、確かにあの父ならば自分の首を斬りに来るかもしれないと和人は二、三度震える。
すると美月が少しの間、何かを考えるような顔をしていたが。
「あたしお父さんに言ってみる」
「ぶほぁああ!」
和人が口の中のコーヒーを派手に吹いてむせる、寸前で横を向いたので美月は無事だがかわりにすぐ横を通り過ぎようとしていた洋介に直撃、制服がコーヒーで濡れて体にぺったりと張り付いてくる。
その姿に中年主婦達の眼光のギラギラ度が三割増しになる。
洋介は悲鳴を上げながら控え室に駆け込んだ。
「ちょっと待て美月、そんなに俺が憎いのか? 俺殺されるっての!」
「うん、でもやっぱりこのままじゃダメな気がするの、確かにお父さんは反対するかもしれない、でもいつかは言わなきゃいけないし……それに聞きたいこともあるの……」
その言葉に和人は言葉を失う。
黒塚奏蓮が言っていた言葉、自分と美月が付き合うと世界が滅ぶ、あの時は人外を憎む者特有の皮肉だと思っていたが今から思えばただの皮肉にしては大袈裟すぎる、人狼と吸血鬼が付き合うと何か悪いことが起こるのか、両親ならばなにか知っているのかもしれない。
「そうだな、じゃあ俺も今夜親父に言ってみるか」
「うん、それに……やっぱり和人君とは親公認で付き合いたいから……」
恥ずかしそうに頬を染める美月の姿に和人は撃ち抜かれた。
マズイ、今の美月はかわいすぎると和人はこの場で美月を抱きしめキスをしたい衝動と高鳴る心臓を押さえつつなんとか今日のデートを済ませることに成功した。
◆
夕食後、和人の父、夜王牙人が新聞を読みながら和人に問い掛ける。
「なあ和人、お前まだ夜主の嬢ちゃんに血い吸わせてるのか?」
「ああ、やっぱ俺の血って絶品らしいぜ、今でも昼休みの度に吸わせてるし休みの日も結構一緒に遊んでるから、そん時に吸わせてる」
牙人は珍しくやや心配するような口調になる。
「あのなあ、あまりこういうことは言いたくないが、もうお前も高校生なんだ、好きでもない女の子にそう毎日抱きつかれて首を噛まれるのはまずいだろ?」
好きでもない女の子、その言葉が和人の胸に突き刺さる。それで和人は腹が立ち少し強めの口調で言う。
「あのなあ、親父とお袋にはだまってたけど俺と美月はなあ……」




