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月人の記録弐 追伸
月人が家に戻ると美咲を送る途中に彼女に言われた事を思い出す。「でも冬毛で暖めるなんてよくおもいついたね」思いついた。違う、月人は知っていただけだ。そうなぜなら。
「ふぅ、今夜は疲れたぜ……」
「お疲れ様、お父さんもさっき帰ってきたばかりよ」
ガチャリとドアが開く音のするほうを見ると寝巻きに着替え終わった和人が台所に入ってくるところだった。
「なんだ月人、随分遅かったな」
「友達送ってたんだよ、寒いとか言うから背中に冬毛生やしておぶってった」
それを聞くと美月は小さく笑う。
「冬毛、あれあったかいのよねえ、ねえ和人君、今夜寒いから久しぶりに暖めて」
「そうだな」と言って和人は人狼化すると上の寝巻きを脱いで美月を抱きしめる。すると美月は顔をほころばせ和人の胸に顔をうずめる。
「ふぅ、やっぱりもふもふしてて気持ちい……」
子供二人の目の前でいちゃつく親の姿に月人と夜風は呆れ、沈んだ顔で台所を出た。
「月人、あなたあの二人のためにがんばれる?」
「……自信ない」




