表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

35/56

愛の告白

 地面に着地すると真二が恥ずかしそうに赤面しながら結衣に聞く。


「あ、あのさあ、さっきの返事だけど、結衣は僕のことどう思ってるの?」


 その言葉に結衣は戸惑い、美咲や月人、夜風の顔を見るが三人とも笑顔で応えてくれた。


 結衣はその笑顔に勇気をもらい真二に言った。


「真二君、私、()江島(えじま)結衣(ゆい)は、浅野(あさの)真二(しんじ)君のことが大好きです、これから、よろしくお願いしますね」

「うん」


 そう言って二人は温かい笑みで抱き合い優しいキスをした。


「ふう、よかったぁ、浅野くんが結衣ちゃんのこと好きで、あたしどうやって浅野くんに結衣ちゃんのことを好きなってもらおうかと悩んでたけどその心配もなかったみたいだね」

「「えっ?」」


 と月人と夜風が同時に言う。


「立花さん、気付いてなかったの?」

「俺はてっきりジョークだと思ってたんだけどなぁ」

「えっ、えっ、二人とも知ってたの? どうしてぇー!?」

「あのなあ、男が好きでもない女をいじめから守ったりするかよ、浅野は小さいときからずっと結衣のことが好きだったんだよ」


 続けて夜風が。


「それに、あの状態の彼女を見てすぐ差江島さんてわかるんだから、だいいち好きな子のためでもなければあんな危険なこと自分からするなんて言うわけないでしょ」


 美咲が「え~」と情けない声を上げてうなだれる。


「そんなぁ、じゃああたし一人だけわからなかったのー!? ショックぅ……」


 月人がやれやれとばかりにため息をつくとそろそろ帰るかと歩き始める。

すると結衣が「待って」と言って美咲の腕を掴み月人達から少し離れたところまで行ってひそひそと小さな声で美咲に問い掛ける。


「ねえ、美咲ちゃんは月人君に告白しないの?」

「ひえっっ!?」


 赤面し慌てふためく美咲に結衣がさらに追求する。


「あれ? 違うの? 私はてっきり美咲ちゃんが私を参考にして月人君に告白するんだと思ってたんだけど……」

「ちっ、違うよ! 月人くんは目標って言うか師匠って言うか、とにかくいつかあたしの手で倒す相手でそんな好きとかじゃないの!」

「そうなの?」

「そうなの! もうっ!」


 美咲が頬を膨らませて子供っぽく怒ると月人の呼ぶ声がする。


「おーい、何やってんだ立花?」

「あっ、ちょっとまって」


 美咲と結衣が月人のもとへ戻ると月人が結衣に向かって言う。


「そうだ、さっき父さんに連絡してお前の両親にお前が戻ってきたこと伝えてもらったからたぶんもうすぐ戻ってくるぞ」

「えっ? 夜王君のお父さんて私のお父さんの知り合いだったんですか?」

「ああ、さっき今回のことを伝えたら高校生の時からの友達だからって言ってた」


 すると夜風が思い出したように手を叩く。


「ああ、そういえばあなた小さいときに会ったことあるわ、だいぶ成長しちゃったから忘れてたけど、確か小さいときにお父さんが友達の子だって言って二口女の子供うちに連れてきたことあったもん」


 夜風に続いて月人も思い出す。


「そういやそんなことあったな」

「でも私あれからすぐに引っ越しちゃったから、でもお父さんがまたこの街で働くことになったからここの高校を受けたんです」

「そうか……っと、そろそろ帰らないと母さんが心配するな、じゃあまた明日学校でな」


 結衣と真二に分かれを告げると月人達はその場を去った。

 しかし歩き始めてから五分も経たないうちに美咲の歩が遅くなり、二人からだいぶ離れる。


「どうした立花、具合でも悪いのか?」

「うん、なんか寒くて、血が流れすぎちゃったみたい……」


 頭を抱えながら寒気を訴える美咲に月人はしまったと自分の額を叩く。


「そっか、そういや立花は人間だからな、傷はここまで飛んでくる最中に俺が回復術で治したけど、傷口が塞がってもなくなった分の血が増えるわけじゃないからなーー」

「今夜は妙に冷えるしね……」

「やれやれ、しょうがねえなあ、姉さん、俺は立花を家まで送るから先に帰っててくれ」

「わかった、ちゃんとエスコートしてあげるのよ」

姉がいなくなると月人は中途半端に人狼(ウェアウルフ)化し背中だけに毛を生やす。

「ほら、おぶされ」

「……うん」


 美咲はよろよろと歩きながら月人の背中におぶさる、それと同時に。


「!? おおぉぉお! あったかーい、何これぇ?」


 美咲は感動の声を漏らし月人の背中に顔をうずめる。


「冬毛バージョンだよ、寒さから身を守るために保温性に優れている」


 美咲は満面の笑みで月人の長く、もさもさとした毛を全身で感じる。


「えへへ、まふまふしてて気持ちい、手触りも最高だし」

「そりゃよかったな、こんぐらいならいつでもしてやるよ」

「ほんとう? じゃあ冬になったらいっぱい甘えちゃお」

「はいはいっと」


 二人の帰る様子、それを遥か上空から空間に不自然に浮かぶ黒衣の男が憎らしげに眺める。


「いらない(やおうつきと)


 黒衣の男は自分の胸元に触れる、その服の下には深い十字の傷がついている、月人の父、和人が美月に噛まれることで一時的に最強混合種(ヴァンパイアウルフ)の力を得た時につけられたものだ。


 黒衣の男の脳裏に美月の顔が浮かび、重い声で呟いた。


「あの女、とんでもないものを産み落としてくれたな……」



電撃オンラインでインタビューを載せてもらいました。

https://dengekionline.com/articles/127533/

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ