その情景は何よりも綺麗で(前編)
俺は学校から帰るといつもの様に、自分の部屋に直行しマイPCを起動した。
飯の時間だけAFKの表示を立て、速攻で胃へ流し込み1秒を惜しんで即座に復席する。
ここが俺の世界を言わんばかりに現実と仮想が交差するそのギリギリのその境界線に、友がいる、敵がいる、刺激がある。
フリーデン東区の歓楽街のすぐ脇にある寂れた通りに俺達ギルド『Andante』の本拠地が置かれており、ふらりと立ち寄るとロビーの脇にポツリと一人、女がいた。
オレンジ色のボブヘアーに魔女帽子がかわいらしい。
「こんにちわ、最近入った人だよね?ビビアンと言います、宜しくね」彼女の問いかけに俺も挨拶を返した。
真昼間からゲームをプレイしているような雰囲気から、夜勤の仕事をしている人かもしくは主婦かと、そんなことを考えたが、意外な答えが返ってきた。
「タカシさん、高校生なんでしょ?私中学生だよー」
俺とケイより年下がいるとは思っていなかったので、どこか嬉しかった。このゲームのこと、学校のこと、友人こと、取り留めのない会話で時間が流れる。
「ねえねえ、私この武器欲しい」少し打ち解けてきたと思ったら彼女がせがんできた。狙ってかそうでないかは俺には分からなかったが、見てみるとお高そうだ。
【死者の杖】
HP+200
Mana+250
魔力+120
魔法防御+25
死者の魂を留める効果がある。
魂は結晶化し、様々な用途に用いることが可能。
「さっき西区のバザー見てきたんだけど、50000ゴールドだって!値段交渉したかったけど、売り子の人AFKしてるから話できなかったし。私のお金じゃとても買えない」
何やら、相当欲しそうな様子に見える。しかし、俺だって5万もするアイテムは買えない。いや、買ってやる義理すらそもそもない。
もしこれが、リアル彼女やゲーム内での恋人関係?―――最近あるらしい。なのだとしたら、男気を示す意味でもプレゼントすべきなのかもしれないが、俺たち二人は今ほど出会ったばかりである。
「買えないなら、取りに行くってのはどう?」我ながら言い切り返しと、名案を述べたと思った。買えないならゲットしに行こう。冒険をすればいいのだ彼女を連れて。
「マジで!?取りに行くの手伝ってくれるの?嬉しい。場所は―――」
エメラルドマウンテン……、それはフリーデンからほぼ南西50km程に聳え立つ。東西に細長く伸び、日本サーバーエリアからはどこからでも見上げることが出来る。
そのため富士山の如く大自然の象徴とされ、その山頂から見える景色は、アンロード三景の一つに数えられる。




