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アンロード  作者: 影揺らぎノ尊
第一章
4/9

俺達のリーダーは

「聞いて驚け……俺達のリーダーはSランクなんだ」


ロビンは少し口角を上げへの字模様を形作り、そして誇らしげに……しかしどこか寂しげな影を落としながら語りだした。


「あいつは、とんでもなく強いぞ。俺と同時期にゲームを始めたってのにあいつはあっという間にSランクになり、

おれはまだBランク……そもそも持っているセンスが違うんだ」


「今だってきっとどこかで、狂暴なモンスター相手に大立ち回りしているに違いない」


 ロビンは今日は姿を見せない我らのリーダーに思いを馳せながら、遠くの地で活躍しているであろうその雄姿を二人に語り始めた……。











「第4階層はこれで制圧だ!」

深い闇に覆われているかのように錯覚する程の、漆黒の鎧に全身を包んだその男は、

威勢よく力強い振る舞いで全体に対して声を張った。


 一代勢力を誇る大手ギルド『Crystal(クリスタル) knights(ナイツ)』の軍勢……およそ20人が、未踏である古代遺跡にその傷跡を残すべく、歩を進める。


「セシル騎士団長……、あの宝箱はあなたの手で開けてください」

部下の声掛けに応じ、そっと蓋に手をかける。しかし、その厳かに黄金色を放つその宝箱の中身は……何もなかった。


「ここも既に先を越されていたか……」

顔をしかめながら、苦悶の表情を思わず浮かべるセシル。


「赤翼…レッドウイングスの連中にまた先を越されましたかね」

と彼の右腕のような存在である回復魔導士のセレニーが、彼の気持ちを汲んでか、優しく話しかける。


「たまには古巣の方……顔を出したらどうなんですか?」


「そうだな……、この地方のダンジョン探索があらかた終わったら、一度フリーデンに戻ろうかな」


「げえ、フリーデンって……、1000キロは離れてますよ……何か月かかるんですかそれ」

ほとんど帰る気がないとあきれ顔のセレニーに対して

「俺の足の速さなら1週間ダッシュしていれば着くよ、不眠不休でね」

と冗談を言い返す。


 セレニーの気さくな気遣いによって、セシルの気持ちは少し軽くなった。


「さあ……、今日はもう地上に戻って解散しようみんな」

メンバーの一人が、呪文を唱えると……辺りは黄色い光に包まれ、一向の姿は忽然と消えたのであった。











「よお、新入り」

一通り挨拶の済ませたところであったタカシとケイは、魔導士のカンタに話しかけられた。


「済まねえな……、せっかくの二人の歓迎会だってのに、リーダーが顔も見せずによ」

見ると眉をひそめており、申し訳なさそうな顔をしているのが見て取れる。


「いえ、そんなことは……」

タカシら二人は一応、気遣う姿勢は見せつつも、カンタの様子が気になるのでそのまま耳を傾け続ける。


「見てわかる通り、うちはメンバーも10人前後しかいない弱小ギルドだ。

だが別に上を目指そうとして、強豪校の部活動みたいに毎日歯を食いしばってプレイをするって方針ではない。

何人も何にも縛られず、方々のペースでこのゲームを楽しむ……そういった憲章を掲げこのギルドに属する俺たちは、それを実践している」


「……ただ一人を除いてな」

ゆっくりと椅子に腰を掛け、ポリポリと頭をかくしぐさを見せつけてくる。


「セシルさんは……どういう人なの」

一瞬、喋りが途切れたタイミングをついて、タカシは切り出す。

ロビンと彼の話から自分のリーダーに対して、あまり良くないイメージが固まりつつあることを懸念し、

それを少しでも払しょくしたい思いが確かにあったのだ。



「実は俺も数回しか会ったことないから、そこまでリーダーについて語れるわけではないんだが」

と、カンタは前置きしつつ更にセシルについての話を続ける。


「セシルは、とにかくこのゲームに対して情熱的な人だと俺は思う。未知のエリア……、未知のアイテムや強くなることへの執着が半端じゃない。

彼は大手『Crystal Knights』とギルドを掛け持ちで活動をしている……が、あっちでも最高幹部の地位に就いているようで、毎日何時間もそっちのメンバーと冒険をしている」


「そりゃあすごい。『Crystal Knights』と言えば『レッドウイングス』、『黒死会連合』と並ぶ3大ギルドの一角じゃないですか。

そこの幹部でもあるなんて……」

ケイ自体は、セシルに対して憧れの念がますます増加しているようである。


「元々ロビンとセシルの二人でこのギルドを発足したが……いつの頃から二人の歩む道がずれたのか。

ロビンはここのメンバーと同じく、まったりとこのゲームをエンジョイするタイプ。

一方、セシルはとにかく貧欲に上を目指すタイプ」



「俺は……俺達の本当のリーダーはロビンだと思ってるよ」

カンタは胸の内を吐露した。


「おっと……、少しお喋りが過ぎたな。別にセシルだって悪い奴じゃないんだ。

ただ俺達とは普段プレイするところの次元が違うってだけでね。悪いな、いきなりこんな辛気臭い話……。

とにかく、今後とも宜しくな」


何とも歯切れの悪い会話ではあったが、ケイは特に気にしていない様子である。

タカシもセシルの人物像についてよりは、Sランクのプレイヤーが一体どれほどすごいのか人物なのか……、

どんないかつい剣や煌びやかな盾を装備していて、どんなド派手な魔法や可憐な技を使うのか、そのステータスはどれくらいなのか……、

そんなことばかりが気になった。











二人の新人をこのAndanteの基地に迎え入れ、今日の自分の仕事は終えたとばかりに、

ロビンは2階の居室のベランダからふと窓の外に目をやる。

フリーデンのプレイヤー、NPCが散り散りに賑わう街並みを眺めなはいたが、その瞳はうつろいでいる。



セシル……

今日二人、Andanteに新入りが入ったよ。

片方はまだ初めて一ヵ月も経っていない初心者だ。


彼はすごく楽しそうにこのゲームをプレイしている。

俺とお前が、かつてそうだったかのように。


お前は今日も数多の軍勢で、高レベルのダンジョンでお宝探しかい。

良い装備、いいアイテムをしこたま携え、どこまで行く気だ。


ああ、今日もこの世界の空は青い。

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