ギルド『Andante』
毎日ログインしては、せっせせっせとフリーデン周辺の雑魚モンスターを狩ることで、
気が付けば俺もDランクに昇級していた。
俺もすっかりこのゲームにハマッてしまっており、日々満喫している最中だ。
タカシ(D-120)
HP114
マナ 81
攻撃 61
魔力 52
防御(物理) 26
防御(魔法) 24
早やさ 32
ケイ(C-50)
HP515
mana 340
攻撃 115
魔力 140
防御(物理) 82
防御(魔法) 78
早やさ 91
ランクの横の数字は各ランクでの到達度を表しており、モンスターやプレイヤーを倒したり、レアなアイテムを手に入れるなど
様々な功績を積むことでポイントが溜まる。どうやら1000ポイント溜まるとランクアップするようだ。
今日の冒険は、ケイの誘いもあって少し遠出をしている。
『ロードムのオアシス』、フリーデンから20km程南下したエリアに広がる砂漠地帯に俺達はいる。
サンサンと太陽の熱線が降り注ぎ遠方には蜃気楼が見え隠れするが、すぐ横には海岸線が広がっておりどこか涼しげだ。
フリーデンの南門から出発し、草原地帯を抜け、大きな川に架かる橋を渡り、寂しげな低木林の雑木林を超えて……
とこれまた結構な旅路だったが、街道を逸れることなく来たためか、道中特に危険な目には遭わなかった。
「ようし、出たぞ! サンドジャイアント狩りだ」
突然、砂丘が盛り上がり大きな人の形となる。
真っ黒な目と口を大きく見開いているそれは、体を横に大きく動かしながら俺たちの方に近づいてくる。
こいつを倒すと稀にドロップするアイテム、砂の指輪が今回のお目当ての品だ。
なにやら指にはめていると体が軽くなる効果を発揮するらしい。
「出るまで狩るぞ」
ケイが目をギラギラさせて意気込んでいるのを見て俺は、今日はきっと長い一日になると予感した。
砂の巨人……、サンドジャイアントの腕が大きく横に薙ぎ払われると、突然俺の画面にノイズが沸き起こる。
続けて赤く点滅が生じる。どうやらサンドジャイアントに殴られてダメージを受けているようだ。
ビービーと鳴り響く警戒音とともに、俺のHPバーは見る見るうちに80%を下回った。
「タクヤ、気をつけろ! こいつの飛ばす砂が目に入ると一時的に視界が遮られるぞ」
それを聞いておれはひとまず後方へ引き下がった。
数秒が経ちノイズが治まり視界が回復すると、その間ケイはサンドジャイアントの注意を引きつけ一人で戦っているようだった。
彼の水魔法、アクアボールがヒットする。どうやらこの全身が砂で出来たモンスターには水属性の攻撃は有効らしい。
低い声の断末魔を上げながら、サンドジャイアントの体は力なく崩れ落ち砂の海に帰した。
「ドロップアイテムは砂肉……ハズレだけど、食べると一時的に砂が目に入りにくくなるらしい。一応食っておこうぜ」
ケイの薦めで俺もそのグロテスクな見た目をしている生肉を一口抓んだ……。うーん、現実世界に存在したらきっと不味い。
そうこうしているうちにまたサンドジャイアントが出現する。
今の俺のキャラの強さでは真っ向から殴り合うと数秒で力尽きてしまうため、何発か右手に持っているアイアンソードで切りつけたら、
後ろに後退するという、俗にヒットアンドウェイと呼ばれる戦い方で応戦する。
20体程狩り終え、目的のアイテムも二人分ゲットしたので、そろそろ帰り時かと思案していたその時……ひと際大きく、茶褐色をしたサンドジャイアントが現れた。
「運がいいぞ!砂巨人のネームドモンスターのお出ましだ」
ケイが興奮した様子で言った。
砂王ザーレイン……、その赤黒い砂巨人の名前欄にそう表示されている。
通常のモンスター名ではなく、極稀にではあるがに固有名詞が付いた個体が出現することがある。
色や大きさ、形状が少し異なることが多く、
通常モンスターよりも手強い場合がほとんどらしい。
「でもなんかこいつ強そうじゃないか。俺達二人で倒せ……」
そう言いかけた瞬間、そのネームドの砂巨人はおれに重い一撃を浴びせた。
やられる……、ゲームオーバーを確信した時、俺の前に一人の人物が割り込む形で立ちはだかった。
青銅の鎧に身を包んだその大男は、左手の盾で砂王ザーレインの攻撃を受け止め、右手に持った斧で敵を切りつけた。
その斧は鉄製に見えるが、何やら赤いエフェクトを発しており、魔法を帯びているかのような雰囲気が感じ取れた。
更に俺の右斜め後方から、砂王目掛けて矢が颯爽と次々も飛んでいき、奴のHPはみるみるうちに削られていくではないか。
飛んでくる方へ視線を移すと、砂丘に身を伏せながら矢を放つフードを被った男がいるではないか。
「兄ちゃんたち、危ないところだったな!」
事後爽やかに挨拶してきたこの二人の助太刀のおかげで、俺たちは無事難を逃れた。
そして彼ら二人が一緒にパーティーを組もうと提案してきたので、
「喜んで」
と、俺たち二人は快くその誘いを引き受けた。こういった旅先での出会いはこのゲームの醍醐味で実に楽しい。
「俺はロビン。主にタンク役としていつも敵の攻撃を引き受けている。そして俺の相方の、ストームが後ろから弓矢で攻撃するって寸法だ」
眼帯をしたストームと呼ばれた男がおもむろに弓を取り出して見せた。
ロビンはBランク、ストームはCランクと俺達より格が上であったため、ケイと普段二人では手が出せないようなモンスターを狩ることが出来た。
「ねえ、よかったら俺たちのギルドに入らない?」
フリーデンの南門まで帰還後、別れ際に彼らのギルドに招待を受けた。
「いいですよ」
と俺達二人は二つ返事で承諾すると、何やら後日メンバーを集めてくれて歓迎してくれるらしい。
時は移って数日後…、フリーデンの東地区の一画にある彼らの拠点に俺達二人はお邪魔していた。
「ようこそ、ギルド『Andante』へ。君たちは13人目と14人目のメンバーだ」
ロビンが、何人かのギルドメンバーと出迎えてくれた。
「俺はキーン、そして横にいるのがレベッカ。リアル夫婦です」
「Andanteは元々、音楽記号なの。歩くような速さで……という意味なんだけど、
その名の通り、このギルドではみんなそれぞれのペースで自由にプレイしている
特に何も制限されることはないから、今まで通りプレイしてね」
レベッカと呼ばれたブロンド髪の女性が、ウインクして見せた。
「改めて俺はロビン。このギルドのタンク担当で、みんなで集まると何かと仕切ることが多いかな」
ぐっと、力こぶを出し何かをアピールしたそうにしているロビン。
「俺は魔導士のカンタ。割と移動系の呪文使えるの多いから困ったとき呼んでね」
と、シルクハットをかぶった男が挨拶をしてくる。
後で帽子を取ってくれたが……その頭はつるっつるであった。
「今日は不在なんだけど…、俺らのリーダーは、超強いよ。なんたってSランクなんだからね」
「マジっすか!?」
ケイが目を真ん丸に見開いて、興奮していた様子なのが俺には印象的だった。




