聖女リアと魔物の襲来
早い話が、ローザ教は、「いずれ訪れる厄災を女神ローザ様が黄金の椅子に座って見つめている限りは、防ぐことができているんですよ!」という、教えを守る会です。
厄災とは異界の扉が開かれ、怪物がやってくること。
魔界が閉じられて数百年。ビバ平和。
しかし、女神ローザ様、ただお一人が未だに戦いを続けておられる。まるで人柱ではありませんか。
大聖堂の木製の扉のきしむ音で、思考が破られました。
「に、逃げて下さい! 避難を!」神父の一人が閉めきった扉から駆け込んできました。
「そんなに慌ててどうしたのです?」
彼は青い顔色で言います。
「聖女リア様が野犬に襲われております」
聖女リア様は、生き神で女神ローザの妹。
九歳で祈りの力を使えます。そう簡単に犬に噛みつかれたりはしません。
「リア様の身になにかあったら、僕はローザ様に祈るときに、どのような顔をすればいいのでしょう」
「ジュスト様お早く! 大の大人三人がかりでも手に負えない事態ですぞ」
ですが、最悪の事態が脳裏をよぎりました。
この目で確かめなければ。
魔物がついに、この町にやってきてしまったのか。