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僕はあなたの生贄です

第一話にあたる「バッドエンンド」と繋がります。エピローグを冒頭に持ってくるスタイルですので。最終話をお読みになった方は、またぜひとも第一話「バッドエンド」と比べてみてください。

 怪物は大きな口で呪文のような禍々しい文言を発しました。怪物の身体が煙に巻かれ、僕に向かってきます。


 慌てて後退しましたが、煙は僕を飲み込みます。息ができません。


 けれども、息ができました。僕の第一声は獣の唸り声でした。


 鍵の怪物は息絶えました。けれども、僕はローブを脱ぎ捨てて咆哮します。僕の皮膚を灰色の毛が突き破り、僕は僕でなくなったことを嘆きました。この声も、女神を憎むような悲しい声でした。


 意識が完全になくなる前に、僕は短剣をローザ様に届けなければなりません。脳内をほの暗い感情が這ってきます。


〈僕は鍵の怪物。扉を開けるのが使命。今は誰かのおかげで開いています。閉じられる前に女神ヲ殺セ〉


 できません。僕はローザ様の手のそばに短剣を置きます。


〈女神ヲ殺セ〉


 僕にはできません。できません……。感情がせめぎ合います。ローザ様が目覚めるまで。僕は耐えてみせます。


「それまで。僕ハ、ここニ、イマス、ズット、イル」


 何分過ぎたのでしょうか。僕は意識を保てなくなりそうです。




 白いドレス。透きとおるブロンズの髪。


 ドレスの肩から胸元にかけてあしらわれたフリルが揺れます。


 ローザ様が息を吹き返しました……。


 僕に気づいてくれます。手元に短剣があることに気づいてくれましたね。


 お願いします。殺して下さい。


 よだれが落ちます。ローザ様がのけぞって目を覚まします。驚きで声が出ないようです。一拍おいて、僕の姿をお認めになります。


「ジュスト! 助けて!」


 僕の名前を呼んでくれましたね。これで、僕は満足して死ねます。


 僕が僕で亡くなる前に殺して下さい。


 そして、ローザ様は女神に戻って下さいね。復讐なんてことは考えなくてすむように。


 僕は、ローザ様が黄金の椅子に座っている姿をいつも思い描いていました。


 だから、今、目の前でローザ様が何に恐怖しているのかだんだん分からなくなっても、ローザ様の姿だけは思い描けるんです。


 僕の意思とはちぐはぐな動きをしている僕の身体。お願いします。ローザ様、殺して下さい。僕はあなたの生贄です。


「グガアアアアア」

 


――――――――――――――――――――――――――――――――




 私は黄金の椅子に座った。ここから深く暗い穴を見つめ続けるの。


 こちらに迫ってくるように渦を巻く穴は、私の赤い瞳で見つめている間はその大きさを変えない。誰もとおることのできない小さな穴になる。


「ジュスト。ごめんなさい。私がとどめを刺した怪物はあなただったのね。ごめんなさい。本当にごめんなさい」


最後までお付き合いいただきまして、ありがとうございました!


少しでも気になっていただけたら、ブックマーク、★評価のほどよろしくお願いいたします。やる気に直結しますので応援のほどよろしくお願いいたします。



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― 新着の感想 ―
[良い点] 1番最後の締めが最初に繋がっててすげぇ、感動した(小並感) いいっすねぇ。。このバッドエンド感。。。たまんねえっす。。オイラ興奮してきたや。。 [気になる点] ローザ様ピンク髪じゃなかっ…
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