7.「龍穴」
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龍力。それは風水術を超える個人特有の超能力のことである。
風水術は生命や大気や大地に満ちている浮龍力の流れている龍脈を利用することによって、木、火、土、金、水の属性にわかれた作用をもたらす。人間は必ず五つのうちのどれかに分けられており、非常に強い浮龍力の集まっている龍穴、という場所に行くと、自然とどこに分類されているのかわかる。
「ジロウ、もしかしてあそこか?」
「はい、そうですけど何かありますか?」
「……いや、まあ問題はないかな。俺がちょっと我慢すればいいだけ」
「あっ、浮龍力が暴走してしまうんですか?」
「弱ってるとね。ま、宿なしより絶対マシだし、多分大丈夫だよ」
「龍穴で過ごすと強くなれるらしいじゃないですか?でも強すぎる人には考えものなんですかね?」
「そうだろうなぁ」
三十メートル四方くらいの正方形で、結構な厚みのある浮遊島だ。
二人は躊躇せずに着地する。ジロウが大きめの声で言った。
「ようこそ我が家へ!」
「お邪魔します、元気だなぁ」
あまり大きくない茶色の小屋へジロウから先に入っていく。
「夕飯はデリバリーでいいですか?」
机の上にあった携帯電話を取ってジロウが言った。
「ああ、食えれば何でもいいぜ。ありがとう」
そう言いながら見事な暖炉を見つめる。今は暖かい季節だというのに、小さな火が付いている。
「ジロウの属性は火なんだな?」
「あっ、そうですよ!って、この暖炉に火が灯っているのを見ればわかりますよね」
「そうだな。俺とは相性の相性だな」
「えっ、本当ですか?じゃあカケルさんは木か土……」
「俺は木だぜ」
「えっ……教えてくださって大丈夫なんですか!?」
ジロウは目を丸くして驚いている。
「まあ隠してないからな。いずれわかることだろうし」
「シビリアンじゃない人って普通隠しますよね?」
「そうだな。相手のことがわっているのと、そうじゃないのとじゃ大違いだ。でも、悪いことをする訳でもないのに、隠すのはおかしいだろう。知っていると色々と便利だし」
「確かにそうですね、そうだ……」
閃いたというのに、ジロウは深刻そうな顔をしている。
「ん……?どうかしたのか?」
カケルはそれにすぐ気づいた。
「カケルさんなら真実に辿り着けるかもしれない……」
「どういうことなんだ?」
「実は……僕も龍力の保有者なんです」
「面白そうだな、詳しく聞かせてくれ」