5.「アカネの財宝と鴉空賊団の解体」
近くにあった無人島で、シンヤと一対一で話すことになった。シンヤが「わかった、降伏する! 降伏するから、国に突き出すのだけは勘弁してくれ!」と喚いたんだ。
殺す、という選択肢がなかった訳ではないけれど、いくらなんでも俺も鬼じゃない。まあ、実は説得してから突き出すつもりである。うまく運べば喜んで自主してくれるだろう、という算段だ。
銃口を後頭部に突きつけたまま、無人島へと降りた。
「へへ……カケルの兄貴、それでどうしたら俺は解放してもらえますかね?」
「まあ返答次第かなぁ」
「何かお聞きしたいことでも?」
「簡単に言うけれど空賊をやめろ」
「は、はいっ! そりゃあもちろん心を入れ替えてですね!」
「それから仲間になれ」
「……へ?」
「……おい、わかりやすく言ってやったのにわからねーのかよ」
「あ、いや、仲間……と言いますと、何の……?」
「これから俺は起業しようと思っているんだ」
「は、はぁ、会社を興す、という起業ですかね?」
「そういうことだ。国家機関に属さない傭兵組織を作ろうと思っている」
「なっ……そんなまさかっ」
「そのまさかだ! どうだ? 一緒に働かないか?」
「……兄貴、えぐっ、本当ですか? それ本当ですか?」
「お、おい、そんな泣かなくてもいいだろ」
「うぐっ、えぐっ……い、いや、なんかそんなつもりないんですが、どうにも涙が止まらねぇ……」
「ただし一つ問題がある」
「は、はい、何でしょうか、社長」
「社長はやめてくれ。それで、これから俺の裁量で活動するとしても、だ。流石に普通に空賊を仲間に入れたとなると、名前に傷がつく。だから自主してくれ」
「……は、はいっ! ……って、ええっ!?」
「文句あるか?」
「……わかりました」
そう言うと、シンヤは真顔になって言った。
「カケル兄貴、一つだけお願いが」
「何の文句だ?」
「この際だから空賊の王になることは諦めます。ただ、アカネの財宝はどうも諦めがつかねぇ、それでですね……」
「そういうことか、じゃあ問題はない。アカネの財宝を探しているのは俺も同じだ」
「え……?」
「かー、だから空賊は嫌いなんだよ。あのなぁ、空賊の王しか手に入れられないって噂になっているけれどな、そんなの誰が決めたんだ? 誰もその財宝を手に入れてないんだぞ」
「まあ、確かに」
「存在を信じていない訳ではないけれど、既に死人のアカネ・ヒロトの言うことなんて聞く必要ないだろう」
「……は、はい」
尊敬の眼差しでこっちを見ている気がする。
「で、どうする? お前なら反省した姿を見せれば何とか数年で出てこれるだろ?」
「……そうですね」
シンヤは土下座した。
「兄貴、この出会いに、俺は一生感謝します。喜んで自主させていただきます」
「なんで空賊だったのか不思議なくらいだな」
演技だとしたら大俳優だ。
シンヤの鴉空賊団はこの日を以って解散となった。