2.「龍力」
空賊たちが道を開ける。二人が対峙した瞬間、風が止まったような気がしたものもいた。
先にカケルが口を開いた。
「やってみろ」
「言われなくとも……?」
シンヤがそう言った瞬間、カケルに竜巻並みの暴風が吹き荒れる――
カケルは膝をついて、立っているのがやっとであるが、そんな状況で言う。
「へぇ……これが噂の……!」
「そうだ、これが俺の龍力!この程度の暴風で音を上げることなんてないよな? 風でどこかへ行ってもらおうなんて気はさらさらないぜ? カケル君を倒せば結構名が上がるんでな。まあ、俺の名声の為に死ね」
そう言って巨大な銃剣をカケルに向かって振り下ろした。が、その刀身がカケルに触れる刹那だった。空賊船はカケルのいたところから真っ二つに割れて、大爆発を起こし、半分ほどの空賊たちと共に海へと落下していった。残り半分とカケルとシンヤは空中で睨みあっている。
今度は先にシンヤが口を開いた。
「俺たちの船、やってくれんじゃねぇか」
「へぇ、取り巻きの奴らはとりあえず飛んで逃げたって感じだったが、お前は何が起きたのか理解出来たんだな」
「ぐっ……何が起きたもクソも、てめぇのその馬鹿力で真っ二つに叩き割っただけだろうが」
それを聞いていた空賊たちの表情が一瞬で青ざめた。
「よくできました。で、まだやる気あんの? 脚が震えちゃってるみたいだけれど」
「……まだ俺たちの夢は終わらねぇ! これまでどれだけの困難を乗り越えてきたと思っていやがるんだ! どれだけのものを俺が背負っていると思ってるんだ! 馬鹿ばっかりだから俺が死んだら困るんだ! 俺はまだ死なねぇ! 死ねねぇんだよ!」
そう言いながらも、脚の震えは止まらない。
しかし――カケルは楽しそうに微笑した。
「……一応、聞いておいてやる。その夢ってのは何なんだ?」
「馬鹿かお前! 空賊の夢っつったら、空賊の王になって、アカネの財宝を見つけることだろうが!」
「……そうだろうな。じゃあ、もう一つだけ聞かせてくれ。お前はその夢が叶った後は、どうするつもりなんだ?」
「こいつらと一生遊んで暮らすんだよ! それが何なんだ!」
それを聞いたカケルは俯いた後、くっくっく、はっはっは、と笑い、豪快に笑いだした。
「かははは、面白いやつだな! 気に入ったぞ! お前みたいな優しい空賊もいるんだなー」
「なっ、なんだテメェ馬鹿にしやがって! ぶっ殺すぞ!」
「……やってみろ」
強烈な凄みで睨み、カケルはシンヤを黙らせた。
「……」
「どうした?」
「くっ、すまねぇ、野郎ども! 鎌鼬の舞!」
刃物のような巨大な乱気流がカケルのいた場所で起きたが、すでにその場所には何もなく、
「チェックメイトだ」
シンヤは後頭部に銃口を突き付けられていた。