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7話 聞き込み

******


「はぁ~」


 私はため息をつきながら教室の自分の机に倒れこむ。私のため息は騒がしい教室の喧騒に消え去る。時間は昼休みが始まったばかり、私はコンビニで買ったおにぎりを見るがそれが解決してくれることはない。


 母に励まされてから5日。私は何も出来なくなっていた。何もできないといってもそれは語弊があるか。私が祖母に聞いている話も惚気話ばかりになっていて。祖父に見せた写真やこれじゃないかと思って見せた風景の場所の写真も祖父にはピンときていなかった為だ。


 何度も祖母の元に通い詰めているが出てくるのは爺さんにどこどこへ連れて行って貰った。近くの公園でプロポーズされた。あれは流石になくて怒った。もっとロマンチックな場所が良くてやり直させたとか。初めての夜は・・・・等々流石にそこまではって話までし始める物だから途中から顔がひきつってしまっていたかもしれない。


「何処なんだ・・・」


 私はゆっくりと起き上がり外に目を向けた。外ではお昼の為か食事に出掛けているOLや会社員が数人で歩いている。車通りも多く、常に車が学校の前を走っている。


 私はそんな景色をぼんやりと見ながらおにぎりを齧る。何回も噛んで咀嚼していると大きな声が耳に入ってきた。


「それでさー!あいつ何て言ったと思う?僕は貴方のことをそんな風に思っていたんじゃありませーん!だっていうのよ!知るかっつの!勝手に期待して勝手に落ち込むとかまじねーわ」

「それは酷いよ!なんなのそいつ!?」

「あたしもまじ切れてさー目の前でそいつの連絡先消したわ」

「あはは、何それ!やっさしー」

「でしょ?あたし優しーから。もうお前とは会わねえって目の前で教えてやったんだ」


 いつもいつもくだらないことを、よくもそんなにしゃべっていられると思ういつもの二人だ。しかもなぜか私の近くにいる気がする。それとも声が大きいからそう思うだけだろうか。彼女らの話題で真島の評価を知ったりしたから、もしかしたら役にたっているのかもしれない。


 この前もなんかよくわからないオカルトな話をしてたし・・・。待って何の話をしていた?確か何かに今の私と関係あるような・・・。


 バン!


 私は机を強くたたき立ち上がっていた。その拍子に椅子が倒れて大きな音がする。


 教室が一瞬で静かになり皆が私の方を向く。私はそんなこと構うかとばかりに煩い二人組の所へ行く。


「ねぇ」

「な、何よ」


 二人はそこまで上げたら歩くだけで見えるんじゃない?くらいに上げられたスカートを履いている。一人は日焼けサロンで焼いてきたのかと聞きたくなるような浅黒い肌をしており、髪を明るい茶髪に染めている。もう一人は机に頬杖をついているやたらでかい胸を机の上に載せて休んでいるやつだ。彼女は前髪に青のメッシュを入れている。誰が見ても校則違反だろうが諦められているのか誰も注意なんてしない。化粧もかなりしているからか二人とも顔はちゃんと可愛いように作ってある。そういった努力をしているからかそれなりにモテているのか良く男をとっかえひっかえしていると言っていた。


 その二人が警戒心を露わに私を見ている。


「この前に話してた都市伝説?みたいな話って詳しく教えてくれない?」

「は、はぁ?何の話?」

「そんな話してたっけ?」


 背中まである髪をハーフカットにして頭の上にお団子作っている浅黒い方は警戒しているが、もう一人は考えてくれる。


「確か・・・帰りのホームルームの前に大声でそんな話をしてたじゃない・・・。何だっけ・・・何か記憶と引き換えにとか・・・・」

「あーあー?何だっけ・・・してたようなあったような・・・」

「んーあれじゃない?風景屋だっけ?なんか記憶渡す代わりに風景見せてくれるって言ってたやつ?」

「それ!」


 私は頬杖をついていた彼女に指を突きつけて彼女のボブカットを揺らす。ついでにでかい胸部も揺れていた。


「な、なに。そんなに食いつかれても・・・」

「その話もっと教えてくれない?」

「は?何で私がそんなこと」

「お昼のおにぎりあげるから!」


 私は自分の机から持ってきた残りのおにぎりを全て差し出す。今持っていて差し出せる物はこれしかなかった。


「はぁ?んなもんでつられるわけ・・・」

「いいよー」

「はぁ!?何でそんなもんで!?」

「ちょっと説得してくるねー」

「え・・・うん」

「あ?どこ行くんだよ」

「いいからいいから」


 ボブカットがお団子を連れて廊下に出て行った。そして数分もすると帰ってきた。その顔は何か隠しているような含みのある笑顔をしていて、ちょっとお願いしたことを後悔しそうになった。


「いいぞ。私らに教えれることなら何でも教えてやる。それで何が知りたいんだ?」

「私に出来ることならするから~話してみて?」

「えぇ・・・」


 どうしよう本当に気色悪い。何でこんなことになっているの?というかどうやって説得したのだろうか?私はその代償になにされるんだろうか。一生パシリになれとかって事だった流石にお断りなのだが・・・。


「私から頼んでおいてあれなんだけど、どうしたの?というかそれを聞いた私は何をさせられるの?」

「いやいや、大したことはしなくていいよな?」

「うんうん。ちょっと紹介して欲しい人がいるだけ」

「誰?」

「ちょっとトイレにいかない?」

「来るよね?」


 これはいかないと話が進まないんだろうか。進まないんだろうなこれは・・・。


「いいよ。いこっか」

「じゃあこっちねー」


 私の人生初の他人と一緒に行くトイレかもしれない。


 私たち3人はほとんど誰もいない廊下を進む。この時間はほとんど移動も終わり、皆食事中だからだ。トイレも同様で私たち以外は誰もおらず、個室も開いていた。


「それで、誰を紹介すればいいの?といっても紹介できる程の人は私、居ないんだけど」


 自分の人生を思い返しても家族以外と会話をした相手なんて居ない。


「そんなことないってー私たちの間では結構有名だよ?」

「そうそう、アンタに良くしゃべりかけてくる奴がいるじゃん?」


 二人はそう言いながらもったいぶる様にして誰かを明かさない。いいからさっさとその名前を行って欲しい。


「ホントに誰の事?サッサと教えて欲しいんだけど」

「もーとぼけちゃって・・・真島のことよ。真島健太」

「良く声を掛けられてるらしいじゃん?幼馴染なんでしょ?紹介して!」

「真島って・・・あの野球部の真島?」

「他に誰がいんのよ」

「・・・」


 真島・・・真島は確かに私と知り合いだし幼馴染ではあると思うけど・・・紹介出来るほどの仲かって言われると首を傾げざるを得ない。それなのに勝手に彼を紹介してもいいのだろうか。


 勝手に彼に紹介するのは迷惑なのではないだろうかと思う。それに彼は野球を一生懸命やっていて邪魔するのは良くない。


 一人で考えていると二人が譲歩してくる。


「お願い!ちょっと引き合わせて挨拶させてくれるだけでもいいからさ!」

「そうそう!ちょっと名前を教えあったら帰ってもいいから!ね?」

「う~ん。それなら・・・」


 いいのだろうか?まぁ、嫌だったら真島なら断るだろう。小さい頃もガキ大将をやっていたくらいだし、きっとそれを受け入れるくらいの度量はあると思う。


「やった!それじゃあ今日の放課後にでもいい?」

「善は急げってねー!」

「今日?でも野球部で忙しいから遅くなるかもよ?どっかで野球部が休みの時にした方がいいんじゃないの?」

「いいのいいの。うちら野球部の時間まで好きに時間潰せるし」

「そうそう。会えるなら早い内に会っておきたいからね」

「そう、分かったわ。細かいことはどうする?放課後に話すでいい?」

「いいよー。よっしゃーなかなかいい感じの奴だろうから、ちょっと気になってたんだよねー」

「うんうん。ああいうやつっで仲良くなっても同じ感じなのかなー?」

(・・・ごめんね真島。この二人の会話を聞いていると真島を生贄にさし出しているように思えてきた)


 それでも二人から話を聞かないなんて選択肢は彼女にはなかったので、彼はさし出されることになった。


「それじゃあさっきの風景屋?その話を教えて貰える?」

「勿論・・・といっても詳しい訳じゃないんだけど。この前何処まで言ってたっけ?」

「確か記憶が代償として持っていかれるとか・・・だっけ?」


 その時は適当に聞き流していたというよりも耳に入っていただげだったのでほとんど覚えていない。


「んーじゃあ最初っから話した方が良さげな感じ?」

「お願い」

「分かった。確か風景屋っていう噂があって。そこは何処にでもあって何処にもない。意味わかんないけど行こうと思ってもいけないらしいよ」

「え、じゃあどうやって行くの?」

「なんでも本当に求めている人の所には店の方から現れるらしいよ?」

「どうやって?」

「私が知る訳ないじゃん。人から聞いた話だし、そんで中に入ると偏屈なおじいさんがいて、そのおじいさんがその店の主。その人に見たい風景を言えばそれの対価・・・?だっけ?に記憶とかを提示されるとかなんとか。でそれを受け入れれば見れるって聞いたくらいかな。そんなに情報は持ってないよ」

「それってどこら辺に出やすいとかの情報はないの?」

「うーん、聞いてない気がする・・・」

「その情報を貰った相手とか!」

「覚えてないって。私も何処で聞いたか覚えてないから」

「そんな・・・」


 情報を掴めるとは思ったのに無駄だったのだろうか。いや、そんなことはない。ネットとかSNSで調べれば何か情報が出てくるかもしれない。諦めるにはまだ早い。


「分かった。ありがとう。それじゃあ戻るね」


 私はさっさと女子トイレを出て教室に戻る。スマホで出来るだけ調べねば。


「う、うん。切り替え早いな」

「日下部さんってあんな人だったんだねー。もっと感情ないタイプかと思ってたよ」

「人間見かけに寄らないもんだな」

「だねー」


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