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5話 祖父の思い出と私


 私は祖母に祖父との昔話を沢山聞いた。最初は幼馴染だったこと。よくケンカをして泣かせ合っていたこと。お互いに違う人を好きになったこと。それぞれ振られて慰め合ったこと。その後の人生も祖母も祖父もずっとこの土地で暮らしてきた。なら、祖父が見たかった光景とは何なんだろうか?


「ばあちゃん!」

「何だぁ!」

「じいちゃんにとっての思い出の場所とかって心当たりない!?」


 そうだ、何も私と母だけで考える必要はないんだ。父や和也に聞かなくたって祖父のことなら祖母が一番詳しいに決まってる。


「そうさなぁ!・・・。新婚旅行で行ったとことか・・・銀婚式で言った場所とかも良かったなぁ!」

「それって何処に行ったの!?写真とかある!?」


 もしかしたら祖父の見たかった景色の写真が残っているかもしれない。もしなかったとしても実際の場所に行って写真を撮って来ればいいのだ。こんなに早く手がかりが掴めそうになるなんて。私は期待に胸を膨らませる。


「あるぞぉ!ちょっと手伝え!」

「うん!」


 そうして私たちは再びさっきの物置に行く。そして祖母の指示を聞いてタンスを開けたり、籠を開けたりして写真を探し始めた。最初こそ何でこれを開けるの?って思っていた物の中に写真があったりしてどういった仕訳をしているのか訳が分からなかった。


 それでも意外と写真とかは出てくるもので100枚以上、たった一日でこんなに集まるとは思っていなかった。祖母に相談して良かった。


「思い出せるのはこれくらいだなぁ!」

「ありがとう!ちょっと借りてってもいい!?」

「ええぞぉ!好きにしてけぇ!」

「また来てもいい!?」


 そう言うと祖母はニヤリとして言った。


「菓子用意して待ってるでの!」


 私も思わず嬉しくなり笑顔が浮かぶ。


「またね!」

「息災でな!」


 私は祖母に別れを告げて外に出る。外は既に日が落ちていて周囲は暗い。


「やっば。父さんたちそろそろ帰ってきてるかも」


 かもといって自分をごまかそうとするが多分手遅れな気がする。スマホを取り出して時間を確認すると8時を回っていた。完全にアウトだ。それと同時に父と和也から鬼の様にメッセージが入っていた。煩いのは嫌だからいつもマナーモードにしていたのが仇になったみたいだ。少し急いで帰っているとふとした既視感を覚える。


(何だろう?)


 そう思ってなんとなく行かなければいけない方に足を進める。その先には昔祖父と一緒に寄った青果店だ。夏に食べたスイカはここで買ったはず。今は時間が時間の為しまっているが、シャッターの下からは微かに光が漏れているのできっと今も続いているのだろう。


 その道を進むと次は駄菓子屋があったはず・・・。しかし記憶にあった所にそれはなかった。そこも祖父と良く通った思い出の場所。しかし、このご時世に駄菓子屋は儲からない。若しくはその店主は高齢だった。そっちの方が理由かもしれない。


 そのまま昔の道を歩く。当時のままな場所、変わってしまってない場所。あれがない、これがない。ここはまだあったんだ。そんな事を思い出しながら周囲を歩く。


 暗くて良く見えないはずなのに、今でもハッキリと思い出せるこの光景。そして思い出の場所はビルが建っていた。


「そっか・・・無くなっちゃったんだ・・・」


 昔、ここは公園だった。祖父によく連れられてさっきの光景を見て最後はここで夕方になるまで遊んで貰ったのだ。だけどその景色は何処にでもあるビルになっていた。それの大きさは3階建てでビルといっていいのか分からないの高さ。そんな中途半端な物に変わってしまった悔しさを感じ、私はビルの前の地面を蹴りつけた。


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