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風景屋~最期に貴方は心に何を思い浮かべますか?~  作者: 土偶の友@転生幼女3巻12/18発売中!


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15話 記憶の中へ

 目を薄っすらと開けて私を見る祖父に私は疑問形の言葉しか出てこなかった。祖父に対して薄情かと言われるかもしれないが、数日前に祖父が大変なのと言われた私にいきなり大事にしろというのがそもそも出来ない話だ。


「悠里・・・?」

「はい、そうですけど」

「今日は・・・どうしたんだい?」

「えっと、特に用事とかはなかったんですけど・・・ただのついでというか・・・」

「どうした・・・んだい?今日の雰囲気は・・・変だよ?」

「そうでしょうか?」

「うん。そんな・・・に。丁寧語は使ってなかった・・・からね」


 確かに最近会った時は祖父にため口だった記憶があったり祖父を見て涙ぐんでいたけど、あれはテレビでやっている感動系の番組みたいな感じだと思った。それを実体験しているからため口をしていて、そういった感じを演出していたような・・・。でもなんでそんなことをしようとしたのかが分からない。何でだ?何でなの?ここ最近の感情と行動が一致しない。頭にずきりと痛みが走る。


 私は頭を抱える。頭が痛くて動けない。


「ゆ・・・うり?大丈夫かい?」

「ふむ、記憶障害が出ているのだろう。失った記憶の隙間を補完するのは大変だからな」

「あな・・・たは?」

「儂かね。しがない『風景屋』だよ。君に風景を見せるように依頼されてここにやってきた」


 彼女の祖父は目を限界まで広げる。


「待て。儂は記憶をさし出・・・すつもりなど・・・ないぞ」

「老いた記憶などそうそういらんよ。対価の記憶は既に貰っているからな。安心して見るといい」

「待って・・・くれ。対価は・・・何を貰った」

「君の孫の君との記憶だよ。いい記憶だ。若く強く美しい。君のようなものの為にくれるとは彼女は素晴らしいな」


 祖父は起き上がろうとするがそれが出来ず悔しさを噛み締めながらも老人に懇願する。


「一生の・・・頼みだ。孫に記憶を・・・返してやってくれないか。儂の記憶を全て・・・譲る。どうか・・・頼む」

「断る。既に契約は成立した」

「頼む・・・」

「認めぬ。それでは行くぞ。さぁ、起きろ」


 私は自身の記憶と感情に理解が追いつかず祖父と老人の会話を聞き流していた。そこへ老人の声とともにその細身からは信じられないほどの力で立たされた。


「え?」

「Landscape」


 彼がそう言った途端、私と祖父とその老人は真っ暗な空間に移動していた。それでいて近くの老人やベッドで寝ている祖父はハッキリと分かる。またさっきみたいに移動したんだろうか?


「立て」

「?立ってるけど・・・」

「お前ではない。そっちの老人だ」

「え?おじいちゃんは今・・・」

「いいから立ってみろ」


 祖父はそう言われているが老人の事を敵意の籠った視線で見つめていた。


「下らんことで時間を使わせるな早くしろ」


 老人は祖父の視線に物怖じすることなく正面から見返す。


「・・・」


 祖父は敵意の籠った目はそのままでゆっくりと体を起こす。すると驚くほど簡単に上がれたのか戸惑った表情になっている。


「ここはお前の精神世界。お前が見たい風景はお前の中にある。一から作る必要も他者から奪ったり借りたりする必要もない。そして貴様の内側であるならば体の不自由さなど微々たるものだ。体も自由に動かせるだろう?」

「・・・」


 祖父は何も言い返さずにベッドから立ち上がった。その瞬間ベッドが消え去る。


「さてこれでいいな」


 老人は再びパチンと指を鳴らすと景色が揺らぎ始めた。真っ黒が揺らぐとは自分でも言っていてよくわからないが、それでも揺らいでいるとしか言い表せない。その揺らぎはどんどん大きくなり次第に色がつき始めた。最初は可愛いピンク色が小さくついたと思ったら大空のような空色が足され鮮やかな黄色が少し追加されそれらが全て真っ白になった。


 それからも色は何度も追加されては塗りつぶされ、上書きしては塗りつぶすの繰り返しがされていた。それから唐突に色が混じり合い突如として風景へと変貌した。


「これは・・・」

「これがお前が望んでいた景色だ」


 そこは広場で私たちはその中央らへんに立っている。広場といっても木が何本も植えてありその内側が土になっているだけで本当に何もない場所だ。木の奥というか外側には今でいうと古風な感じのする建築ばかりが立ち並んでいる。まるで昭和のドラマの中に入ったかのようだった。


 空は青く太陽も煌々と照らしていて温めてくれる。精神世界とかよくわからないことを言っていたけどこれが現実なんじゃないかと思う。


「何処か分かるか?」

「ここは・・・」


 老人が聞いたが祖父は戸惑っているようだった。


「では次はこうしようか」


 彼は再び指を鳴らす。


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