×5 目指すは大図書館の地下深く、謎の少女とまだ見ぬ強敵? 後編
階段を下り、ここは大図書館の地下一階。
普段人の出入りが無いのか、埃っぽくそこいらじゅうにクモの巣が張っている。薄暗く視界も悪い。
「なんだか、上とは全く雰囲気が違うね……」
左右を本棚に挟まれた、通路のようになっているところを歩きながら、シェリィは不安そうに言った。
「こりゃ地下は図書館ってより本棚の迷宮ね……ルキ、シェリィ、足元に気を付けなさいよ」
「わぷー! 顔になんか掛かった! なんか!」
「ちょっとルキ、アンタ先頭なんだから前くらいしっかり見て歩きなさいよ」
「足元なのか前なのかどっちだよ!」
地上階程の広さは無いが、本棚によって作られた通路が様々な方向に伸びており、薄暗さと相まって迷ってしまいそうになる。
三人はほとんどルキの勘に頼って移動していた。
「ああ! こっ……これは……!」
突然、ルキが大きな声を出した。
「どうしたの!? ルキちゃん!」
「敵か!」
咄嗟に構えを取るクイナ。
「ボンムチパラダイスの創刊号だ……」
「……はっ?」
「あたしがちょくちょく読んでる雑誌だよ。創刊号とかレアモノだー!」
ちなみにエロ本である。かなりどぎついやつだ。
この状況でこれを発見するあたり素晴らしい第六感を持っている。
「し、心臓に悪いよ……」
「もう! くだらない事で大声出さないでよね!」
「あっ、この女の子シェリィに似てるー! すげーカッコ! えっろ!」
「えっ? うそっ? マジ? アタシにも見せて」
「クイナちゃん……」
本の迷宮に苦戦(?)しながらも三人は地下一階の探索を続ける。
「あっ!」
ルキが再び大きな声を出した。
「なによ、またエロ本?」
「違う違う、階段だよ階段! ほらあそこ」
「やったね! ルキちゃん!」
ルキの頭を撫でて褒めるシェリィ。
「でへへ~もっと褒めて~」
「なんか緊張感無くなってきたわ、アタシ……」
気持ちは分かるが敵地での油断は死に直結する。頑張れクイナ!
二つ目の階段を下りて地下二階へ到達。シェリィたちは順調に大図書館の深部へと向かって行く。
「おっ! いた! あいつが例の強いモンスターだな!」
階段を下りた先にはそこそこ広い空間が広がっていた。
周りをグルっと囲んでいる壁は本棚になっているのだが、中央には何もない。
そんな広い部屋の真ん中に、そのモンスターは立っていた。
体の形は人間と同じだが、大きく膨らんだ筋肉に赤い皮膚を持っている。
頭の形は牛そのもの。腰みのを付けているので全裸ではないがほぼ裸である。
何故かアゴには白いひげが。牛男は腕組みをして侵入者であるシェリィたちを待ち構えていた。
『フォッフォッフォ……お主らが――』
「あれか、やるよ! ルキ!」
「おっけー!」
相手を視界に捉えると同時に二人は駆け出していた。
一瞬で間合いを詰め蹴りと短剣による攻撃を加える……しかし。
「あれ?」
「手応えが無い……」
二人の攻撃は外れた、というより相手の体をすり抜けてしまった。
『ええい! ワシの話を聞かんか! ワシはミノ――』
「よっと!」
「おらぁ!」
間を置かずに二撃目を打ち込むが、これもすり抜けてしまう。
『幻覚じゃ! これは幻覚! 殴っても無駄!』
このままではいつになっても会話が出来ないと考えたのか、牛男は自己紹介を諦め、幻覚という言葉を最初に出して強調、分かりやすく二人に伝える。
分かりやすさというのはいつの時代、どの媒体でも重要なのだ。
「幻覚ですって!?」
「どーりですり抜けるわけだ……」
二人の動きが止まる。戦闘にはならないと判断したのか、シェリィも二人の近くまで歩いてきた。
『フォッフォッフォ、ようやく理解したか。本物のワシはもっと奥にいる。お主らがうろついてるのが分かったんで、挨拶でもしてやろうと思ってのぉ』
「あの……ここから出て行ってはもらえませんか? 私たちも出来れば争いたくは無いんです」
話が通じる相手だと考えたシェリィが説得を試みる。平和的に解決できるのならばそれが一番だ。え? 百万は? という顔をして二人がシェリィの方を見るが口には出さなかった。
『いやじゃ』
交渉は一瞬で決裂する。
『この古代図書館にはあらゆる時代のエロ本が眠っとるんじゃ! こんなパラダイスから出て行く馬鹿はおらんのぉ!』
「あっ! それちょっと分かる~」
『それより黒髪ロングのねーちゃん、お主はワシが昔推してたライザちゃんに似ておるのー! おじさんたちから似てるって言われんか? ライザちゃんは初期のボンムチパラダイスを支えたと言っても過言ではない程の人気だったんじゃよ。あの必殺ポーズはえがったぁ~』
「……」
途端に冷えた表情に変わるシェリィ。やはり人は争う事でしか問題を解決できないのだろうか……モンスターだけど。
「シェリィ、残念だけど殺るしかないわ」
まったく残念じゃなさそうにクイナが告げた。彼女の目には牛男が札束に見えている。
『ふん! ひよっこどもにワシが倒せるものか! ビビって泣いて逃げだすのがオチだのぉ! 一応待っててやるから精々頑張って進んでくるんじゃな!』
なんだか来てほしそうな口ぶりで挑発を入れる牛男、そしてその姿はスゥーっと消えてしまった。
それと同時に、それまで壁に見えていた場所に通路が現れる。
「なるほど……幻覚で道を隠す事も出来るってわけね」
「戦ってる時に幻覚を見せられたら厄介だなー」
「その心配はいらないんじゃない? かなり高度な魔術っぽいし、戦闘中には使えないと思うけど」
「いざとなったら周りの本に火でもつけちゃえばいいんじゃないかなぁ……」
「い、いつになく過激ね、シェリィ……」
あらためて戦う覚悟を決め、現れた通路を進んでいくシェリィたち。しかし……
「あれ、行き止まりだ」
一本道だったよね? と振り返りながら、二人にルキが言う。
「ルキちゃん、足元に何か紙が落ちてるよ」
シェリィが拾い、紙を確認する。何やら文字が書かれていた。
『清純な乙女二人の熱いキッスにより道は開かれるであろう』
「……なにこれぇ……」
間違いなくあの牛男の悪ふざけだ。呆れた顔でシェリィは紙を二人に渡す。
「なぬー!? シェリィ! ここはあたしたちの出番だ! はーはー……大丈夫? あたし息臭くない? こうなるって分かってたら魚なんて食べなかったのにー!」
「ちょちょちょちょ……ま、ま、待ちなさいってば! ここここんんな事ととと……」
情けなく狼狽えるクイナ。
武道家として、日々精神を強く保つ事を心がけてはいるのだが、どうにも世の中は想定外の刺激が多すぎる。
「なんだよークイナ! 邪魔すんなよなー!」
「だ、ダメに決まってるでしょ!」
「どーせ自分が清純じゃないからって、あたしとシェリィに嫉妬してんだろー?」
「はぁ!? 清純じゃないのはアンタでしょ! エロ本なんか読んでる奴のどこが清純だってのよ! 調子こいてんじゃねーわよ!」
醜い争いを始める二人。
「やんのかー? ああ?」
「おお? やってやろうじゃない」
顔を近付け目で威嚇し合う二人。少し押したらキス出来てしまいそうだ。
「えいっ」
そんな二人の後頭部に手を置いて、シェリィがぐっと力を入れた。
「んぐっ!?」
「ふぅっ!?」
ぶっちゅ~~~~~~っと、ルキとクイナは熱いキスを交わす。
「うおええええええええええ! さ、魚……魚臭いゲロの味がするぅ……」
「うわーん! あたしの清純が変態キノコ女に奪われたー!」
「あ、幻覚が消えて道が出てきたよ」
来た道を少し戻ったところに、今までは見えなかった通路が現れている。
今のでも牛男は満足したようだ。
「さ、行こ。二人とも」
三人の探索は続く……!
「またちょっと開けた所に出たなー」
先程のキスのせいか、普段より元気がないルキ。部屋をぐるっと見回すも入り口以外が見当たらない。
「どうせまた幻覚で隠してんでしょ……」
ルキよりもさらに元気がないクイナ。
「はぁ……また変な事させるつもりかも……」
言葉でのセクハラ以外はまだノーダメージのシェリィ。それが逆に彼女を不安にさせていた。
次は自分の番ではないのかと……
程なくして部屋の中に牛男の声が響いてきた。
『現れたな勇者たちよ……ここは封印の間……』
「出てこい牛ィ! あたしの清純を返せ!」
すぐに短剣を抜き声を荒げるルキ、珍しく本気で怒っている。しかし牛男は姿を見せない。
『ここの封印を解くには解放の儀式が必要じゃ……』
ルキを無視して続ける牛男。三人の間にはまたかよ……という空気が流れる。
「……で? なにすりゃいいわけ?」
いかにも不機嫌です、という態度でクイナが尋ねた。
『そこにホウキが落ちとるじゃろ? ちょっと拾ってみぃ』
確かにすぐ近くには古いホウキが落ちていた。仏頂面でホウキを拾うクイナ。
『黒髪ロングのねーちゃんよ……部屋の封印を解きたくば、そのホウキの棒を胸で挟み、しごくのじゃ!』
「は?」
言っている意味が理解できずに固まるシェリィ。
「シェリィ! これもあいつを倒すためだよ!」
急に元気を取り戻したルキが詰め寄ってくる。その目は期待の光で輝いていた。
「せ、せめてキレイにしておくわね!」
ハンカチを取り出し、慌てた様子でクイナはホウキを磨き始める。
「ちょっと待って、私そんな事――」
「これもアイツを倒すためだから! 腕輪の事調べて記憶を取り戻すんでしょ!?」
血走った目で、ルキと同じ事を言いながらホウキを差し出してくるクイナ。
どうやらこの場にシェリィの味方はいないらしい。
「わ、分かったよ……」
ホウキを受け取りじっと見つめる。
「こうですか?」
やる気無さそうに、ホウキの柄を胸にピタッと当てた。
『ダメじゃダメじゃ! 服を脱いで両手で乳を掴み、絞り上げるようにしごくんじゃ! そんな事では封印は解けんぞ!』
「~~~~っ! せめて服は……着たままでいいですか……」
『う~ん……服の中にホウキを入れるのならば、まぁいいじゃろ』
どうにか妥協させる事は出来た。近くで小さな舌打ちが聞こえた気がしたが、気のせいという事にしておく。
「あたしがサポートするよ!」
ルキの手が音を立てて走る。次の瞬間、その手にはシェリィのブラジャーが握られていた。
「アンタのそれいつ見ても神業ね……」
『ひょー! お嬢ちゃんやるのぉ』
「さぁ、今だよシェリィ! 封印を解除するんだ!」
全員の視線がシェリィに集まる。
「……くっ!」
覚悟を決め、頬を少し染めながら、ホウキの柄の部分を服の中に入れて行く。
胸を両手で持ちホウキの柄を挟み込んだ。そして……しごく!
「んっ、んっ、んっ……こうですか?」
「……すごっ!」
「いい感じだよ! 流石シェリィ!」
『先っぽ! 先っぽじゃ! 棒の先っぽをくわえながらしごくんじゃ!』
「んく……んっ、んっ……こ、こうれふか?」
「ごくり……すっご!」
「ひゃー、えっろ!」
『うむ! 合格じゃ! 勇者たちよ! ワシのもとへ来ることを許そう!』
幻覚が消え、部屋の隅に階段が現れる。シェリィの頑張りによって封印は解かれたのだ!
「やったね! シェリィ!(ええもんみれたー!)」
ホウキを床に放り出したシェリィは呼吸を整えている。
「はぁ……はぁ……ルキちゃん、下着戻しておいて」
おっけー! と返事をして一瞬でブラジャーを戻すルキ。いったいどうやってるんだろう?
「ちょっと休んでから先に進みましょ。ワシのもとへ~とか言ってたし、あの変態モンスターとの戦いは近いわ」
心と体力を回復させ、戦いの準備を整える。
そして、三人はいよいよ大図書館の最深部へと向かって行く。
最後の階段を下り、目の前の扉を先頭のルキが開ける。
そこは一つの部屋になっていた。奥に座っていたのは幻覚で見た、赤い肌の牛男。部屋の床には魔法陣のようなものが描かれている。
「フォッフォッフォ、きおったな小娘共」
牛男は低く、おぞましい声で話しかけてくる。
「ルキ! 気を付けな! アイツただもんじゃないよ! シェリィは下がって!」
実物を間近で確認し、ただの魔物ではない事をクイナはすぐに理解した。
こちらから仕掛けたいのだが、相手の実力が分からず動き辛い。
ルキは黙り込んで視線を牛男から外さない。腰を少し落とし、未知の相手と遭遇した野生動物のように、相手の力をはかっている。
戦う必要が無いのであればすぐに逃げ出してしまっているだろう。
「ワシが恐ろしいか? 今なら逃がしてやってもいいぞ」
「冗談でしょ? ここまで来て逃げ出すわけないじゃない」
「あんたをやれば百万だからねー」
クイナは構えを取り、ルキは短剣を逆手に持つ。
牛男も筋肉をやや膨張させ臨戦態勢へ。三者は動かず、場がしんと静まり返る。
「いっくぞー!」
最初に動いたのはルキだった。牛男を目指し、一歩目から全力で移動する。
風のように素早く、流れるような動きで接近。
「ぬああ!」
牛男の剛腕から放たれる拳がルキに襲い掛かる。しかしルキは難なくこれを回避。
殴りつけてきた腕に短剣を突き立てた――
「っ! 硬い!」
ルキの腕力では鋼鉄のような筋肉を突破出来ない。短剣は弾かれてしまい床に転がり落ちる。
牛男はその隙にもう片方の腕でルキを攻撃する。
「ハイィ!」
ルキを狙った腕に、クイナが体重を乗せた飛び蹴りを打ち込んだ。
衝撃で数メートル後ずさる牛男。その隙に短剣を拾いなおしルキはクイナの隣へ。
一度仕切りなおす形。
「フォフォ、やるのぉ」
「ルキ、ケガはない?」
「おっけー平気、硬いから急所に突き立てねーとだなー」
「まさかこんなバケモンが町中に潜んでるなんてね。そこらの傭兵じゃ太刀打ちできないわけだわ」
再びにらみ合う事になる三者。
ルキとクイナにとっては相手の防御を突破することが難しい。それに対して、牛男にとっては二人の素早さと連携が厄介だ。
全員が長期戦を覚悟し、どう戦うべきかを思案する。
(ルキちゃん……クイナちゃん……何か私に出来る事は……)
部屋の外から扉を開けた状態で、シェリィが中を覗き込んでいる。
自分にも何か出来る事は無いかと必死に頭を動かすものの、二人が苦戦するほどの強敵相手にシェリィが出来る事などたかが知れている。下手をすればただの足手まといだ。
「お姉さん、扉からどいていただいてもよろしいですか?」
突然、後ろから声を掛けられた。驚いて振り向くシェリィ。
そこに立っていたのは、豪邸へと続く道ですれ違った、ルキより背が小さな女の子。
十本の指全てに指輪をはめており、スカートのベルトの背中側には、つばの無い短めの刀を斜めに差している。
眠そうに垂れ下がった目はじ~っとシェリィを見つめていた。
「あ、危ないよ? ここには凄く強いモンスターがいて――」
「知っています。わたくしならば大丈夫です」
そう言ってシェリィをどかし、部屋の中へと入って行く。
「ここはわたくしに任せてください。あなた方では時間が掛かりすぎます」
歩きながら、後ろの刀を逆手でゆっくりと抜き、謎の少女はルキとクイナの間を抜けていく。
「な、なんなのよアンタ、いきなり出てきて」
「危険だぞ! 死にたくなかったら離れるんだ!」
二人を無視して、謎の少女はゆらゆらと歩きながら牛男に接近していく。
「ふぅーむ……十二、三といったところか? ワシはガキには興味が無いからのぉ。あと五年程してから出直してくるんじゃな」
そういって少女に手を伸ばそうとした瞬間――ヒュン、と音がして、少女が持っていた刀が走った。
「え――」
伸ばした牛男の手から、指が順番に床に落ちて行く。
「こ、このガキィ!」
激怒し、もう片方の腕を振り上げるが、少女は一転して素早く動き、間合いの中へと入っていた。
牛男の胸に手を置いて、ぼそっと呟く。
「ライトニング」
バチィ! と音を立てて、少女の腕から強烈な電撃が放たれた。
声にならない叫びをあげ、牛男の動きが一瞬完全に停止する。
そして少女は牛男の顔の前まで飛び上がると、刀を横に振るう。
「あぎゃああああ! 目、目がぁ……」
両手で目を抑え、膝をつく。
「ライトニングランス」
再び少女が呟くと、彼女の手から吐き出された電気が一か所に集まり大きな槍を形作る。
その槍を片手で持ち、後ろに大きく勢いをつけ、膝をついた牛男の胸を突き刺した。
ズドン、と音がして狙った部位に風穴が開く。
「終わり、ですね。死体の処分はお任せします。賞金も譲りますので、気にしないでください」
手に持っていた刀を鞘に戻し、少女は再びルキとクイナの間を抜け、部屋から出て行く。
「あ、あの……ありがとう」
「……いえ、わたくしにとっても邪魔な相手だったので」
短いやり取りをシェリィと交わし、少女は階段を上がって行く。あっという間の出来事だった。
「呪物に関する本は主に二階になりますね」
大図書館の職員である女性に案内され、シェリィたち三人は階段で二階へと上がる。
あの後必死で牛男の死体を豪邸まで運び込み、賞金を受け取った後で町に一泊。
翌日事情を説明し、案内を付けてもらったのだ。
「ありがとうございます。カタリナさん、私たちだけじゃ、この中から目当ての本を探すのは大変で……」
「いえいえとんでもない、皆さんが魔族を退治してくれなければ、私は無職になるところでしたよ。これくらいお安い御用です」
「あははは、倒したのはあたしたちじゃないんだけどねー」
「あの子供……強かったわね」
明るく笑うルキとは対照的に、クイナは納得できない様子だ。獲物を取られたうえで、賞金だけ譲られてしまうとどうにも複雑である。
「あ、あれ……」
先に階段を上っていた案内の女性が足を止めた。
「どうしたんですか?」
「無くなってる……呪物や、特殊なアクセサリーに関する本や資料が全部……」
「ええー!?」
同時刻、ここは宿の一室。部屋中に本を積み上げた状態で、謎の少女がページをめくっていた。
「……あった! 『聖王の腕輪』……間違いない……これだ」
そう呟いて、自らの袖をまくる。
「やはり、記憶喪失とこの腕輪は関係していましたね……」
少女の腕には、シェリィたちと同じ黒い腕輪が付いていた。
「腕輪は全部で『五つ』か……あのお姉さんの腕にも、同じものがあったな……」
呟きながら、少女は夢中で本のページをめくっていくのだった……