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×20 イライラトロッコゲーム

文章と会話文の間に空白行を挟んだ方が見やすいという意見を目にしたので今回から開けてみました。

これまで区切りや時間経過の場面では一行開いていたのですが分かり辛くなってしまったので二、三行開いています。




 五体の番人を撃破し、古代人の遺跡を進んで行くシェリィたち。

 これまでの経験から、なんとな~く嫌な予感がしつつも石の階段を下りる。


「みんなー、また石板があったぞー」


 最初に階段を下りきったルキが振り返って声をあげた。


「石板の隣に何かあるね……」


 二番目を歩いていたシェリィがルキに追いつく。

 下りきった先の部屋にあったのは、新たな石板と……


「あれ、鉱山とかで使ってるやつじゃない」


 石板の隣には線路が敷かれており、その上にあったのは大きなトロッコ。

 それ以外に目に付く物は何もない。

 他に道はないので、奥に行きたいのならば、狭い線路を進むしかないようだ。


「とりあえず、読んでみますか」


 石板に近付き手を当て、内容を読み上げるエルク。


『レバー前、加速。レバー後ろ、減速。ボタンを押すとジャンプします。一度動き出すと停止は出来ないので注意してください』


 先程の石板とは大分雰囲気が違う。なんか敬語だし。


「うぅ~ん? 意味が分からないねぇ……」


 エルクの読み上げた内容を聞いて首をかしげるメリル。


「よくわかんないけど、他に道が無いならあの線路の上を進んで行くしかないわね」

「やめとけクイナ、無理だ」


 いつの間にかいなくなっていたルキが、線路の先から戻って来た。


「どうやって作ったのか分からないけど、少し進むとこの線路浮いてるんだ。しかも下は底が見えない程深かったぞ」

「なるほど……それでトロッコが用意されているんですね」

「これに乗って行けって事? だ、大丈夫かしら……」


 不安ではあるがそれしか方法が無いのであれば仕方がない。

 

「じゃあ、アタシが押すからみんな乗り込んで!」


 トロッコの後ろに立ったクイナが声をあげる。

 は~いと返事をして乗り込んでいく四人。


「お! 椅子が用意されてるぞー」


 何故かトロッコの中央には座席が一つだけ用意されていた。

 座席の右手側にはレバーが、左手側にはボタンが用意されている。


「あはは、ふかふかだー」


 大喜びで座ったルキ。しかし……

 ガシャン! という音がして、ルキの体はシートベルトのようなもので座席に固定されてしまう。

 次に、ゆっくりと上昇を始める座席。


「うわわわ! なんだなんだ!?」


 座席から下りようとするも拘束を解くことが出来ない。

 座席は上昇を続け、トロッコの中から周りが見渡せる程の高さまで来ると停止。


『これより試練を開始いたします。危険ですので、操縦者以外は魔走車の中に腰を下ろしてください』


 謎のアナウンスが遺跡の中に流れる。


「様子がおかしい! クイナちゃんも乗り込んで!」

「わ、分かったわ!」


 シェリィに言われ、慌ててトロッコに乗り込むクイナ。


『試練開始まで5秒前……4……3……2……1……いってらっしゃいませ』


 カウントダウンの終了と共に、トロッコの車輪が謎の力によって光り、動き始める。


「何だこれ!? 勝手に動いてるぞー!?」


 座席から前方の線路を見て騒ぐルキ。広大な空間の中に浮いた線路をトロッコは走っている。


「分かりました! さっきの石板に書いてあったのはこれの事だったんです! ルキさん! 椅子の左右にあるレバーとボタンでトロッコを操れませんか!?」

「これかー!」


 右手側にあったレバーを思いっきり前に倒すルキ。するとトロッコは物凄い勢いで加速を始める。


「うおおおおお!?」

「あひぃいいい、怖いよぉおおおお」

「ルキさーん! 減速してください! 危険です!」

「ルキィ! なんとかしろー!」

「そんなこと言われたってどうすりゃいいのさー?」

「ルキちゃん前見て! 前!」


 立ち上がって前を見ていたシェリィが叫ぶ。

 前方の線路はなんと壊れて途切れてしまっていた。

 途中で穴が開いてしまっている。


「うわああああああああああああああああああ」


 加速しながら穴に落ちたトロッコ、五人は奈落の底へと吸い込まれて行った。

 彼女たちの冒険は終わってしまった――



「――ハッ!?」


 悪い夢でも見ていたかのように、意識を取り戻す五人。

 立っていたのはトロッコ乗り場だ。

 まだ冒険を続ける事は出来そう。


「……メリルちゃんが助けてくれたの?」

「ううん……あんな状況で転移なんて使えないよ……」

「こういう仕掛けだったのかしら?」


 まるで時間が遡ったかのように、トロッコも元の状態に戻っている。


「ですがこれでハッキリしましたね。石板に書いてあったのはトロッコの操作方法だったんですよ。あの途切れた線路は恐らくジャンプで抜けるのではないでしょうか」

「死なないって分かったらなんか楽しくなってきたぞー。よーし! もう一回あたしが――」

「ダメです。順番にやりましょう」


 ルキの言葉を遮ったエルク。シェリィ以外は皆トロッコを見てそわそわしている。

 安全が保障されているのであれば何も恐れることは無い。

 なんだかとっても面白そう!



「最初は……グー……」


 向かい合うメリルとクイナ。

 正拳の構えを取るクイナに対し、メリルは目を瞑り、拳に気を込めていく。


「じゃん、けん……ぽぉん!」


 裂帛(れっぱく)の気合と共にその手を突き出した! 結果――


「やったー! わたしの勝ちだぁ」

「ちッくしょー……二番手かぁ、アタシの勝利の正拳が……」


 勝者はメリル。両手を上げて喜んでいる。


「……おめでとうございます」


 つまらなそ~な顔でぱちぱち拍手するエルク。彼女は既に敗退している。

 こうして試練に挑戦する順番が決まった。

 1――メリル

 2――クイナ

 3――エルク

 以降はルキからこの順番でループだ。シェリィはあまり興味が無いらしく辞退した。


「わぁ~、この椅子ふかふかだね~」


 全員でトロッコに乗り込みメリルが操縦席に座る。

 一度目同様、カウントダウンが入った後にトロッコは動き始めた。


「メリルさん、石板によれば左手側のボタンを押すとジャンプ出来るそうです。穴を見つけたらジャンプで飛び越えてください」

「はぁ~い!」


 元気よく返事をする。


「安全運転で行くよ~」


 ルキとは違いレバーを後ろに下げた。

 トロッコは遅くなり、歩くのとそう変わらない速度にまで落ちる。


「おっせぇ……メリルー、もうちょっと急がない?」


 体を揺らしながら意見するルキ。

 せっかちなタイプには耐えられないようだ。


「まぁまぁ、メリルちゃんの番なんだし、好きにさせてあげよ?」

「う~んシェリィがそう言うなら……」


 徐行しながらトロッコは進んでいく。しばし進み、先程落ちた穴が見えてきた。


「あれです! メリルさん! ジャンプの準備を!」

「りょうか~い!」


 左手の指をボタンに乗せるメリル。そしてタイミングを計ってボタンを連打した!


「とあー!」


 びょい~んと跳ね上がるトロッコ。しかし……


「あれ?」


 飛距離が足りない。まるで自分から飛び込んだかのように穴に落ちていく。


「あれ~~~~?」


 五人は再び奈落の底へと吸い込まれて行った――



「アレはどう考えてもスピード不足! 勢いが足りないわ!」


 操縦席に座り、レバーを前後にガシャガシャと動かすクイナ。


「全速前進よ!」


 レバーを前にガコンと倒し発進、加速。ぐんぐんとスピードを上げていくトロッコ。

 あっという間に穴までやってくる。


「ぶっ飛ぶわよ! 捕まってなさいアンタら!」


 限界までレバーを倒し最高速度へ、ギリギリまで引き付けてからボタンを叩き飛ぶ!


「うおおおおおお!」


 大ジャンプしたトロッコは穴を見事に飛び越えた。先の線路へガコンと着地しさらに進む。


「クイナちゃん凄い!」

「ぎゃはは! もっと褒めてもいいのよシェリィ!」

「はっ!? クイナさん! 前方に注意を!」


 えっ? と前を見たクイナ。迫って来ていたのは魔の急カーブ。


「間に合ええええええええええ」


 力いっぱいレバーを引いて減速するも時すでに遅し。

 猛スピードでカーブに突っ込んだトロッコは派手にコースアウト。

 三度、五人は奈落の底へと吸い込まれて行った――



「分かった、分かりました。この試練のキモは速度の使い分けにあります」


 今度はエルクの番だ。操縦席に座りレバーをしっかりと握る。

 全員を座らせ安全確認をし、トロッコを発進させた。

 特に急ぐわけでもなく、かといって遅くも無いスピードで進むエルク。


「エルク! 穴が見えたぞー!」


 いつの間にか立ち上がっていたルキが言った。


「分かっていますよ」


 レバーを押し加速する。


「ここだ!」


 たたん! とボタンを二度押し。タイミングよく飛び穴を突破。


「いいぞーエルク!」

「減速しなさい減速! 落っこちるわよー!」

「うるさいですね……」


 少しイライラしながらも荒っぽい手付きですぐに減速、この子ハンドル持つと性格変わるタイプかもしれない。

 上手く速度を落とし、急カーブも突破。

 しかしここからが本番だった。穴や急カーブが連続して配置されている。

 エルクはそれを見事なレバー捌きとジャンプで的確に抜けていった。


「上手だね~エルクちゃん。ちょっとカッコいい」

「ふっ……危険ですから座っていてください。メリルさん」


 褒められドヤる。


「あっ、なんかあるぞ!?」


 前を見ていたルキが何かを指差した。

 線路の途中に看板のような物が立てられていて、道を塞いでいる。


「問題ありませんね。飛べばいいだけです」


 エルクはすぐに加速、最高速度まで上げてからジャンプ。看板を大きく飛び越す。


「ほげぇっ!?」


 が、空中で凄い声が出た。

 看板に隠れて良く見えなかったのだが、先の線路は少し下がってから大きくカーブしていた。

 勢いをつけて大ジャンプしてしまっていたため着地先に線路は無い。

 これで四度目、五人は奈落の底へと吸い込まれて行った――



「く、くだらない! あんなもの初見ではどうしようもないじゃないか!」


 戻されたトロッコ乗り場でキレるエルク。石板をがしがし殴っている。

 顔も知らぬ古代人に腹が立つ。


「エ、エルクちゃん。おちつこ? ね?」


 肩を抱いてなだめるシェリィ。このままだと石板を壊してしまいそう。


「さあさ! 次はあたしの番だぞー」


 ピョンとトロッコに飛び乗るルキ。


「ふー、ふー……ごめんなさいシェリィさん。少し興奮してしまいました……」


 どうにか怒りを収め、エルクもトロッコに乗る。

 残りのメンバーも乗り込み攻略を再開。だがここからが長かった……




 ――数時間後。


「加速してー飛ぶっ! 次は減速だったよな!?」

「はいっ! 看板が連続して立てられているので低速で一つ一つ飛び越えてください!」

「その先は見えない穴があるから気を付けてねルキちゃん! お札で目印を付けてあるから来たら合図するよ!」

「サンキュー頼むメリル!」


 力を合わせ次々と障害を突破していく。

 最終的に反応と体感に優れるルキが操縦し、他のメンバーが知識面でサポートするというやり方で落ち着いた。


「――ッ! 見えたわ! ゴールよ!」


 先を見ていたクイナが叫んだ。線路が終わり再び遺跡の道が続いている。

 しかしその手前には大きな穴が。


「うおおおおおおいっけぇえええええええええ」


 最大まで加速し、穴のギリギリ手前で大ジャンプするルキ。

 なんとか先の線路に着地し、ようやくゴールにたどり着いた!


「や……やったー!」


 歓喜の声をあげ、ルキとクイナはハイタッチ。

 シェリィとメリルは手を取り合い喜び、エルクは笑顔で拍手。


「つ、つかれたー!」

「はい! 印を張ったよ~。これでもうトロッコには乗らなくて大丈夫」

「何時間これやってたのかしら……?」

「遺跡の中だから、感覚が狂っちゃうね……」

「お腹が減りました……もう夕方ではないでしょうか」


 これまでの冒険で最大の難関だった。


「あたしも腹へったー、イカホに戻らない?」

「そうだね……今日はもうこの辺にしておこうか」


 メリルの力があるので、いったん外に出ても途中から遺跡の探索を再開できる。

 彼女がいなかったらと考えるとゾっとする。


「じゃあみんな手を繋いで~、帰りますよ~」


 メリルの呼びかけで手を繋いで輪になる。


「転移!」


 こうして、初日の攻略が終了した。世界樹の花を手に入れるまでは……まだ少し掛かりそう。


 

 






 



 












 





 

 

 




 

 

 

 



 


 

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