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ブラックは、持っていたドングリを床に落としてしまいました。クラリスさんが話した内容にあまりにも驚きを隠せなかったのです。
「クラリスさん、どういうことですか?」
ブラックは、落としたドングリを拾い、大事そうに抱えなおし、掘り掘りを再開しました。
「言葉の意味の通りですわ。彼は、多分まだ生きています」
生きている、その言葉の重みをブラックは感じました。一度死んでしまったら、もう二度と会えない。でも、生きているならば、まだ会える。ブラックは、オズワルトさんと話したいことは沢山ありました。
美味しいご飯のはなし、ドングリ池に映る綺麗な夕焼けのお話、オズワルトさんの生まれ故郷のお話。彼から沢山学ぶことは沢山あるのです。
ブラックは、嬉しくなって、ドングリを掘る作業は捗りました。
「でも、どうして、オズワルトさんが生きていると思われるのですか?」
「それは、、、ブラックはおかしいと思わないの?」
ブラックは、作業を一旦止めてクラリスさんの方を見ました。しかし、ブラックにはそのおかしい理由が皆目見当がつきませんでした。
「だって、あのお人好しのキツネのオズワルトさんですよ。そう簡単に命を落とすような真似はしません。それに、お話を聞いていて思ったことが一つあるの」
クラリスさんの顔つきが少し険しくなりました。
「ブラックの体では、オズワルトさんの全体を見てはいないかもしれないわ。でも、オズワルトさんの周りに赤い液体が広がっているだけで、広場の周りに血は飛び散っていなかったのよね?」
ブラックは、クラリスさんの言葉を聞いて、当時の状況を思い浮かべた。
倒れているオズワルトさん……
赤い液体……
森の奥の二つの光……
確かに、液体自体は、オズワルトさんの周りにしかなかった気がした。
それに……
「そうよ。そもそもその液体が血であるならば、固まっているはずよ。あなたの体にも少し付いていると思うけど、あなたが走ってきたことによって、ほとんど落ちているわ。それに、誰かがオズワルトさんを殺めたとするならば、周りに血が飛び散っているはず。」
名探偵クラリスさんが、事件の状況考察をブラックに説明すると、ブラックは開いた口が塞がらなかった。
「すごい、すごいですよ!クラリスさん!どうして、そんな推理ができるのですか!」
ブラックは、クラリスさんの推理に感動した。
「ええ、でもこれはあくまで推測。現場に行って確かめないといけない、それにまずはこのドングリで、コマドリのナターシャを呼ばないと」
クラリスさんは、また自分の作業に戻った。ブラックも、クラリスさんを見てうなづき、そのまま作業に戻った。
何時間も経ってはいないが、しばらくしてドングリの身を取り出すことに成功した。
ブラックは、取り出した身を両手で救って、家の玄関にいき、その玄関から地面に向かってドングリの身を勢いよく蒔いたのだった。