おかあさんはノイローゼ
子育て中の方や医療関係者の方には不謹慎な内容かもしれません。
予めご了承ください。
そして妊婦さんやお母さんの皆さん、私はお母さんというだけですごいことだと思います。
どうかお体ご自愛ください。
「私はねー育児ノイローゼなんだ」
「え?」
「私ね、地元の産婦人科で看護師をしていたの。
夜勤も救急搬送の受付もやってたから決して楽ではなかったけど、同じ女性が一生懸命出産している姿とか、生まれたばかりの赤ちゃんを見て達成感とかやりがいを感じてた。
これだけ何人もの出産に立ち会っているし、一般人よりは医療の知識だってある。
漠然とだけど母親になる自信があったのよね。
でもなかなか赤ちゃんはできなかった。ようやく子供ができた時にはもう30歳だった。
年齢的に、もしかしたらこれが最初で最後の子供になるかもしれない。
そう思ってやれることはすべてやったわ。でもそれがいけなかったのかもしれない。
自分でもいけないとわかっていても家族に八つ当たりしたり、一日中不安で泣き続けたり、マタニティブルーの見本みたいになっちゃって。
陣痛が始まって無事子供が生まれて、あぁこれでマタニティブルーから解放されるって思ったのに、いざ子供の顔を見るとどうしても可愛いって思えないの。
念願の我が子、私たち夫婦の宝物、なのに愛しいとは思えなかった。
退院しても子供に愛情がわかなくて泣き続ける子供を見て一緒に泣いてた。
さすがにおかしいと思った主人が病院に連れて行った時には、点滴で栄養補給しないといけないほどだった。
子供を立派に育てて、今度は出産経験者として働くつもりだったのに社会復帰どころか自分の世話もできなくなったってわけ。」
「そうだったんですか…。すみません辛いお話…。」
「いいの。最近は落ち着いてきてるし、それに」
「それに?」
「めいこさんもいつか結婚して妊娠するかもしれないでしょ?その時のために聞いておいてほしかったの。」
「…」
「ほら見て、これが子供!」
彼女が差し出したスマートフォンの画面には、微笑む彼女とぷりぷりした小さな女の子が写っていた。
いつか結婚して母になる…マタニティブルーも育児ノイローゼも誰にでも起こりうる病気なのかもしれない。
桜屋敷さん
マタニティブルー・育児ノイローゼ。
待望の子供を授かるも心のバランスを崩してしまう。
ぼっちのめいこに話しかけてくれた美人さん。
実は鉄オタなので長女の名前は「のぞみ」。