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【ギャグ満載の本格推理】瀬川歩の事件簿  作者: 瀬川歩
【問題編】鳥籠の姫君
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第8話 名探偵の呪縛

本小説は毎日22時に更新する予定です。

少しでも気に入って頂けたら感想・レビュー頂けますと嬉しいです。

皆様のお声が励みになります! よろしくお願いします!

飛鳥翔子の名探偵としての人生は、

中学一年生の時に偶然巻き込まれた殺人事件を解決したことから始まった。


当時から類まれな洞察力、観察力を駆使して、

犯人の仕掛けたトリックを見事に看破し、

事件解決において中心的な役割を果たした。


翔子は警察から表彰され、

当時の新聞、テレビを大いに賑わした。


現代のシャーロック・ホームズ、美少女探偵、

あらゆる美辞麗句が並び立てられ、

多くの人々は翔子を賞賛した。


翔子が13歳と幼く、

また彼女の容姿が極めて優れていたため、

彼女は瞬く間に時の人となった。


以降、彼女のもとには様々な依頼が殺到した。


誘拐された娘を見つけてくれ、

母を殺した犯人を捕まえてくれ、

依頼というよりも、それらはむしろ懇願に近かった。


心優しい彼女はそんな悲痛な叫びを断わることが出来ず、

様々な事件に携わった。


そして、その度に名探偵としての能力を存分に発揮し、

事件の解決に貢献した。


洞察力、観察力、推理力、そしてそれらを司る天才的な頭脳、

事件の解決に必要な能力を、

生まれ持って充分過ぎるほど授かった彼女には、

間違いなく名探偵としての天賦の才能があった。


マスコミにより極度に誇張された名声は

否が応でも際限なく事件を呼び込み、

彼女はその才能を存分に活かせる舞台を用意され続けた。


数多の難事件、怪事件を解決に導き、

いつしか人は彼女のことを名探偵と呼ぶようになっていた。


翔子は決して自分から名探偵に憧れたわけではなかった、

そんな生き方を望んだわけではなかった。


ただ、神から与えられた天賦の才能、

そして偶然巻き込まれた事件により、

その後の人生が縛られた彼女には、

名探偵という生き方以外に選ぶことができなかった。


翔子が高校時代に縁あって入部することになった部活で、

友人のようなものはできたが、

それすら自ら手放してしまった。


自分を友達だと言ってくれた女を、

自分のことが好きだと言ってくれた男を、

名探偵という責務を背負う彼女は自ら手放してしまった。


悲しみと怒りに満ちた依頼主と向き合い、

犯人と対峙し、神経がすり減る日々に、

彼女はたった一人で向かい合い続けた。


何度も心が壊れそうになったが、

そのたびに強い自律心により、

己の弱い心を律してきた。


そんな殺伐した非日常の中心に常に身を置いた鳴海が、

御堂家に滞在し、無垢な少女と心ゆくまで語り合うこの時間こそ、

名探偵として、一切の安穏が許されない道程を歩んできた彼女にとって、

初めて心が安らぐ時間だった。


今までの殺伐とした人生を忘れられるほど、

鳴海は心地よい時間を堪能するように、

御堂家で穏やかな時間を過ごしていた。


彼女はようやく名探偵という責務から開放され、

薄幸の少女を可愛がる飛鳥翔子という

心優しい一人の女性に戻ることができた――。

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