プロローグ 「名探偵、飛鳥翔子」
飛鳥翔子は
名探偵である。
といっても、彼女は法律上認められた、正規の探偵でない。
現代の社会では、探偵業務を行なうためには、
「探偵業の業務の適正化に関する法律」、
いわゆる探偵業法に基づき、都道府県公安委員会に届出をしなければならない。
探偵事務所を開業せず、
日本中を放浪する飛鳥鳴海は法律的に認められた探偵でなかった。
しかし、それでも彼女は名探偵だった。
警察でも手に負えない数多の難事件を、
閃きと論理により解決に導いてきた。
警察でも手に負えない数多の難事件を、
論理と執念により解決に導いてきた。
飛鳥翔子の探偵としての立ち位置は、
現代社会における足を使って
何かを調査する探偵とは異なり、
古典的推理小説のキャラクターであるシャーロック・ホームズやエルキュール・ポアロのような、
いわゆる安楽椅子探偵に近かった。
まるで推理小説のように鮮やかに
事件の謎を解き明かす彼女の活躍は、
テレビや新聞で何度も取り上げられ、
いつしか彼女は
名探偵と呼ばれる存在になっていた
この話は名探偵と称される飛鳥翔子と、
後に鳥籠事件と名付けられることになる、
北海道のとある地方で名家として名高い
御堂家で発生した、
奇妙な毒殺事件を巡る物語である。
鳥籠事件は、
十月初旬のとある日、
御堂家当主である御堂権蔵の屋敷に
一通の脅迫状が届いたことに端を発する。
脅迫状には御堂一族を皆殺しにする旨が記されていた。
御堂権蔵には三人の弟がおり、
現在は権蔵の屋敷と離れたところに
それぞれ邸宅を構えている。
その他の兄弟の邸宅にも
同様の脅迫状は届けられた。
しかし、名家として由緒ある御堂家の
当主である権蔵は
警察に相談することができなかった。
そんなことをして、
脅迫状の存在が周知となれば、
御堂家の名誉を汚すことになる。
御堂家当主として、
それだけは避けなければならない。
そこで、脅迫状が届けられてから
一週間後、権蔵は脅迫状の対策として、
名探偵として名を馳せている
飛鳥翔子を屋敷に招き入れた。
物語はここから始まる。
本小説は毎日22時に更新する予定です。
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