第10話 犯人との対峙
11月5日 月曜日 午後7時頃
時間は午後7時を過ぎていた。
清海高校は部活が盛んな学校だが、部活は午後6時30分までという決まりがある。
体育会系の部活であるサッカー部、野球部、バスケ部は午後6時30分に練習を終了し、部員は午後7時までにはいつも帰宅している。
この時間では当然全ての部活は終了し、ほとんど全ての学生は既に帰宅していた。
しかし、そんな時間帯でも動いている人影があった。
(危なかった……。まさか橋本君が教室に戻っていたなんて、鉢合わせにならなくて良かった)
この人物こそが今回の事件を引き起こした張本人である。
(それにしても、瀬川君には助けられた。橋本君に濡れ衣を着せることまでは考えてなかったし、さすがに可哀想だったわ)
とは言え、山田の大事なCDに手を掛けた時点で、彼女は充分悪い人間と言えるが。
(それはそれ、これはこれよね。最後の作業はちゃっちゃと終わらせよっと)
その人物は、体育館の2階にある女子更衣室に向かって歩いていた。少し前に職員室に寄って、女子更衣室に忘れ物をしたと言い、鍵を借りておいたのである。
そして、電気を付けず月明かりを頼りに、薄暗いなか、ひっそりと女子更衣室の中に入り、鍵付きロッカーの中から何かを取り出し、まじまじと見つめた。
(それにしてもこんなにうまくいくなんて、私ってなんて頭がいいのかしら)
そして、それを鞄の中にしまった。
自分の計画の成果を確認し、気が緩んだ瞬間、女子更衣室の扉が突然開かれた。
「そこまでよ!」
「えっ!」
そこには我が清海高校の完全無欠の生徒会長、葉月珠姫が挑戦的な笑みを浮かべて立っていた。暗闇の中においても、その目は燃えるように爛々と輝いている。
「やはり、犯人はあなただったのね」
そう言って、葉月珠姫は手に持っていた懐中電灯でその人物を照らした。
「――1年A組大野静香」
珠姫が対峙している女性の名前は大野静香。
CDが盗まれた1年A組の女生徒だ。合唱コンクールの曲を決めるクラス会議の際に香助が提案したマッスルパラダイスに猛烈な勢いで反対した大野が、深夜の女子更衣室に現れた。
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