第24話 飛鳥翔子と瀬川歩
卒業式の日、私は自分を好きだと言ってくれた
桜井桂を無下にしてしまった。
自分にふさわしくないと言って断ったが、
つまるところ、彼と向き合うのが怖くて逃げてしまった。
桂に背を向けて歩き出した私の前に、
彼の親友の瀬川歩が立ちふさがった。
歩「桂との話は終わったね、翔子。次は僕の番だ」
翔子「歩か、何のようだ……?」
私は何か言いたいことがあるのかと
言わんばかりの不機嫌な口調で彼に問う。
彼は何のためにここで待っていたのか。
きっと彼なりに私の行動に思うところがあったのだろう。
親友にひどい扱いをした私を彼が責めるのはもっともだ。
私は歩みを止め、覚悟を決めて彼の言葉に耳を傾けた。
歩「あの……僕はさ……その……君のさ……なんというか……最近さ……天気がさ……」
翔子「何も言うことがないのか! 何故出てきたんだ……」
歩「ごめん、何か雰囲気で出てきちゃった。
ちなみに、香助と銀子も後ろに並んでいるんだけど、
ふたりとも翔子と余り話したことないから何を話そうか焦ってて。
香助は『1日5分でできる肉体改造の方法』、
銀子は『シャツに付いたカレーの染み抜きの方法』を話すみたい」
翔子「私は筋トレに興味がないし、日常のうんちくもいまは必要がない。
何故このタイミングでそんな話題を持ってきたんだ……」
歩「ごめん……。まぁ、とにかく元気でね、翔子」
翔子「ああ、君もな」
歩「翔子、最後に一つだけ聞いてもいい?」
翔子「ああ、なんだ?」
歩「……」
翔子「やはりないのか……」
桜井桂を思い出すついでに瀬川歩のことも思い出した。
しかし、大した思い出がないので思い出すことを止めた。
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